倉庫DXとは?物流課題を解決する最新事例と導入ステップを解説
2025.06.30

慢性的な人手不足や従業員の高齢化といった課題に直面する物流業界では、業務の効率化と働き方改革の両立が求められており、倉庫内の作業や在庫管理をデジタル技術で最適化する「倉庫DX(デジタルトランスフォーメーション)」が注目を集めています。
本記事では物流業界が抱える構造的な課題とその背景を整理し、倉庫DXの事例や代表的なツールの種類、導入を検討する際に押さえておくべきポイントや注意点について詳しく解説します。
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倉庫DXとは?
倉庫DXとは倉庫内の業務や管理体制をデジタル技術によって効率化・自動化し、生産性の向上や人手不足の解消、作業品質の安定化を目指す取り組みです。
国土交通省が推進する「物流DX政策」の中で、倉庫DXは重要な柱の一つとして位置づけられており、物流業界全体のボトルネック解消に向けた鍵とされています。このため、政府は倉庫を含めたサプライチェーン全体の可視化と最適化を目指し、輸配送・在庫管理・需要予測などのデータ連携を積極的に促進しています。
倉庫DXの導入では、複数拠点や取引先企業との連携を視野に入れたデータ活用や情報の標準化といった広範な視点でのDX投資が重要です。
物流業界が抱える課題とその背景

ここでは、以下に示す物流業界が抱える課題とその背景について、以下の内容を詳しく解説していきましょう。
- 慢性的な人手不足と属人化がもたらす課題
- アナログ作業が阻む業務効率化と品質安定の壁
- 複数拠点での情報共有不足とリアルタイム管理の難しさ
慢性的な人手不足と属人化がもたらす課題
長年にわたる慢性的な人手不足や倉庫内の労働集約的な作業により、現場は新規人材の採用や定着が非常に難しい状況にあります。その結果、ベテラン作業員に依存する体制が常態化し、業務の属人化が進行しているのが現場です。
人手不足による属人化ではノウハウの継承が進まず、業務が個人の経験や勘に頼る“ブラックボックス化”が深刻となり、作業精度のばらつきやヒューマンエラーが発生しやすくなります。
アナログ作業が阻む業務効率化と品質安定の壁
多くの倉庫現場では、未だに紙ベースでの在庫管理や手作業による棚卸し、ロケーション管理がされており、業務全体の効率化が思うように進んでいません。
また、標準化された作業手順が整っていない現場も多く、作業スピードや品質にばらつきが生じやすい状況が続いています。
このようなアナログ作業の運用体制は新人教育や人材育成の妨げにもなっており、作業者ごとに成果や精度が異なることで現場全体の信頼性や安定性を損なう一因にもなっています。
複数拠点での情報共有不足とリアルタイム管理の難しさ
複数の倉庫や物流拠点を展開する企業においては、各拠点の在庫状況や出荷実績を正確に把握することが難しく、データが分断されたまま運用されているケースが少なくありません。
情報がリアルタイムで共有されない環境では過剰在庫や欠品、さらには納期の遅延といったトラブルが発生しやすくなります。
これはITシステムの導入そのものが遅れていることに加え、既存システム同士の連携が不十分であるという構造的な課題があります。
倉庫DXの導入事例5選
ここでは倉庫DXの導入について、以下の企業の事例を紹介しましょう。
- オルビス
- LIXIL
- リベロエンジニア
- イケア・ジャパン
- サントリー
オルビス:AMRで出荷効率・作業負荷を改善
画像引用:オルビス株式会社
オルビスは東日本流通センターにおいて、重量計を搭載した最新のAMR(自律走行型搬送ロボット)を導入しました。導入したAMRは倉庫内を自律的に走行しながら、複数商品のピッキングから発送ステーションへの搬送までを担っています。
また、搬送中に重量センサーによる検品も同時に行うことで、作業工程の大幅な効率化を実現しました。
この結果人員は約25%削減され、出荷業務にかかるコストも売上比で約10%削減される見込みです。また、作業者の長距離歩行が不要となったことで、業務負担の軽減や安全性の向上といった副次的な効果も得られました。
LIXIL:AIを活用した高精度需要予測でサプライチェーン全体を最適化

