倉庫DXとは?注目の7つの最新テクノロジーと導入事例を解説
2025.05.05

物流の要である倉庫業務は、いま大きな転換点を迎えています。
慢性的な人手不足や作業者の安全確保、EC市場の急成長に伴う小口配送の増加といった課題に対応するため、多くの企業が「倉庫DX(デジタルトランスフォーメーション)」に取り組み始めているのが現状です。
本記事では、倉庫DXの概要から注目の最新テクノロジー、先進企業・中小企業それぞれの成功事例、そして導入に向けたステップまでを網羅的に解説します。
現場の業務を効率化し、コスト削減とサービス向上を実現するヒントが詰まった内容です。本記事を読んで、自社の倉庫DXの参考にしましょう。
\”現場に合わせた使いやすいDX化”をスモールスタートできる!/
倉庫DXとは?

倉庫DXは、倉庫業務においてデジタル技術を活用し、業務効率化や生産性向上を図り、組織構造やビジネスモデルを変革する取り組みを指します。
例えば近年は、AmazonやZOZOを始めとする巨大EC企業が、倉庫の完全無人化に取り組んでいます。
従来の物流業界において、倉庫業務はコストでしかありませんでした。しかし倉庫DXによってリアルタイムな倉庫管理やスピーディーな配送が可能になれば、それは自社の強みになります。
業務効率化はもちろんですが、顧客体験を高めるために、倉庫DXに力を入れる企業が増加しています。
倉庫DXが求められる3つの理由

倉庫DXが求められる理由としては、以下の3つが挙げられます。
- 慢性的な人手不足
- 従業員の安全性の確保
- EC市場成長に伴う小口配送の増加
それぞれ詳しく解説していきます。
慢性的な人材不足
富士電機が2021年に実施したアンケート調査によれば、物流・倉庫部門の人手不足の状況について、全体の65%が人手不足を感じています。
また、人手が不足する理由としては「退職による欠員」「離職率が高いこと」が挙げられていました。
特に近年は、少子高齢化や若年層の就業意欲の低下が影響し、人材の確保が難しくなっています。
作業負担を軽減し、労働生産性を高められる倉庫DXが、いま求められているのです。
従業員の安全性の確保
中央労働災害防止協会が1999年から2021年にかけて実施している調査によれば、2021年に発生した倉庫業の事故件数は781件でした。
特に多かった事故は「転倒」「墜落・転落」「無理な動作」です。倉庫業は重い荷物を運んだり、狭い通路で作業するため、事故やケガのリスクが高いのです。
そこで近年は、人間の代わりにロボットを導入し、事故の発生を防ぐ取り組みが実施されています。また、スマートグラスやIoTセンサーを導入し、注意喚起を常に実施すれば、事故を防ぎやすくなります。
従業員の安全性を確保するためには倉庫DXが欠かせません。
EC市場成長に伴う小口配送の増加
国土交通省が2021年に実施した『全国貨物純流動調査』によれば、1990年から2021年にかけて貨物1件あたりの貨物量が半減している一方で、物流件数がほぼ倍増しています。
主な要因としては、Amazonや楽天を始めとするECの急成長で、小口配送の需要が急増していることが挙げられます。
従来の倉庫業は、法人向けの大口配送が基本だったため、小口配送に対応できないケースが多いのが現状です。
このような背景から、在庫管理や配送プロセスを最適化できる倉庫DXが求められています。
倉庫DXで用いられる7つの最新テクノロジー

では具体的に、倉庫DXを進める際にどのような技術が必要なのでしょうか?
