スマートファクトリー成功事例5選!失敗の要因や導入ステップも解説
2025.06.03

スマートファクトリーは、AIやIoTなどの最新技術を活用し、生産現場の自動化・見える化を実現します。人手不足、品質管理の徹底、納期短縮など、解決すべき課題が山積する中でスマートファクトリーの導入を検討している方も多いでしょう。
スマートファクトリー導入で具体的に上がっている成果を知れば、自社への導入のヒントになります。本記事では、スマートファクトリー導入の成功事例を5つ紹介します。
スマートファクトリー導入に失敗する要因や、導入ステップもわかりやすく解説するので、DX推進の参考にしてみてください。
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スマートファクトリーとは?
スマートファクトリーとは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの最新技術を組み合わせて、生産現場の自動化・最適化を図る取り組みです。
一般的には、下記の流れで自動化を進めます。
- 各種センサーで生産に関わるデータ収集
- クラウドやサーバでデータ蓄積
- AIによるデータ分析
- 分析結果をもとに生産工程の制御・最適化
2024年6月に経済産業省が公開した「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」では、最新のデジタル技術の中から目的に応じて選定・組み合わせを行う必要があるとしています。同ガイドラインでは、下記のデジタル技術が紹介されています。
デジタル技術 | 機能 |
・各種センサ・画像識別 | 生産に関わるデータを感知 |
・ローカルサーバー ・クラウドデータベース など | 取得したデータの蓄積 |
・AR ・VR など | 蓄積したデータの認識および可視化 |
・AI など | 情報の解析や判断 |
・Wifi6 ・ローカル5G、6G | 解析した情報の伝達 |
・ロボティクス | 情報に基づいた自動化や制御 |
・ERP(統合基幹業務システム) ・MES(製造実行システム) など | 一連の技術のシステム連携や処理スピード向上 |
製造業のDX化におすすめのDXツールは下記の記事で詳しく紹介しています。「スマートグラス」のような上記に含まれないツールも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
製造業中心にスマートファクトリー導入が進む理由
同ガイドラインでは、スマートファクトリーが下記の課題を解決する有効な手段として位置付けられています。
- 生産性の向上
- サービスレベルの向上
- 働き方改革の推進
- 新たなサービスの創出 など
これらの課題解決が求められる背景にあるものは、企業を取り巻く社会環境の急激な変化です。社会環境の変化として、下記が挙げられています。
- 自然災害
- パンデミック
- 労働人口の減少 など
企業におけるデジタル化の取り組みは、一般に「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と呼ばれます。スマートファクトリーは、その中でも製造現場の効率化に特化したDXの1つといえるでしょう。
スマートファクトリーの基本情報は、下記の記事で分かりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
スマートファクトリーの最新事例5選!
スマートファクトリー導入に成功した事例を知れば、自社への導入のイメージが掴めるでしょう。
最初から全ての生産工程を自動化する必要はありません。自社の課題や改善ニーズに合った取り組みを推進できるよう、下記5つの事例を参考にしてみてください。
- 【食品】ビッグデータ一元管理で人的ミスが激減|マルハニチロ
- 【製造業】独自開発の総合情報管理システムで生産性向上|武州工業
- 【製造業】工場全焼からDX推進し、新事業創出に成功|浜野製作所
- 【大手企業】工場IoTとAIをトヨタ生産方式に組み込み|トヨタ自動車
- 【大手企業】最新技術を駆使して製造プロセス最適化、新たな価値創造へ|東レ
【食品】ビッグデータ一元管理で人的ミスが激減|マルハニチロ
出典:マルハニチロ
