DX失敗事例4選!うまくいかない原因や再挑戦にも活かせるコツを解説
2025.05.30

多くの中小企業がDXに挑戦しているものの「期待したほど成果が出ない」「現場がついてこない」といった失敗も少なくありません。
特にリソースの限られる中小企業では「社内にデジタル人材がいない」「何から始めれば良いか分からない」といった課題に悩まされるケースも多いでしょう。
本記事では、中小企業がDXに失敗する原因を解説するとともに、実際の失敗事例から学ぶべき教訓を解説します。他社の失敗を知れば、自社が同じ道をたどらないよう対策できるでしょう。
DXへの再挑戦にも活かせる成功のコツも具体的に紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
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中小企業がDXに失敗する5つの理由
DXとは、単なるITツールの導入や業務効率化にとどまらず、新たなビジネスモデルの創出や、企業全体の経営改革を伴う取り組みです。
しかし、DXの意味や取り組み方を理解しないまま「とりあえずITシステムを導入しよう」と考える企業も少なくありません。経済産業省が2024年に公表した「DX支援ガイダンス」では、中小企業の約半数が「DXを理解していない」「分からない」と回答しています。
独立行政法人情報処理推進機構がまとめた「DX動向2024」では、業務のデジタル化に取り組み成果が出た企業は4割以上とされています。
一方、ビジネスモデル改革や新サービスの創出に成功した企業は全体の2割程度にとどまってます。
多くの企業が「DXに取り組んでいるつもり」で終わっており、実際に成果を出している企業はごく一部です。中小企業を中心に多くの企業がDXに失敗してしまう原因を、下記の項目に沿って解説します。
- デジタル人材が不足している
- DX導入手順が分からない
- 経営層の理解が不足している
- 経営層と現場に温度差がある
- ITツールの導入が目的になっている
DXの基本情報や得られるメリットは下記の記事で詳しく解説しています。
①デジタル人材が不足している
「プログラミングができる」「Excelに強い」「デジタルネイティブ世代」などのスキル・属性があっても、DX推進担当者に適しているわけではありません。DXをけん引するデジタル人材には、下記の要素が求められます。
- 自社の事業を深く理解し、最適なデジタル技術を手段としてDX戦略を立案・実行できる
- 社内外の関係者を巻き込みながら変革を主導するリーダーシップがある
- DXやデジタル技術への知見があり、外部ベンダーと渡り合える
中小企業にとっての課題は、こうした人材を確保することの難しさにあります。優秀なデジタル人材は好待遇や成長機会を求めて大企業に流れる傾向が強く、自社内に確保するのは簡単ではありません。
そのため自社業務に精通し、信頼を得ている既存社員をデジタル人材候補として育てるのが現実的です。教育支援に積極的なベンダーを選べば、専門家の知見を借りながらスキルアップを図れます。
②DX導入手順が分からない
DX推進のプロセスを知らないため、何から始めれば良いか分からない企業も少なくありません。DXは下記のプロセスで進めます。
- 現状分析
- 戦略・目標設定
- ITツール選定
- 部分的に導入
- 全社展開
全社一丸となって取り組むDXは、社内の合意形成が不十分だと頓挫してしまいます。プロジェクト中断を防ぐためには、現状分析の段階で社内のキーパーソンを巻き込んでおくと良いでしょう。
目標設定の段階から不安がある場合は、最初からコンサルティング力に優れたITベンダーの力を借りるのも有効です。リベロエンジニアのように、中小企業の課題に寄り添いながら支援できるDXパートナーを活用すれば、コストや時間を無駄にしないDX推進が実現できます。
DX導入手順の詳細は下記の記事で解説しています。製造業以外の企業でも活かせる内容なので、ぜひ参考にしてみてください。
③経営層の理解が不足している
DXの成果を出している企業では、経営層がITを深く理解しているケースが多くみられます。
