スマートロジスティクスとは?導入メリットや導入事例、最新技術を解説!
2025.06.13

スマートロジスティクスとは、IoTやAI、ロボティクスといった最先端技術を駆使し、物流全体の最適化と効率化を図る取り組みを指します。単なるコスト削減や業務改善に留まらず、企業の競争力強化やビジネスモデル変革に繋がる可能性があります。
しかし、スマートロジスティクスに使われる最先端技術や、導入によって得られるメリットをイメージできない方も多いでしょう。本記事では実際にスマートロジスティクスを導入して成果を上げている企業の事例や、物流業界に特化した最新技術を詳しく解説します。
中小企業がスマートロジスティクスを成功させるための具体的なコツも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
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スマートロジスティクスとは?
スマートロジスティクスとは、IoTやAIといった最先端技術を駆使し、物流業務の効率化と自動化を追求する取り組みです。アナログで非効率な作業が多かった物流業務を、テクノロジーの力で最適化します。
現在、物流業界は「2024年問題」と呼ばれる働き方改革や社会情勢の変化によって、以下のような課題に直面しています。
- 労働時間制限
- 人手不足
- 労働者の高齢化
- EC市場の発達による消費者ニーズの多様化
これらの課題を乗り越えるためには、スマートロジスティクスによる業務の効率化・可視化・省人化が必須です。
ミック経済研究所株式会社が2024年9月に発刊した「スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2024年度版】」によると、スマートロジスティクス・ソリューション市場は2024年度に363.4億円の市場規模に達すると予測されています。
以下の図が示すように年々市場規模は拡大しており、2028年度には656.3億円規模にまで成長する見込みです。
出典:「スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望 2024年度版」プレスリリース添付資料|ミック経済研究所
なお、上記図で示されている各システムの詳細は「スマートロジスティクスを支える5つの最先端技術」の章で詳しく解説します。
スマートロジスティクス・ソリューション市場の急激な拡大は、今後の物流企業にとってスマートロジスティクスの導入がビジネス継続に不可欠となることを明示しています。
スマートロジスティクスは、単なる業務のIT化にとどまりません。最先端技術を導入することで、物流企業の業務改善やビジネスモデルの革新、企業風土改革を実現する取り組みです。このような取り組みは「物流DX」と呼ばれています。
物流DXをさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。DXへの理解を深めれば、スマートロジスティクスで目指すものもより明確になるでしょう。
スマートロジスティクスで実現できる5つのこと
スマートロジスティクスの導入は、物流企業に多くのメリットをもたらします。具体的なメリットを把握すれば、自社への導入イメージが沸きやすくなるでしょう。
以下5つのメリットを詳しく解説します。
- 人手不足の解消と省人化
- 在庫や配送状況のリアルタイム可視化
- 配送ルート最適化によるコスト削減
- エラーやミスの削減による品質向上
- 企業間連携の高度化
①人手不足の解消と省人化
スマートロジスティクスは、倉庫内に以下の最先端技術を導入し、これまで人手に頼っていた作業を自動化・省人化します。
- 搬送ロボット
- 自動倉庫システム
- ピッキングロボット など
自社の業務に合った技術の導入によって、限られた人材でより多くの業務をこなせるようになり、人手不足の解消に貢献するでしょう。人力の作業を減らせば従業員の身体的負担も軽減されるため、働きやすい環境を整備でき、高齢化や早期離職への対策にもなります。
②在庫や配送状況のリアルタイム可視化
従来の物流現場では、最新の在庫状況や配送状況の把握が困難でした。スマートロジスティクスでは、IoTデバイスやセンサー、GPSなどを活用し、以下の情報をリアルタイムで可視化します。
- 倉庫内の在庫数
- 商品の所在
- 輸送中の車両の位置 など
これらの情報は中央管理システムで一元管理され、いつでもアクセス可能です。急な注文変更やトラブル発生時にも迅速に対応でき、顧客満足度の向上にも繋がるでしょう。
