ピッキングミスが多い人への対策4選!DXで改善する方法や成功事例も解説
2025.05.23

ピッキングミスが発生すると、出荷ミスや返品対応、顧客からのクレームなどのトラブルに繋がり、コスト増加や信頼低下を招きます。現場の管理者や経営者は、ピッキングミスの原因を特定し、改善策を実施する必要があります。
しかし、ピッキングミスが多い人への対応に頭を悩ませている経営者・現場管理者は少なくありません。「なぜピッキングミスが発生するのか原因が分からない」「今すぐ取り組める対策が知りたい」という方も多いでしょう。
本記事では、ピッキングミスの主な原因と今日から取り組める対策を詳しく解説します。DXによる最新の改善方法や生産性を大きく向上させた成功事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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ピッキングミスが多くなる4つの原因
ピッキングミスが多くなる現場には共通した特徴があります。よくある原因を知れば、対策も講じやすくなるでしょう。
下記4つのピッキングミスが多くなりがちな原因を解説します。
- 作業環境に課題がある
- マニュアルや教育が不足している
- システムが使いづらい
- 他のスタッフと技術の差がある
①作業環境に課題がある
倉庫内の作業環境に課題がある場合、ピッキングミスが発生しやすくなります。作業環境の課題には下記の要素が挙げられます。
- 作業員の移動・作業動線が整理されていない
- 棚の配置に一貫性がない
- 見た目が似ている商品が隣同士に配置されている
- 照明が暗い
- 棚にラベルが貼り付けられていない
- ラベルの文字が小さく視認しにくい など
このような課題があると、作業に時間がかかり、ピッキングミスのリスクが高まるでしょう。作業員の作業ストレスも高まるため、離職リスクも上昇します。
②マニュアルや教育が不足している
特に新人のピッキングミスが多い場合、マニュアルや教育が十分でない可能性があります。倉庫業務は習熟に時間がかかる工程も多く、十分な教育がないまま作業に就かせると、ミスを招きやすくなります。
新人作業員向けの研修プログラムが整備されていない、業務の進め方が「見て覚える」方式に頼っているといった状況では、スムーズな技術習得が困難になります。教育体制が不十分な現場ではベテラン作業員のノウハウが暗黙知となっているケースも多く、新人作業員は仕事の覚えにくさを感じるでしょう。
③システムが使いにくい
紙のピッキングリストのようなアナログな業務フローを採用している現場では、誤読や書き間違いなどのヒューマンエラーが頻発します。
システム導入している場合でも、既存の倉庫管理システムが古いと使い勝手に課題が生じます。例えば、リアルタイムの情報更新に対応できない場合、システム上の在庫数と実際の在庫状況が乖離してしまうでしょう。
バーコードスキャナーやデジタルピッキングツールが導入されていないと、作業員の判断や経験則に頼る場面が多くなり、結果としてピッキングミスが生じやすくなります。
④他のスタッフと技術の差がある
新人作業員は作業に不慣れなため、ピッキングミスをしやすい傾向があります。一方、ベテラン作業員でも業務への慣れやスピード重視の仕事の進め方によって、ミスをすることもあるでしょう。
スタッフ間のスキルや知識、仕事の進め方にバラつきがある場合、作業品質に差が出てしまいます。作業品質を均一に保つには、DX技術の導入による作業標準化が有効です。適切なシステムを導入すれば、属人化防止や教育時間短縮が可能になるでしょう。
「DX」の単語は聞いたことがあるものの、詳しい内容や得られるメリットが分からない方には、下記の記事がおすすめです。DXの基本情報を、簡単に解説しています。
今日からできる!ピッキングミスの改善策4選
スキル不足や作業環境に起因するピッキングミスは、正しい対策をとれば着実に減少させられます。今日から始められるピッキングミス対策を知り、作業品質向上を目指しましょう。
下記4つの改善策を解説します。
- 作業手順を見直し、標準化する
- 教育・トレーニングを強化する
- チェック体制を強化する
- デジタル技術を導入する
①作業手順を見直し、標準化する
ピッキングミスを減らすには、「誰が作業しても同じ品質で業務遂行できる」状態を目指す
必要があります。
作業動線を整理し、分かりやすいラベル張り付けによって棚の配置や商品の位置を明確にしておきましょう。作業員に判断を委ねず、作業中の迷いを最小限に抑えることがポイントです。
さらに、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底することで現場環境が整い、ピッキングミスのリスクも低減します。
②教育・トレーニングを強化する
新人作業員を短期間で戦力化するためには、体系化された研修制度が必要です。紙や動画によるマニュアル整備に加え、現場でのOJT(On-the-Job Training)を計画的に実施すれば、作業手順や注意点を素早く習得させられます。