独立行政法人情報処理推進機構の「DX動向2024」によると、ITに理解のある経営層を持つ企業のうち、19.7%がDXの成果を出してます。
一方、経営層の理解が乏しい企業では、成果を出している割合は9%です。
「ITシステムを導入すれば何とかなる」という表面的な理解では、DXは成功しません。現場に丸投げされたプロジェクトは方向性を失い、迷走してしまうでしょう。
まずは経営層がITを理解し、自ら先頭に立ってDX推進する姿勢が不可欠です。
④経営層と現場に温度差がある
経営層と現場のDXへの熱量に差があると、プロジェクトはスムーズに進みません。
経営層はDXに前向きでも、現場では「業務が増える」「使いづらい」といった不満が出やすく、導入が進まないことがあります。
現場の理解と納得を得るには、小規模な導入から始め、仕事が楽になる実感を感じてもらうと良いでしょう。実際の業務フローでの課題を洗い出すために、丁寧なヒアリングも欠かせません。
一方、現場はDXの必要性を感じていても、経営層の理解が不十分で停滞するケースもあります。その場合は、DXによって削減できるコストや時間を明示し、同業他社の取り組みを示して危機感を共有することが有効です。
⑤ITツールの導入が目的になっている
DXにおけるITツールの導入はあくまで手段です。ITツール導入の先にある、競争力強化や顧客体験向上といった経営改革を目指しましょう。
「補助金が使えるから」「流行しているから」などの理由で導入すると、ITツールが社内で活用されず、無駄になってしまう可能性があります。
重要なのは「ITツールを導入すれば経営改革できる」ではなく、「経営戦略に基づいてITツールを活用するから、改革が進む」という発想を持つことです。
中小企業のDX推進のコツや、成功事例は下記の記事で解説しています。
DX失敗事例4つ!企業が学ぶべき教訓とは?
他の企業がDXに失敗した事例を知れば、自社でもリスクを避けられるでしょう。下記4つのDX失敗事例の詳細と、学ぶべき教訓や再起できた理由を解説します。
- セブン&アイ・ホールディングス|競争力の低さと推進役員不在でプロジェクトが迷走
- 江崎グリコ|基幹システムの大規模な刷新で主力商品の出荷停止
- GE|顧客置いてけぼりの新サービスで業績振るわず
- 三越伊勢丹|目的がないDXサービスで事業継続できず
セブン&アイ・ホールディングス|競争力の低さと推進役員不在でプロジェクトが迷走
セブン&アイ・ホールディングスは、グループ全体でDX戦略を進めようとECサイト「オムニ7」を立ち上げましたが、楽天市場やAmazonなどの大手ECモールに押され、十分な成果を出せないまま2023年にサービスを終了しました。
途中でプロジェクトの推進役だった役員が退任し、プロジェクトが迷走したことも失敗要因の1つです。
また、スマートフォン用決済サービス「セブンペイ」では、不正アクセスによる被害が発生。セキュリティ対策の甘さやシステムの不具合が露呈し、ユーザーからの問い合わせが殺到しました。セブンペイは、わずか3ヶ月でサービスを終了しました。
同社の失敗から得られる教訓は下記3つです。
- 自社の強みを活かして競合と差別化できるデジタルサービスを構築するべき。「デジタル化すれば成功する」という短絡的な発想のもとでは、競合優位性が保てない
- 推進役の不在はDXプロジェクトを迷走させ、頓挫を招く
- システム設計の甘さは顧客の信頼を損なう
江崎グリコ|基幹システムの大規模な刷新で主力商品の出荷停止
出典:江崎グリコ(Glico)
2024年4月、江崎グリコは基幹システムをERP(統合基幹業務システム)へと全面刷新しました。従来は部門ごとに異なるシステムを使用しており、システム統合のためにパッケージ型ERPに切り替えました。
しかし、長年使われていた独自システムからの一括移行はスムーズに進まず、業務に大きな混乱が生じました。
「プッチンプリン」のような主力チルド商品の出荷が停止し、当初想定していた1ヶ月では復旧の目処が立たない状況に陥ります。結果、2024年12月期の連結売上高は150億円の下方修正を余儀なくされました。