③配送ルート最適化によるコスト削減
配送ルート最適化システムでは、AIが以下の情報を総合的に分析し、最も効率的な配送ルートを算出します。
- 交通状況
- 荷物の量
- 配送先の位置
- 車両の積載量 など
無駄な走行距離や燃料消費を削減し、配送にかかる時間とコストを大幅に削減できるでしょう。積載率の向上も可能になるため、車両台数の削減にも繋がります。
従業員の経験値に頼っていたルート作成が自動化できるため、新人でもすぐに効率良く配送できるようになる点もメリットです。
④エラーやミスの削減による品質向上
スマートロジスティクスでは、以下技術の導入によって物流関連業務のヒューマンエラーを削減します。
- 自動認識技術(RFID、バーコードリーダー)
- 画像認識技術
- AIによる検品システム など
例えば、自動ピッキングシステムを導入すれば人力の工程が減り、ピッキングミスを削減できます。自動検品システムは商品の状態を正確に判断できるため、不良品の見逃しを防止します。
出荷品質が向上すれば、顧客満足度の向上や返品対応にかかるコスト削減に貢献するでしょう。
⑤企業間連携の高度化
スマートロジスティクスは、企業間で情報を共有するためのプラットフォームを構築できるため、サプライチェーン全体の最適化を促進します。
取引先や委託業者との情報連携がスムーズになり、リードタイム短縮やコミュニケーションコストの削減に繋がるでしょう。担当者不在でも業務が進むため、属人化の防止にも役立ちます。
部署間の連携もスムーズになります。例えば、WMS(倉庫管理システム)やTMS(配送管理システム)を連携させれば、発注から納品までのプロセスを円滑に進められるでしょう。在庫の適正化や顧客への正確な情報提供に繋がります。
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スマートロジスティクスの導入事例3選
具体的な成功事例を知れば、導入メリットをより詳細に把握できるでしょう。実際にスマートロジスティクスを導入し、成果を上げている企業の事例を3つ紹介します。
- ロジスティード|最先端技術で顧客の物流課題を解決
- スズケン|医薬品物流を独自プラットフォームで最適化
- JRグループ|多機能ロッカーで駅を物流拠点化
①ロジスティード|最先端技術で顧客の物流課題を解決
出典:ロジスティード
株式会社ロジスティードは、日立物流を前身とする総合ロジスティクス企業です。長年にわたる物流事業で培ってきたノウハウと、最新テクノロジーを組み合わせることで、顧客の複雑な物流課題を解決しています。
同社は、以下のような多岐にわたるスマートロジスティクスソリューションを提供しています。
- 物流センターの自動化
- 作業分析支援ツールで作業の可視化
- 最適なサプライチェーンプランの提案 など
例えば、自動化の取り組みにおいては、以下設備の開発・導入を積極的に進めています。
- 自動倉庫
- 自動仕分け機
- 無人搬送車
- ロボット など
中でも無人搬送車は、専用ロボットが商品棚を動かす最先端のピッキングシステムです。従来の人が徒歩でピッキング商品を集めるシステムと比較すると、大幅な作業効率化を実現します。
以下は同社の無人搬送車を導入した倉庫イメージです。
②スズケン|医薬品物流を独自プラットフォームで最適化
出典:スズケン
株式会社スズケンは、医薬品販売と医療用機器開発を主要事業とする企業です。医薬品を取り扱う上で不可欠な高度な品質管理と迅速な配送を実現するため、同社は独自の物流プラットフォームを構築し、スマートロジスティクスを推進しています。
具体的には、製薬企業・医薬品卸・医療機関からリアルタイムな在庫情報を収集・分析しています。導き出された適正在庫量や発注量に関する情報を各機関に提供することで、医薬品流通全体の最適化を図っています。
2024年4月には、製造業務も可能な物流拠点である「首都圏物流センター」の稼働を開始しました。AI、ロボット、無人搬送車といった最先端設備が導入されており、従来の3割の人員数で業務を行うことが可能になりました。
近年、より厳格な管理が求められる高額医薬品のニーズが拡大しています。同社はスマートロジスティクスへの取り組みを通じて、必要とする人々に最適なタイミングで医薬品を届けられる体制を構築しています。
③JRグループ|多機能ロッカーで駅を物流拠点化
JR東日本グループが2023年に設立した株式会社JR東日本スマートロジスティクスは、多機能ロッカー「マルチエキューブ」による駅の物流拠点化を進めています。