水産加工業大手のマルハニチロは、食品製造の現場で発生する膨大なデータを一元管理する生産管理システムを導入しました。温度管理や在庫状況などをリアルタイムで可視化し、従来は人手で行っていた確認作業の自動化に成功しています。
その結果、配合ミスや計算ミスといったヒューマンエラーの大幅な削減に繋がり、現場従業員の負担軽減にも貢献しています。作業の属人化も解消され、工場全体で生産性向上に成功しました。
生産管理システムの導入によって、食品加工業者としては欠かせないトレーサビリティ(※)も強化されています。「安全・安心」がデジタルの力で支えられ、顧客からの信頼獲得にも繋がっています。
※原材料調達および生産から廃棄までの全工程を追跡可能な状態にすること。品質管理や安全性向上に役立つ。
【製造業】独自開発の総合情報管理システムで生産性向上|武州工業
出典:武州工業
東京都青梅市の武州工業は、自動車用の金属加工や自動制御機械の製作などを手掛けています。
同社では、1人の従業員が材料調達から出荷までの全ての工程を担う「一個流し生産」方式を採用しており、生産管理システムによって品質安定やリードタイム短縮が実現しています。同社ではデジタル人材の育成にも力を入れており、本システムは独自開発されたものです。
具体的には、生産現場に設置したIoTセンサーでリアルタイムに作業時間や設備の稼働状況などを収集します。収集したデータは速やかに把握および解析され、無駄な工程を排除し、稼働率向上や不良品削減に貢献しました。
同社には社長を最高責任者としたDX推進体制が構築されており、経営層が先陣を切ってスマートファクトリー導入を推し進めてきた好事例でもあります。DX推進が評価され、日刊工業新聞社とモノづくり日本会議が行う「スマートファクトリーAWARD2018」に選出されています。
【製造業】工場全焼からDX推進し、新事業創出に成功|浜野製作所
出典:浜野製作所
各種装置・機械の設計開発や精密板金加工などを手掛ける浜野製作所は、元は町工場でありながらDX推進によって新事業創出に成功しています。
同社は、2000年に工場が火災で全焼する危機を迎えました。その再建プロセスでDXに着手し、最新の機器類を多く導入し、見事再起を果たします。
同社は、新しいものづくり支援拠点として「Garage Sumida(ガレージスミダ)」を設立しました。本拠点では、顧客とは板金加工の下請けとしてではなく、ものづくり支援のパートナーとして技術相談やプロトタイプの開発、量産化などの支援を行います。
ものづくりの上流から下流までを一気通貫で支える取り組みが評価され、ベンチャー企業や大学の研究機関、大手企業とも共創しています。
DXとは、単なる生産プロセスの効率化にとどまらず、企業の風土改革を促し新事業の創出を目指す取り組みです。同社の取り組みは、中小企業において新事業創出まで実現している好事例といえるでしょう。
【大手企業】工場IoTやAIをトヨタ生産方式に組み込み|トヨタ自動車
出典:トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社は、独自のカイゼン文化を持つ「トヨタ生産方式(TPS)」に、IoTやAIなどの最新技術を融合させることで、スマートファクトリー化を推進しています。
高度なDXの実現により、設備稼働監視の省人化や不良品の予兆検知、既存設備の有効活用など、さまざまな領域で効率化を成功させています。
同社のスマートファクトリー化から学ぶべきは、自社の哲学や方針に沿った形で最新技術を活用している点です。例えば、IoT導入の際は「人を機械の番人にしない」ことを重視し、故障の少ないシンプルな設備の採用や、必要最低限のセンサー追加といったトヨタらしい「カイゼン」を実践しています。
DXは最新技術を「導入すること」自体が目的化しがちですが、明確な目標や課題意識がなければ、失敗リスクが高まります。
効率化や生産性向上だけに目を向けるのではなく、培ってきた社内文化や人的資産を、スマートファクトリー化を通じて、どのように進化させるかがDX成功の鍵となるでしょう。
【大手企業】最新技術を駆使して製造プロセス最適化、新たな価値創造へ|東レ
出典:東レ株式会社
東レ株式会社は、AIとIoTの融合によって製造プロセスの革新に取り組んでいます。生産ラインの自動化に成功し、品質向上とコスト削減を実現しました。さらに、AIを活用した高度なデータ分析によって、不良品の発生率を大幅に低下させています。