同社の事例から学ぶべき教訓は、長年使用したシステムの急な刷新には大きなリスクが伴うことです。旧システムとの併用を前提に、段階的に導入を進めるべきでした。
また、パッケージ型システムを導入する際は、業務プロセスの見直しを前提とすべきです。もしくは、自社の業務に合わせて独自のシステムを構築する必要があります。
150億円という巨額の損失に加え、企業としての信頼低下も招いた同社のトラブルは、ITシステムの不備が経営リスクになりうることを強く示しています。
GE|顧客置いてけぼりの新サービスで業績振るわず
出典:GE
かつて「世界有数の多角経営企業」と言われたGE(ゼネラル・エレクトリック)は、2001年以降に業績が低迷し、複数の事業を売却する事態に陥りました。その要因の1つが、DX推進の失敗だったとされています。
GEはDX推進のためにわずか6年で約40億円を投資し、5,500人の外部デジタル人材を採用しています。
経営トップにデジタル人材を据え、IoTプラットフォーム「Predix」を開発・リリースしました。Predixは産業機器をネットワークで繋ぎ、ビッグデータを収集・活用できるものでしたが、市場では受け入れられませんでした。
GEの失敗の背景には3つの教訓があります。
1つ目は、ビジネスモデルの急激な転換は社内混乱を招く点です。GEは従来、ハードウェア販売が中心でしたが、Predixは成果報酬型かつサブスクリプション型という全く新しいビジネスモデルでした。
急激なビジネスモデルの転換は営業現場の混乱を招きました。DXはビジネスの再設計を伴うものですが、十分な時間をかけて取り組むべきです。
2つ目は、外部人材と内部人材の摩擦です。外部から招かれたデジタル人材は社内に人脈がなく、内部人材との連携がうまくいきませんでした。
スムーズなDX推進には社内の協働が不可欠です。外部人材に依存せず、自社の業務と文化を理解した内部人材の登用が重要です。
3つ目は、顧客ニーズとのズレです。PredixはもともとGE社内向けのプラットフォームだったため、市場ニーズを的確に捉えきれず、顧客からの支持を得られませんでした。DX製品やサービスは、開発段階から顧客を巻き込んで設計することが不可欠です。
三越伊勢丹|目的がないDXサービスで事業継続できず
百貨店業界の中でも、株式会社三越伊勢丹ホールディングスは早くからDXに取り組んでいます。現在では、定期食品宅配サービス「ISETAN DOOR」やコスメ特化ECサイト「ISETAN BEAUTY online」など、好調なデジタルサービスを複数展開しています。
しかし、かつてはDXに失敗した経験もあります。例えば、下記の施策はいずれも長続きしませんでした。
- 米国発のショッピングSNS「FANCY」への出店
- AIによる商品おすすめサービスの導入
失敗の背景には「とにかく新しいことをやろう」という目的不在の取り組みがありました。
DXは効果が見えるまでに時間がかかるため、明確な方針や理念がなければ途中で頓挫しやすくなります。反省を踏まえ、同社では明確な方向性を掲げてDXを再始動しました。
例えば「ISETAN DOOR」はバイヤーの目利き力を活かし、顧客接点を増やすことを目的としています。
また「ISETAN BEAUTY online」は、百貨店事業で培った強みを活かした新ビジネスとして取り組みました。
同社の事例から学ぶ教訓は下記2つです。
- DXの効果が出るには時間がかかるため、目的が不明確だと継続できない
- DXを活用した新サービスは自社の強みを活かせるものにする
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DX失敗を避ける5つのポイント!再挑戦にも有効
コストや時間を無駄にしないために、自社のDX失敗を避けるためのポイントを学びましょう。DXへの再挑戦にも有効な、下記5つのコツを解説します。
- 明確な目的を設定する
- 小さな成功体験を積み重ねる
- 現場の意見を取り入れる
- DXの「守り」と「攻め」を使い分ける
- 信頼できるパートナーを選ぶ
①明確な目的を設定する