本サービスでは、利用者が使いたい駅のロッカーをあらかじめ予約できたり、ECサイトで購入した商品を受け取ったりすることが可能です。以下はマルチエキューブ活用のイメージ図です。
同社では、鉄道網という既存インフラと多機能ロッカーを組み合わせることによって、さらなる利便性向上を目指しています。本サービスは配送ドライバーの負担軽減にも繋がる取り組みとして注目されています。
その他の物流DX成功事例については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
スマートロジスティクスを支える5つの最先端技術
スマートロジスティクスの実現には、様々な最先端技術への理解が不可欠です。正しい知識があれば、自社に最適な技術を選定できるでしょう。
「スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2024年度版】」でも取り上げられている、以下5つの技術を解説します。
- 倉庫管理システム(WMS)
- バース管理システム
- 配送管理システム(TMS)
- 動態管理システム
- 倉庫運用管理システム(WES)
①倉庫管理システム(WMS)
倉庫管理システム(Warehouse Management System、以下WMS)は、倉庫内のあらゆる業務を一元的に管理・最適化するシステムです。入庫から出庫、在庫管理、ピッキング、棚卸しまで、倉庫業務の全体を効率化します。
WMSを導入すると以下が可能になります。
- リアルタイムでの在庫状況把握
- 最適なロケーション管理
- ピッキングルートの最適化
- 出荷指示の自動化 など
人為的なミスの削減、作業時間の短縮、在庫コストの削減に貢献するでしょう。
倉庫内の自動化を進める取り組みを「倉庫DX」と呼びます。倉庫DXで活用されるその他の最新技術は、以下の記事で詳しく解説しています。
②バース管理システム
バース管理システムは、物流センターにおけるトラックの入出荷バース(トラックが荷物の積み下ろしを行う場所)の予約・管理を効率化するシステムです。
トラックの集中による待機時間の発生や、バースの空き状況の把握不足は、物流センターの効率を低下させる要因となります。バース管理システムを導入すれば、ドライバーは事前にオンラインでバースを予約でき、物流センター側もトラックの到着時刻や積載内容を事前に把握できます。
トラックの待機時間を短縮し、バースの稼働率を最大化すれば、物流センター全体の生産性向上とコスト削減に繋がるでしょう。
③配送管理システム(TMS)
配送管理システム(Transport Management System、以下TMS)は、輸送・配送業務全体を効率的に管理・最適化するシステムです。
TMSを導入すると以下が可能になります。
- 配送ルートの自動最適化
- 車両の積載効率向上
- リアルタイムな配送状況の追跡
- ドライバーの運行管理 など
AIを活用したルート最適化機能は、渋滞情報や交通規制などを考慮し、最短・最安ルートを算出することで、燃料費の削減や配送時間の短縮に貢献します。
また、リアルタイム追跡機能により、顧客への正確な到着時刻の通知や、トラブル発生時にも迅速な対応が可能になります。
配送管理システムによっては売上管理にも対応しているため、経理業務の効率化にも繋がるでしょう。
④動態管理システム
動態管理システムは、GPSや通信技術を活用し、運行中の車両の位置情報をリアルタイムで把握・管理するシステムです。
動態管理システムを導入すると、以下を地図上で視覚的に確認できます。
- 各車両のリアルタイムの走行位置
- 各車両の移動速度
- 停止中の車両位置 など
急な配送指示やトラブル発生時には、最も近い車両を迅速に手配するといった柔軟な対応が可能になります。連続走行時間の管理も可能なため、長距離走行を防止して従業員の健康管理を実施することも可能です。
⑤倉庫運用管理システム(WES)
倉庫運用管理システム(Warehouse Execution System、以下WES)は、WMSと倉庫内の自動化設備(自動倉庫、無人搬送車、ピッキングロボットなど)を連携させ、統合的に運用するシステムです。
WMSが倉庫全体の在庫管理やロケーション管理を行うのに対し、WESは個々の自動化設備が最も効率的に稼働するように指示を出します。
例えば、WESはWMSからのピッキング指示を受け取り、無人搬送車に最適なルートで商品を搬送させ、ピッキングロボットに正確な商品をピッキングさせるように指示します。
WESとWMSを連携させれば、倉庫内の自動化設備を最大限に活用し、生産性の高い倉庫運用を目指せるでしょう。