現在、倉庫DXで用いられている最新テクノロジーは以下の7つです。
- RFIDシステム
- WMS(倉庫管理システム)
- 移動ロボット
- ピッキングロボット
- スマートグラス
- 自動倉庫システム
- マテリアルハンドリング機器
それぞれ詳しく解説していきます。
リアルタイムな在庫管理を可能とするRFIDシステム
RFID(Radio Frequency Identification)システムは、無線周波数を利用して物品の情報を自動的に読み取る技術です。
RFIDは読み取り距離が長く、複数のアイテムを瞬時に処理できるため、リアルタイムな在庫管理を構築しやすいメリットがあります。
RFIDタグで有名な事例としては、ユニクロが挙げられるでしょう。
ユニクロは店内の在庫管理をRFIDタグで管理しながら、レジ販売でもRFIDタグを活用し、シームレスな購買体験を提供しています。
倉庫管理から小売まで、一気通貫で業務効率化を実現できるのがRFIDシステムの特徴です。
WMS(倉庫管理システム)で入出庫から在庫管理までを一元化
WMS(Warehouse Management System・倉庫管理システム)は、倉庫内の入出庫作業や在庫管理を効率化するためのシステムです。
近年は小口配送が増加し、入庫から出荷までのリードタイムが短くなっています。特に、商品数が多い大型倉庫では、人間が入出庫状況を把握するのは限界があるため、WMSによる在庫管理の自動化が必須です。
また、WMSは作業の進捗状況が可視化できるため、在庫データを経営判断やマネジメントに活用できるメリットもあります。
移動ロボットで荷物搬送を自動化
移動ロボットは倉庫内での荷物搬送を自動化できるロボットです。
従来は人間が重い荷物を運ぶ必要がありましたが、ロボットであれば、人間が運べない重量の荷物も搬送可能です。
また、移動ロボットはセンサーやカメラを駆使して障害物を避けながら移動するため、倉庫内の物流フローもスムーズになり、作業効率が向上します。
従業員の安全性確保と、生産性向上を同時に実現するのが移動ロボットの強みです。
ピッキングロボットで人手不足を解消
ピッキングロボットは、特定の注文に合わせて商品を収集する「ピッキング」を自動化できるロボットです。
ピッキングは正確性が求められる作業のため、これまでは人間が担当していました。しかし近年はカメラ性能が高まり、商品認識の知見が高まったため、ロボットでも人間のように正確に商品を判別できるようになっています。
近年はECの普及で商品が多様化しているため、ヒューマンエラーが増えていますが、ピッキングロボットを導入すれば、ミスを削減可能です。配送先の間違いや点数ミスなどの間違いが減るため、単なる業務効率化だけでなく、顧客満足度の向上にもつながります。
スマートグラスの作業指示・ナビゲーションで生産性アップ
スマートグラスは、視界に情報を重ねて表示できるメガネ型のウェアラブルデバイスです。
倉庫業においては、視界にマニュアルや商品リストを表示し、業務を効率化できます。手元の作業に集中しながら情報を閲覧できるので、シームレスな作業が可能です。
また、スマートグラスは音声認識機能を搭載しているため、両手が塞がっている状況でも、指示を受けたり情報を確認したりできます。
スマートグラスを活用すれば、入社したばかりの作業員でもマニュアルを閲覧できるため、研修にも役立ちます。
スマートグラスについて詳しく知りたい方は、以下の記事も読んでみてください。
自動倉庫システムで保管スペースを最適化
自動倉庫システムは、コンピューター制御によって荷物の入出庫・保管などの倉庫内作業を自動化するシステムです。
棚やラックに荷物が保管され、それをクレーンやシャトル台車が運搬する仕組みになっています。
倉庫業務の省力化・安全管理・在庫管理の効率化だけでなく、縦のスペースを有効活用できるため、限られた倉庫面積でも在庫量を増やせるのも自動倉庫システムの強みです。
自動倉庫システムは、倉庫の完全無人化を目指す際に必須の技術だといえます。
IoT導入で大幅に強化されたマテリアルハンドリング機器
マテリアルハンドリング機器は、物流業務を効率化するために用いられる機器です。具体例としては以下が挙げられます。
- フォークリフト
- カゴ車
- ベルトコンベア
- パレタイザ