具体的な最新技術の活用方法としては、IoTで機械や設備の稼働状況をリアルタイムに把握し、収集したデータを中央の管理システムでまとめて分析しています。これにより生産プロセス全体の安定性を高めるとともに、環境負荷の低減とコスト削減を両立させています。
東レの取り組みの特徴は、スマートファクトリー化が単なる製造現場の自動化・最適化にとどまらない点です。
蓄積されたデータと先進技術を活用し、新たなビジネスモデルの創出や顧客満足度の向上、さらには環境に配慮したものづくりといった、社会的価値の創出にも繋がっています。
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スマートファクトリーが失敗する5つの原因
多額なコストと時間がかかるスマートファクトリーの導入には、失敗を避けたいと考える方がほとんどでしょう。スマートファクトリーに失敗する良くある原因を事前に把握しておけば、成功確率を高められます。
下記5つの良くある失敗を解説します。
- 導入目的がはっきりしていない
- 現場の理解・協力が得られない
- いきなり複雑な技術を導入する
- 導入専門部署の設置が難しい
- 外部ITベンダー任せになってしまう
①導入目的がはっきりしていない
スマートファクトリー導入に失敗する企業の多くは、導入目的が不明瞭なままプロジェクトを進めてしまいます。
「他社がDXに取り組んでいるから」「とにかく新しいことに取り組むべきだから」といったあいまいな目的だと、導入失敗を招きます。
まずは現場の課題や経営目標を正確に把握・明文化し、明確なKPIを設定することが成功の第一歩です。
②現場の理解・協力が得られない
現場の社員がスマートファクトリー化を「自分たちの仕事を奪うもの」と感じてしまうと、協力が得られずに導入が頓挫してしまいます。
現場の課題を一緒に整理し、導入によって業務がどのように改善されるかを丁寧に共有することが大切です。
先に紹介したトヨタ自動車の事例のように、スマートファクトリー化した上で人をどのように活用するかを事前に定めておくことも重要です。人材活用に対する会社としての考え方や、目指す方向性を丁寧に解説すれば、現場からの理解を得られるようになるでしょう。
③いきなり複雑な技術を導入する
スマートファクトリーの導入は、段階的に進めるのが基本です。最初からAIや高度なロボット技術を取り入れようとすると、コストや工数がかさみ、途中で頓挫するリスクが高まります。
現場の従業員が混乱すれば、かえって生産性が下がる恐れもあります。既存顧客へのサービスに支障が出れば、企業の信頼性にも悪影響を及ぼしかねません。
まずは、IoTセンサーによる現場の見える化や、小規模なクラウド管理の導入といった、小さな一歩から始めましょう。段階的に取り組みのレベルを引き上げれば、無理なくスマートファクトリー化を実現できます。
④導入専門部署の設置が難しい
中小企業では、DXやスマートファクトリーの推進を担う専門部署を設置できないケースが多くあります。DX担当者が社内にいない場合、下記の対策がよく取られます。
- 既存社員をDX担当者として教育する
- 新たに中途採用する
- 外部ベンダーにDX推進を任せる
上記のうち、DX推進に成功している企業では、既存社員を教育しているケースが目立ちます。社内にDXやITの知見がないと、中途採用の応募要件作成が難しく、外部ベンターとも対等に渡り合えません。
現場を理解した人材がスマートファクトリー化を主導すれば、社の実情に合ったDXが進めやすくなるでしょう。
⑤外部ITベンダー任せになってしまう
外部ITベンダーにスマートファクトリー化を丸投げしてしまうと、期待した効果が得られないばかりか、成果に繋がらないままコストが増大しかねません。
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構が設けた「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」でも、スマートファクトリー化において自社がイニシアチブを取ることの重要性が説かれています。
たとえ導入自体がうまくいっても、自社にノウハウが残らないため長期の運用が難しくなるでしょう。
リベロエンジニアでは、製造業を中心にDX支援を提供しており、業務フローの再構築からシステム構築、運用改善まで一貫してサポート可能です。