短期・中期・長期の明確な目標を設定することが大切です。DXは時間がかかる取り組みなため、長期的なビジョンがないと効果不十分のまま頓挫してしまう可能性があります。
例えば製造業の場合、下記のような目標が考えられます。
- 短期:紙の作業指示書をやめ、タブレットによる共有に切り替える
- 中期:受発注・納品・在庫データを基幹システムに一元化し、リアルタイム管理を実現する
- 長期:AIを活用して生産計画を最適化する
②小さな成功体験を積み重ねる
いきなり大規模な変革を目指すのではなく、小さなプロジェクトや部署からDX化して成功体験を積み重ねましょう。スモールスタートに成功すれば、社内の理解も得やすくなります。
下記のような部署が最初のDX化におすすめです。
- アナログな業務で従業員のフラストレーションが溜まっている
- DX推進に理解・興味がある
- 大規模な設備投資が不要である
③現場の意見を取り入れる
現場の声を聞かずにシステム導入すると、従業員の混乱やDXへの反発を招きます。ITシステムを導入しても、使われなかったら意味がありません。
現場の業務フローに精通している人材から、困っていることや課題を丁寧にヒアリングすると良いでしょう。
④DXの「守り」と「攻め」を使い分ける
DXには「守り」と「攻め」の概念があります。自社の状況に応じて、意図的に使い分けると良いでしょう。
- 守り:業務効率効率化や生産性向上など、社内向けのDX
- 攻め:新ビジネスの創出や顧客体験の向上を目指す社外向けDX
下記の図は、DXを起点としたイノベーションの達成難易度と、企業の競争力レベルの相関を示しています。
出典:「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」結果速報~日本企業のDXへの取り組み実態、成功企業の特徴について~|株式会社NTTデータ経営研究所
守りのDXは業務効率化を目的とするものが中心で、達成難易度は比較的低いことが特徴です。一方、攻めのDXは達成難易度は高いものの、競争力強化を促すことが分かります。
「守り」のDXのほうが実現しやすいため、最初の一歩におすすめです。
⑤信頼できるパートナーを選ぶ
適切なDX推進には、信頼できるパートナーが不可欠です。
長期間同じシステムを使っている企業では、システムの改修や当時の担当者の不在、老朽化などによってブラックボックス化が進んでいます。自社でも把握しきれていないシステムの刷新を外部に丸投げすると、社内の実情に合わないものが納品されてしまう懸念があります。
中小企業のDX推進パートナーとなるITベンダー選びには、下記の要素があるかを確認しましょう。
- 単なるシステム屋ではなく、コンサルの目線を併せ持っている
- 画一的なパッケージ型システムを納品するのではなく、伴走型で自社の業務フローに合うシステムを構築できる
お困りの際は、上記を大切にしてDX支援を行っているリベロエンジニアにぜひご用命ください。
DXコンサルの選び方や、依頼時に注意したいポイントは下記の記事で解説しています。
DX失敗を避けて、競争力強化に成功しよう!
DXには長い時間とコストがかかることから、失敗を恐れて踏み出せない企業も少なくありません。過去に失敗経験があると、社内でDX機運が高まらない場合もあるでしょう。
しかし、これからの時代に競合優位性を獲得してビジネスを拡大していくためには、DX推進が不可欠です。歴史がある企業こそ、培った技術や知見を活かし、DXを起爆剤としてビジネス展開できる可能性があります。
リベロエンジニアでは、DX推進を失敗なく進めたい、再度挑戦したい方からのご相談をいつでも受け付けております。
「大手ベンダーに依頼したものの高額すぎて手が出せなかった」「自社に合わないシステムが納品されて社内混乱を招いてしまった」といった苦い経験がある方も、ぜひ一度ご相談ください。
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【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。