画像引用:株式会社LIXIL
LIXILは住宅建材の需要予測精度を向上させるため、AIを活用した需要予測ソリューション「MDF(Market Demand Forecast)」を導入しました。これは膨大な製品データを活用した高解像度かつ詳細な需要予測を実施し、製品単位での需要変動をより正確に把握してサプライチェーン全体の最適化をするものです。
自社のクラウド基盤と活用することで全社横断的なデータ連携と分析を支援し、工場や営業部門でのリアルタイムなデータ活用を実現しています。
この結果、需要予測の精度が大幅に改善され、欠品や過剰在庫といったリスクが削減されました。
リベロエンジニア:倉庫内作業効率化を念頭にスマートグラスを試験導入
画像引用:株式会社リベロエンジニア
大手住宅設備メーカーの倉庫において、リベロエンジニアが開発したスマートグラスアプリが試験導入されました。これは作業者の視野内にピッキングリストや検品項目などの情報をARで直接表示するもので、従来の紙やタブレット端末による確認作業を不要にし、視線移動や手の動作を最小限に抑えることを目的としています。
この結果、作業者は視線移動や紙・タブレット依存から解放され、「目視+紙チェックの脱却」「作業者の視線と両手をフリー化」による作業精度と効率向上の手応えを確認したとのことです。
イケア・ジャパン:自動ピッキング導入で関東物流の効率向上
画像引用:イケア・ジャパン株式会社
イケア・ジャパンは関東全域をひとつの市場と捉える「One Tokyo Market」戦略のもと、千葉県船橋市にあるIKEA Tokyo‑Bay倉庫を国内で初めて自動化しました。
これは関東圏4店舗に分散していた小物配送のピッキング業務をこの倉庫に集約し、自動ピッキングシステム「AutoStore」を導入するというものです。
この結果、人手作業と比べて約8倍の作業効率を実現するとともに、従来は作業員が1日あたり2万〜3万歩も歩いていたピッキング作業が大幅に削減され、スタッフの負担軽減も実現しました。
サントリー:車両位置の自動把握で物流の問い合わせ時間削減

画像引用:サントリーホールディングス株式会社
サントリーホールディングスは深刻化する物流業界の人手不足や配送量の増加といった課題に対応するため、物流管理システムの刷新を開始しました。
新システムでは物流企業が保有する車両の位置情報を「自動」かつ「リアルタイム」で把握できる機能が搭載されており、トラックの現在地確認に伴う問い合わせ対応の手間を大幅に削減しました。この結果、ドライバーや物流企業の負担軽減につながるだけでなく、年間約6万時間の業務効率化が見込まれています。
サントリーは今後も持続可能で働きやすい物流環境の実現に向け、デジタル技術の活用などの取り組みを推進していく方針です。
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代表的な倉庫DXツールの紹介