伴走型で現場と並走し、実際の業務フローに合わせて少しずつシステム構築するスタイルだからこそ、中小企業のDX成功に繋がっています。自社のスマートファクトリー化に課題を抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。
スマートファクトリー導入のロードマップ
スマートファクトリー化のロードマップを知れば、自社への導入の道筋が立つでしょう。
前述した「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」では、下記4つのフェーズを踏むよう解説されています。1フェーズずつ、詳しく解説します。
- フェーズ①:企画
- フェーズ②:基本設計
- フェーズ③:ベンダー選定・ツール選定
- フェーズ④:実装
フェーズ①:企画
スマートファクトリー導入において、最も重要なのが最初の「企画」段階です。
企画フェーズでは、自社がスマートファクトリーを通じて何を実現したいのかを明確にします。目的や方向性がはっきりしていれば、導入後に一部の工程が思うように進まなかった場合でも、計画の軌道修正がしやすくなります。
また、策定した企画や目標は、経営層だけでなく現場の従業員にも丁寧に周知することが重要です。全社的な共通認識があってこそ、現場を巻き込んだ効果的なDX推進が実現できます。
フェーズ②:基本設計
次の「基本設計」フェーズでは、デジタル化する業務を選定し、具体的な計画に落とし込んでいきます。基本設計段階で、導入するデジタルツールに求める機能や仕様も明確にしておくことが重要です。
業務フローそのものの見直しが必要な場合は、この段階で再設計に取り組みます。事前にデジタルツールに求める要件を整理しておけば、導入後の「現場の改善ニーズと合わない」といったミスマッチを防げます。
フェーズ③:ベンダー選定・ツール選定
スマートマニュファクチャリング構築ガイドラインでは、下記2点が本フェーズで推奨されています。
- 基本設計で明確にした内容をもとに最適なデジタルツールを選定する
- ツール導入を支援するITベンダーを決定する
しかし実際には、基本設計の段階から外部ベンダーのサポートを必要とする企業も少なくありません。特にDX推進やスマートファクトリー導入に不慣れな中小企業にとっては、初期の構想段階から相談できるパートナーの存在が、成功の鍵を握ります。
リベロエンジニアのようにコンサルティング力も兼ね備えたITベンダーを選ぶと、導入前の検討から実装・運用までを一貫して支援してもらえるため安心です。パッケージ化したシステムの導入が自社に合わなかったという経験がある方も、ぜひご相談ください。
製造業の企業がDX推進する際にコンサルタントが必要か疑問がある方には、下記の記事がおすすめです。コンサルタントの役割や、選定時のポイントを紹介しています。
フェーズ④:実装
スマートファクトリーの導入では、デジタルツールの導入から運用の定着までを1つのゴールと捉えます。導入して終わりではなく、運用しながら改善し続けることが大切です。
実装段階では、システム構築やネットワーク環境の整備などの技術的な対応は、基本的にITベンダーが担います。
一方、業務プロセスの検証やマニュアル作成など、現場に密接した部分は自社が主体となって進める必要があります。
一定の成果が見えてきたら、さらに高度なシステムの導入を検討するのも効果的です。
中小企業のDXの進め方は、下記の記事が参考になります。より詳細な推進ステップや成功事例を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ:スマートファクトリー導入でDX化を推進しよう!
スマートファクトリーは、単なる自動化ではなく、企業全体の競争力を高めるための戦略的な取り組みです。本記事で紹介した成功事例を参考にしつつ、自社に合った導入ステップを計画的に踏み、スマートファクトリー化を成功させましょう。
導入失敗のリスクを避けるには、信頼できるパートナーとの連携が不可欠です。
- 長年DX推進を検討してきたが具体化しなかった
- 同業他社のスマートファクトリー化で焦りを感じている
- 人手不足でDX化を進めないと業務が回らない
このような課題をお持ちの方は、中小企業のDX推進に精通したリベロエンジニアまで、ぜひご相談ください。
\”現場に合わせた使いやすいDX化”をスモールスタートできる!/
【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。