その中で近年はIoT技術が導入され、稼働状況をモニタリングできるマテリアルハンドリング機器が増えています。
自動運転やデータ分析が可能になるため、業務効率化やマネジメント改善に活用可能です。
IoTを活用したマテリアルハンドリング機器を組み合わせることで、倉庫業務の省人化を実現できます。
倉庫DXの成功事例5選

ここからは、倉庫DXの具体的な事例を、有名企業と中小企業の中から紹介していきます。自社で、どのように倉庫DXを実現できそうか考えながら読んでみてください。
Amazon|自走型ロボットで棚を動かす発想の転換
世界最大のEC企業であるAmazonは、これまでに数々の倉庫DXを実施してきました。その中で特に革新的だったのが自走型ロボットの使い方です。
これまでの倉庫業務では、作業者が棚に向かって移動し、商品をピックアップするのが一般的でした。しかしAmazonは、自走型ロボットの上に棚を作り、棚が作業者に向かって移動できるようにしたのです。
これにより、作業者がほとんど動かずに倉庫業務をこなせるようになりました。
Amazonの配送センターには「スタッフができるだけ移動しない」という基本思想があります。スタッフが移動しなければ、転倒による事故を防げるからです。
また、立ち仕事でも疲れにくい疲労軽減マットが敷かれているため、作業者の負担が軽減されています。結果として体力が温存され、ヒューマンエラーの削減につながっています。
ZOZO|ツールを組み合わせて30%の省人化、保管能力が約1.3倍に
ファッションECサイトを手掛けるZOZOは、最新の物流拠点「ZOZOBASEつくば3」に約100億円の設備投資を実施し、倉庫業務の自動化を推進しました。
具体的には以下のようなシステムを導入しています。
- 1時間あたり3.2万点を仕分けできる「t-Sort」
- 1時間あたり3.5万点の商品を出し入れできる「システマストリーマー」
- 拠点の上部空間を活用し1時間あたり1.5万点の仕分けが可能な「Pocket Sorter」
この結果、作業者の負担が大きく軽減され、既存拠点と比較して30%の省人化に成功しました。
また、特定のスキルや経験が必要だった作業が誰でもできるようになったため、幅広い人材を雇用できるようになりました。
Johnstone Supply|クラウド型WMSで在庫精度が99.9%に改善
米国の冷暖房機卸売業者のJohnstone Supplyは、配送センター間での在庫データの整合性を確保するため、倉庫管理システム「Infor WMS」を導入しました。
Infor WMSでは、倉庫管理だけでなく、労務管理や3Dビジュアルでのデータ分析が可能で、様々な情報を可視化できるのが特徴です。
Johnstone Supplyは全米に約450の卸販売点がありますが、在庫点数等のデータに整合性が取れず、入力作業の増加や新規人員の増加を招いていました。そこでInfor WMSを導入したところ、スタッフの生産性が大幅に向上し、在庫精度が99.9%にまで改善したのです。
また、Infor WMSは操作がわかりやすいため、新入社員でも10日もあれば使いこなせるようになります。
倉庫DXを実施する際は、Johnstone Supplyのように、現場の従業員でも使えるツールを選定するといいでしょう。
マザーテラス|倉庫利用サービス「WareX」で保管コストが半分以下に
女性向けの下着製品を企画・販売するマザーテラスは、倉庫の管理費用を削減するために、倉庫利用サービス「WareX」を導入しました。
WareXは、Amazonや楽天での在庫管理を外注できるサービスで、ECモールに比べて保管費が5分の1に設定されているのが特徴です。
マザーテラスでは、事業規模拡大に伴い倉庫での保管料が高騰する課題がありました。また、当時利用していた倉庫では自社が求める方式で在庫管理できなかったため、商品管理の工数が大幅に増加していたようです。
そこでマザーテラスはWareXを導入し、コストは従来比で5割減少。管理体制が整い、より詳細な品質管理が可能になりました。
マザーテラスのような小規模事業者であれば、外部サービスを活用して倉庫業務を効率化するのがいいでしょう。
ライジング|台車型物流支援ロボットで従業員3名分を省人化