OJTを効果的に進めるためには、1対1で教育担当をつけるメンター制度の導入が効果的です。毎回指導員が変わると、新人が混乱してしまう可能性があるため、ベテラン作業員を1人、教育担当として固定すると良いでしょう。
③チェック体制を強化する
人間が作業する限り、ピッキングミスの発生はつきものです。そのため、ピッキングミスの発生を前提としたチェック体制の構築が求められます。
ピッキング後のダブルチェックを導入したり、作業記録を残したりすると良いでしょう。ピッキングミスが発生した理由を都度振り返るようにすれば、再発防止の仕組みを構築しやすくなります。
また、チェックリストのルール化によって、「うっかり」や「思い込み」によるピッキングミスを防止できます。チェックリストはベテラン作業員のピッキングミス防止にも有効です。
④デジタル技術を導入する
ヒューマンエラーの防止は、教育や作業環境改善でも一定の改善を見込めます。しかし、最も効果を発揮するのはデジタル技術の導入です。
タブレットやハンディ端末を導入すれば、紙リストを廃止して読み間違い・書き間違いなどのミスを削減できます。
倉庫管理システム(WMS)とバーコードスキャナーを連動させれば、入荷時のカウントミスや出荷ミスのリスクを大幅に削減できるでしょう。また、作業履歴の記録やリアルタイムの在庫把握も可能になり、情報管理精度が飛躍的に向上します。
変化する事業環境に対応し、作業員を適切に教育して企業の競争力を高めていくためには、デジタル技術導入は不可欠です。
より詳しいピッキングミスの対策方法は、下記の記事で解説しています。
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【DX】ピッキングミスを削減できる4つの最新技術
最新のDXツールを導入すれば、人間の判断や経験則に頼っていたピッキング作業の精度を飛躍的に高め、作業効率も向上させられます。最新技術の詳細を知れば、自社に最適なDXツールを導入できるでしょう。
ピッキング倉庫での導入が進む、下記4つの最新技術を紹介します。
- 倉庫管理システム(WMS)
- 音声ピッキングシステム
- バーコードスキャナー
- スマートグラス
①倉庫管理システム(WMS)|在庫管理をデジタル化
倉庫管理システム(WMS、Warehouse Management System)を導入すれば、商品の入出庫・在庫管理・ピッキング指示などを一元管理できます。
作業者にはタブレットやスマートフォンを通じてピッキングリストが通知されるので、手書きミスや指示漏れを防止できるでしょう。ロケーション管理も容易になり、棚番号や商品情報を瞬時に照合できるため、ピッキングミスが起こりにくい環境が整います。
②音声ピッキングシステム|画面を見なくても作業が完結
音声ピッキングシステムとは、作業員がヘッドセットを装着し、音声でピッキング指示を受けるシステムです。紙資料やデジタル端末を手に持たなくても作業できるため、スピードと正確性の両立が可能です。
音声ピッキングシステムを活用すれば、熟練度の低い作業員でも音声に従うだけで正確に作業できるため、教育コストの削減にも繋がります。誤読のリスクがなく、周囲を視認しながら安全に作業を進められる点もメリットです。
③バーコードスキャナー|ミス削減に有効
バーコードスキャナーの導入は、商品識別の正確性を大幅に向上させます。ハンドスキャナーがないとJANコードや商品名で商品を見分けなければならないため、ピッキングミスの温床になります。
ハンドスキャナーを使ってピッキング時にバーコードを読み取れば、瞬時に情報を倉庫管理システムと連動させられます。取り間違いや数量ミスをリアルタイムで検出できるため、同梱ミスの削減にも効果を発揮するでしょう。
④スマートグラス|初心者でも生産性向上
眼鏡型のウェアラブルデバイスであるスマートグラスは、ピッキング作業の生産性向上に効果を発揮します。ピッキング時に効果を発揮するスマートグラスの機能は、現実世界と連動してデータ表示できるAR(拡張現実)技術です。
AR技術を搭載したスマートグラスは、作業者の視界にピッキング指示や棚番号などを表示します。両手が空いた状態で作業できるため効率が良く、初心者でも直感的に指示内容を理解できるのが特徴です。
例えば、スマートグラス用のアプリ開発やデバイス納品サービスを手がけるリベロエンジニアでは、大手住宅設備メーカーの倉庫内作業へのスマートグラス導入に成功しました。本プロジェクトでは、試験運用段階で点検作業や在庫管理業務の効率化が確認されています。
倉庫内作業へのスマートグラス導入をご検討の方は、専用アプリ開発からデバイスの確保までワンストップでお任せいただけるリベロエンジニアにご用命ください。
ピッキングミスを減少させた成功事例3選
DX推進によってピッキングミスを削減した企業の成功事例を紹介します。どの企業も生産性が大きく向上しているため、自社の業務効率化のヒントになるでしょう。