ここでは、代表的な倉庫DXツールについて紹介していきます。
- WMS(倉庫管理システム)
- IoT・センサー技術による作業の可視化とリアルタイム管理
- 自動搬送ロボット(AGV・AMR)や仕分けロボットの活用
- 複数拠点・サプライチェーン全体をつなぐ総合管理システム
- スマートグラスで”作業指示の見える化”と教育効率の向上
WMS(倉庫管理システム)
WMS(Warehouse Management System)は倉庫内の在庫管理をはじめ、入出庫作業やロケーション管理、作業指示などを一元的に管理するためのシステムです。倉庫業務の標準化や進捗を可視化できるため、業務効率の向上と属人化の解消に向けたツールとして多くの現場で導入が進んでいます。
WMSを導入する際には、自社の業種や規模に適しているかどうか、既存の期間システムや湯祖配送管理システムとの連携性を見極めることが重要です。
IoT・センサー技術による作業の可視化とリアルタイム管理
棚やラック、荷物、作業員などにセンサーを設置し、IoT(Internet of Things)技術を活用することで在庫や環境情報、作業者の動線などをリアルタイムで把握できるようになります。
これにより、従来は見えにくかった非効率やムダを数値化して具体的な改善策へとつなげることが可能となります。
IoTの活用は異常の早期発見や品質管理の強化にも役立つため、安定した倉庫運営の基盤構築に欠かせない要素です。
自動搬送ロボット(AGV・AMR)や仕分けロボットの活用
AGV(無人搬送車)やAMR(自律移動ロボット)、仕分けロボットなどの自動化機器は、人手不足が深刻な倉庫現場において生産性の向上や人件費の削減に貢献します。
近年ではセンサー技術やAIの進化により、従来よりも柔軟なルート選択が可能になったほか、複数の機器が混在する環境でも安定して稼働できるようになりました。
そのため、導入規模を徐々に拡大していくスモールスタートにも適した技術として注目されています。
複数拠点・サプライチェーン全体をつなぐ総合管理システム
WMSとTMS(輸配送管理システム)、ERP(基幹業務システム)を連携させることで、倉庫単体の効率化に留まらずサプライチェーン全体を俯瞰した最適化が可能になります。
複数拠点にまたがる在庫や出荷状況を一元的に管理できるようになれば、過剰在庫や無駄な発注を抑えて納期の遵守率向上や顧客満足度の改善にもつながるでしょう。
こうしたシステム連携によって、経営層がリアルタイムで経営指標を把握できるようになります。
スマートグラスで”作業指示の見える化”と教育効率の向上
スマートグラスは作業者が着用するウェアラブル端末で、視界に情報を重ねて表示するAR(拡張現実)技術を活用したデバイスです。
倉庫業務においてピッキングリストや作業指示、ロケーション情報をリアルタイムに表示し、ハンズフリーで作業できるのが大きな特徴です。
また、ベテラン作業者の目線映像を遠隔地からリアルタイムで共有すれば、新人教育やトラブル対応にも活用でき、標準作業の定着と教育コストの削減に直結するツールとして導入が進んでいます。
倉庫DX導入の具体的なステップと注意点

ここでは倉庫DX導入の具体的なステップと注意点について、以下に示す項目を詳しく解説しましょう。
- 現場と協力して課題を洗い出し
- 現場が混乱しないための運用設計と教育体制
- スモールスタートから全社展開までのロードマップ
現場と協力して課題を洗い出し
倉庫DXを成功させるには、現場で業務を担う作業者の理解と協力が欠かせません。現場で「DXは負担が増えるだけ」「新しいシステムが増えて混乱する」といったネガティブな意見が残ったままでは、倉庫DXを導入しても実際に活用されないまま終わってしまいます。
DX導入を成功させるためには事前に現場と協力して課題を洗い出し、「なぜDXが必要なのか」「導入後にどのように便利になるのか」を作業者自身が納得できるよう対話を重ねることが重要です。
現場が混乱しないための運用設計と教育体制
優れたシステムやツールを導入しても、実際の業務フローと噛み合っていなければ倉庫DXは定着しません。特に倉庫業務は作業が複雑で、繁忙期の対応や複数拠点との連携が必要なため、導入時に現場が混乱しないような設計が求められます。
まずは段階的にシステムを導入していくことが重要です。最初は現場リーダーに先行して新システムを習得してもらい、現場内で教え合える体制を整えることが現場への浸透を促す重要なポイントとなります。
スモールスタートから全社展開までのロードマップ
DX導入の失敗でよくあるのが、最初から大規模な改革を目指して現場が混乱したり費用や工数がかさみ途中で頓挫してしまうケースです。こうしたリスクを避けるためには、スモールスタートによるアプローチが必要です。
まずは単一の倉庫や入出庫・棚卸などの一部業務から始め、現場の反応や効果を確認します。スモールスタートした結果を基に改善を重ね、徐々に他の拠点や部門へ展開することで無理なく全体最適を目指せます。
まとめ
人手不足やアナログ作業によるミスといった倉庫現場の慢性的な課題に対し、業務フローに即した最適なソリューションを選んで現場に根付かせていく「現実的な改善」が求められており、倉庫DXが注目されています。
リベロエンジニアはスマートグラスを活用した検品ミス対策をはじめ、現場の声を反映した柔軟なDX支援を行うパートナー企業です。補助金活用によるコスト最適化の提案や、導入後の定着支援まで伴走する体制が整っており、多くの倉庫DX事例で成果を挙げています。
「倉庫DXに取り組みたいが、何から始めればいいか分からない」というような悩みをお持ちの方は、まずはリベロエンジニアにご相談ください。現場の課題に寄り添った実効性の高いご提案をいたします。
\”現場に合わせた使いやすいDX化”をスモールスタートできる!/
【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。