開発・製造受託サービス業を手掛けるライジングは、台車型物流支援ロボットを3台導入し、工場内の搬送を完全自動化しました。
ライジングは事業拡大に伴い、二階建ての新工場ができましたが、リフト待ちなどで搬送時間が大幅にかかる課題がありました。そして、課題解決には「完全無人搬送が必須」という結論に至ったそうです。
そこでライジングは台車型物流支援ロボット「CarriRo AD」を3台導入し、資材の搬送を完全自動化。その結果、省人化効果が3名分、年間1,080万円のコストカットに成功し、1年で導入費用を回収しました。
実際に倉庫DXを導入する際は、ライジングのように投資対効果を測定し、どれほどの期間で投資額を回収できるかを具体的に計算するといいでしょう。
\”現場に合わせた使いやすいDX化”をスモールスタートできる!/
倉庫DX導入までの4ステップ

倉庫DX導入までの4ステップは以下の通りです。
- 現状を把握して課題を棚卸しする
- 倉庫DXの目的を明確にする
- 適切なツールを選定する
- 段階的に導入して意識改革を行う
それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
現状を把握して課題を棚卸しする
まずは現状を把握するために課題を棚卸しします。
倉庫内の作業フローや在庫管理状況を分析し、どの部分で課題があるのかを洗い出します。
また、従業員からのフィードバックを取り入れるのも大切です。現場の実情を反映した課題の棚卸しが可能になります。
現状を細かく分析できれば、課題が明確になり、倉庫DXまでのアプローチも具体化できます。
倉庫DXの目的を明確にする
課題を洗い出したあとは、倉庫DXの目的を明確にしましょう。
企業が倉庫DXを進める理由は多岐にわたりますが、コスト削減と顧客サービス向上では目的が大きく異なるため、課題解決までのアプローチも変化します。
また、倉庫DXの目的が曖昧になってしまうと、適切なテクノロジーを選べず、導入費用を回収できない恐れがあります。
倉庫DXを実施する際は、まず目的を明確にし、そこから逆算する形で計画を立てていきましょう。
適切なツールを選定する
倉庫DXの目的を具体的に設定したあとは、適切なツールを選定します。
例えば、在庫管理を強化したい場合はRFIDやWMS、作業の自動化を目指すなら移動ロボットやピッキングロボットを検討すべきです。
また、ツールを選定する際は、導入コストやサポート体制などを徹底的に比較しましょう。倉庫DXはいずれも導入コストが高いため、慎重に検討する必要があります。
リベロエンジニアでは、スモールスタートで倉庫DXソリューションを開発できるため、初期投資を抑えられます。可能な限り投資額を抑えたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
段階的に導入して意識改革を行う
倉庫DXを導入する際は、一度に全てを変えるのではなく、段階的に進めるようにしましょう。なぜなら一気に進めると、現場の従業員が戸惑い、倉庫DXを効果的に実施できなくなるからです。
実際にツールを導入する際は、従業員への教育やトレーニングを行い、新しいツールを使いこなせるように丁寧にサポートする必要があります。
また、小さな改善を繰り返すことで、従業員の意識も少しずつ変わり、倉庫DXを導入しやすい環境が整っていきます。
組織全体が変化に柔軟に対応できるよう、段階的に倉庫DXを進めていきましょう。
まとめ
倉庫DXは、倉庫業務においてデジタル技術を用いて、業務効率化やビジネスモデルの転換を図る取り組みです。慢性的な人手不足やEC市場の成長により、倉庫DXの必要性が高まっています。
一方で倉庫DXは、移動ロボットやスマートグラスなどのハードが必要不可欠で、初期投資が大きくなりがちです。
そこでリベロエンジニアは、スモールスタートでプロジェクトをスタートし、試行錯誤しながら、実情に即したDXソリューションを開発しています。
倉庫DXは段階的なアプローチで実施した方が成功確率が高まります。小規模開発で納得感を得ながら倉庫DXを進めたい方は、ぜひリベロエンジニアまでお問い合わせください。
\”現場に合わせた使いやすいDX化”をスモールスタートできる!/
【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。