下記3つの成功事例を紹介します。
- 永岡書店|デジタルピッキングシステムで生産性が2倍に向上
- アブス|生産性50%向上で新人でも即戦力に
- NEC|スマートグラスのAR機能でピッキングミス0に成功
①永岡書店|デジタルピッキングシステムで生産性が2倍に向上
出典:永岡書店
児童書や実用書を中心に書籍の出版・流通・販売を手がける永岡書店は、ピッキング作業にデジタルピッキングシステムを導入しました。デジタルピッキングシステムとは、専用の表示器を使ってピッキング商品と数量を指定できる技術です。
デジタルピッキングシステムを導入する前は、1,600個以上あるアイテムから紙リストを参照しながらピッキングしていました。ピッキングミスが多く、作業の属人化や人手不足が課題でした。
同社ではデジタルピッキングシステムによって、従来8時間かかっていた作業の約3時間短縮に成功しています。経験が浅い作業員でも簡単に業務遂行できるようになり、生産性が1.5〜2倍に向上しました。
ピッキングミスによる手戻り作業が大幅に削減され、人的コストの抑制と顧客満足度の向上に繋がっています。
②アブス|生産性50%向上で新人でも即戦力に
家庭用や業務用の塗料をEC販売しているアブス(店舗名:ペイントガレージ)も、デジタルピッキングシステムによって生産性を大きく向上させました。従来は紙リストを利用してピッキングしていましたが、類似商品が多い同社ではミス発生や作業時間の長さが課題となっていました。
作業日の朝にラベルを発行し、スキャナーで読み取りながら表示器の指示に従ってピッキングを進めます。従来の作業に比べて処理スピードは2倍になり、2,000商品のピッキングを3~4名の作業員でスムーズに出荷できるようになりました。
また、デジタルピッキングの導入によって作業標準化が進み、入社当日から即戦力として活躍できるようになりました。リストを手に持たなくても良いため両手が自由になり、商品の落下や破損も減少しています。
③NEC|スマートグラスのAR機能でピッキングミス0に成功
出典:NEC
スマートグラスを用いたピッキング支援技術の開発を手掛けたNECでは、実証実験での作業ミス0件に成功しています。
NECが開発したピッキング支援技術の特徴は、スマートグラスとスマートウォッチを連動させて操作することにより、商品から視線を外さずに業務を進められる点です。商品から視線を外すことによって生じる取り間違いを防止し、作業スピード向上も期待できます。
同社では病院の薬剤部での実証実験を行い、従来約1.7%の確率で発生していたピッキングミスを0件としました。製造現場でもスマートグラスによるガイド線機能の実証実験を行い、作業時間の18.2%短縮に成功しています。
スマートグラスには遠隔通信や同時通訳、モニターなしでの動画や指示書の閲覧といったさまざまな機能があります。スマートグラスの機能解説や効率化できる業務を、下記の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
物流DXを成功させるにはコツがある!
物流のDXを成功させるにはいくつかのポイントがあります。
時間やコストを無駄にしないためには、最新技術の詳細を把握し、自社の課題に合ったシステムを導入することが大切です。自社だけでの導入が困難な場合は、信頼できるITベンダーやDX支援企業と連携し、スモールステップでDX化を推進しましょう。
特に中小企業にとっては、「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」といった各種補助金の活用によってコスト負担を軽減する取り組みも重要です。
物流DXの基本情報や成功させるコツは、下記の記事で詳しく解説しています。
ピッキングミスはDXの力で解決できる!
ピッキングミスは、現場環境や教育不足、システムの使いにくさなどの複数の要因が絡み合って発生します。適切な対策とDX推進によって、ミス削減が可能です。
DX推進は単なる作業効率改善にとどまらず、顧客満足度や企業の競争力をも左右する重要な投資です。
- アナログな業務フローで現場の課題が山積み
- DXを始めたいが、どこから手を付ければ良いか分からない
- 大手ベンダーに相談したが高額すぎて手が出せなかった
- 自社の複雑な業務フローに合ったシステムが開発できるのか不安だ
このような課題・不安がある方は、ぜひリベロエンジニアにご相談ください。
貴社の業務フローに合ったシステムの構築や、現場の実情に寄り添ったITコンサルティングによって、DX推進を支援いたします。スマートグラスをはじめとした最新技術の導入支援や、補助金を活用したコスト最適化のご提案まで、一貫してサポートいたします。
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【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。