中小企業がスマートロジスティクスを成功させる3つのコツ
スマートロジスティクスの導入は、人手の限られる中小企業にとって大きなメリットがあります。しかし、限られたリソースの中でスマートロジスティクスを成功させるためには、以下3つのポイントを押さえることが大切です。
- DX推進の基本ステップを踏む
- 物流関連の補助金を利用する
- 適切なパートナー企業を選定する
それぞれ詳しく解説します。
①DX推進の基本ステップを踏む
スマートロジスティクスは、物流DXの一部です。そのため、DX推進の基本ステップを踏むことが成功への近道となります。
スマートロジスティクスの進め方は、以下の表を参考にしてみてください。
ステップ | 概要 |
①現状分析 | 自社の物流業務の課題、非効率な点、コストがかかっている部分などを詳細に洗い出す。 |
②課題抽出 | 現状分析の結果に基づき、スマートロジスティクスで解決すべき具体的な課題を明確にする。例えば、「誤出荷が多い」「配送コストが高い」「人手が足りない」など。 |
③小規模導入 | いきなり大規模なシステムを導入するのではなく、特定の部署や業務に絞って小規模導入し、効果を検証する。 |
④効果検証 | 小規模導入後、設定した目標に対してどの程度の効果があったかを数値データに基づいて客観的に評価する。 |
⑤本格展開 | 小規模導入と効果検証の結果を踏まえ、本格的なシステム導入や他部署への展開を検討する。 |
この手順に則れば、導入失敗を避けてスムーズにスマートロジスティクスを運用できるでしょう。中小企業のDXの進め方は、以下の記事でも詳しく解説しています。
②物流関連の補助金を利用する
スマートロジスティクス導入のための初期投資は、中小企業にとって大きな負担となるでしょう。国や地方自治体は、中小企業のDX推進や生産性向上を支援するための様々な補助金制度を設けています。
例えば、「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」は、スマートロジスティクス関連システムの導入費用に充当できる場合があります。
リベロエンジニアでは、中小企業のスマートロジスティクス導入を支援するため、補助金申請のサポートも行っております。補助金の選定から申請手続きまで、お気軽にご相談ください。
物流DXに活用できる補助金の詳細は、以下の記事で解説しています。
③適切なパートナー企業を選定する
スマートロジスティクスの導入には、専門的な知識と経験が必要です。特に中小企業の場合はIT人材が社内にいないケースも多いため、適切なITベンダーをパートナーとして選定することが成功の鍵を握ります。
中小企業が物流DXを推進する場合、以下のような特徴を持つITベンダーがおすすめです。
- 少数精鋭のエンジニアでスピード感のある開発が可能
- 最初から仕上がっているパッケージ型システムではなく、オーダーメイド型で少しずつITシステムを完成させていく開発スタイル
- 現場の業務内容や従業員に合わせたシステムの開発が可能
- コンサル力があり、業務フロー改善のアドバイスも可能
リベロエンジニアでは、上記の開発スタイルを重視しつつ、中小企業の現場に寄り添ったシステム構築を進めています。業務をシステムに合わせるのではなく、現行フローの改善を図りながら、本当に必要なシステムの設計・構築と、継続的な運用サポートを提供しています。
まとめ|スマートロジスティクスでこれからの時代を戦える物流企業に!
物流業界は、人手不足やコスト増、そして多様化する消費者ニーズといった、大きな変革期を迎えています。スマートロジスティクスは、単なる業務効率化の手段ではなく、変化する外部環境に合わせて企業が生き残り、成長するための戦略的な投資です。
スマートロジスティクスの導入は、以下のような多岐にわたるメリットをもたらします。
- 物流コストの削減
- 人手不足の解消
- 顧客満足度の向上
- 新たなビジネスモデルの創出
スマートロジスティクスを導入すれば、競争力を強化し、厳しいビジネス環境を勝ち抜いていくための基盤を築けるでしょう。
リベロエンジニアは、中小企業の皆様がスマートロジスティクスを成功させ、持続的な成長を実現できるよう、最適なITソリューションを提供いたします。物流DXの推進に興味がある方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
\”現場に合わせた使いやすいDX化”をスモールスタートできる!/
【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。