現場を変える遠隔支援とは?導入方法や業界別の事例などを紹介
2025.07.22
人手不足や安全確保、移動コストの削減など、多くの業界で現場業務の効率化と省力化が求められています。
現場業務をより安全かつ、効率的に進める手段として注目されているのが「遠隔支援」です。遠隔支援は、カメラや通信技術により離れた場所から現場を支援できるため、作業の質とスピードを高められます。
この記事では、遠隔支援のメリットや導入方法、業界別の活用事例などを紹介します。
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遠隔支援とは?

遠隔支援とは、インターネットや通信技術を活用して、物理的に離れた場所にいる専門家やサポーターが、現場の作業者を支援する仕組みのことです。
リアルタイムでの情報共有や指示が可能なため、現場の作業者は即座に適切なアドバイスが受けられ、問題解決を迅速に行えます。
例えば、建設現場ではスマートグラスを装着した作業者が本社の技術者と映像を共有しながら指示を受けることで、ミスのない施工を実現できます。
また、医療現場では若手の訪問医師がベテラン医師と連携しながら診療を進め、熟練者不足の対策としても活用されています。危険な環境や専門知識が必要な作業においても、大きな力を発揮させることが可能です。
遠隔支援は、下記のような業界で導入が進んでおり、業務の効率化や安全性の向上に寄与しています。今後も技術の進化とともに、より多くの業界で活用されるでしょう。
- 建設
- 製造
- 医療
- 運輸
遠隔支援で得られる5つのメリット

遠隔支援を活用すれば、現場の業務効率化や安全性向上などを実現できます。遠隔支援の具体的なメリットを把握し、導入するかを判断してみてください。
ここでは、遠隔支援を導入することで得られる5つの具体的なメリットについて詳しく解説します。
1.現場の作業効率が向上する
遠隔支援は、現場での作業効率を向上させる手段として効果的です。
従来は、現場に専門家が出向く必要があり、移動時間やコストがかかるだけでなく、迅速な対応が難しい場合がありました。
遠隔支援を導入すれば、現場に出向かずとも専門家がリアルタイムで現場の状況を把握でき、必要な指示を即座に出せるため、移動にかかるコスト削減や対応のスピードアップなどにつながります。
例えば、建設現場で問題に直面した際、遠隔地にいる技術者が映像を通じて状況を確認できれば、適切なアドバイスを受けられます。問題解決までの時間が短縮されるため、作業の中断を最小限に抑えられます。
遠隔支援は複数の現場を同時に管理する際にも有効です。専門家が一つの場所に留まる必要がなく、複数の現場に対して支援を行えるため、リソースの最適化を図ることが可能です。
2.二次被害のリスクを軽減できる
遠隔支援は、判断ミスや初動の遅れによって発生する二次被害のリスクを軽減できます。
特に、危険が伴う作業や緊急対応が求められる場面でも現場に専門家がいなくても、遠隔から適切な指示を受けられるため、迅速かつ安全な対応が可能です。
例えば、高所作業中に足場の一部に歪みを発見した作業員が、遠隔にいる安全管理者へスマートグラスを通じて映像を共有したとします。
安全管理者は映像から現場の状況を即座に把握し「全員を一度退避させてから補強作業を行う」と指示できるため、発生する可能性があった落下事故を防ぐことが可能です。
3.社内研修に応用できる
遠隔支援は、社内研修でも効果を発揮します。リモート環境での研修が増えている昨今、遠隔支援を活用すれば、より効果的な学びの場を提供できます。
例えば、熟練者しか立ち入れない高所の作業を映像で共有し、安全な場所から若手が学べる環境を整えることが可能です。映像の記録をマニュアルや教材として活用すれば、繰り返し学習できるため、理解の定着にも繋がるでしょう。
実践的かつ継続的な教育を実現できるため、技術継承や教育コスト削減にも効果を発揮します。
また、遠隔の技術者がリアルタイムで新人の作業状況を確認し、具体的な指導を行う仕組みも構築できます。実際の作業手順や注意点を視覚的に学べるため、知識だけでなくより実践的なスキルを身につけることが可能です。
4.記録や分析で活用できる
遠隔支援は、現場での作業を記録できるため、後から分析に活用できます。
データ分析を行えば業務の傾向やパターンを把握できるため、効率的な作業手順の確立やリソースの最適化に繋がります。結果、企業全体の生産性向上を図ることができ、競争力を高められるでしょう。
記録された映像を振り返れば、問題が発生した際の原因分析にも役立ちます。どのような要因が影響したのか明確にできるため、再発防止策を講じることが可能です。
また、リアルタイムでの映像や音声のやり取りに加えて、作業の様子を録画すれば、貴重なデータを社内に蓄積できます。このデータは、業務の改善やトレーニングに役立つため、新入社員や未経験者にとって、実際の作業を視覚的に学ぶ貴重な教材となるでしょう。
5.立ち会いや現場確認を効率化できる
遠隔支援は、立ち会いや現場確認を効率化する手段としても有効です。具体的には、監督者や技術者が現地に出向いて行っていた下記のような工程を、遠隔で映像を確認しながら実施することが可能です。
- 材料検査
- 工程確認
- 段階検査 など
例えば、複数の現場を担当する現場監督が、毎回移動して立ち会うのは非効率で、スケジュール調整や交通費も大きな負担です。
遠隔支援を活用すれば、作業員が現場の様子を配信でき、監督者は別拠点でその映像を見ながら確認や指示を出せます。現場へ出向かずに複数現場を同時に管理できるため、管理者の業務効率が向上し、スケジュールに余裕が生まれるでしょう。
また、機器メーカーでは設置者だけが現場に立ち会い、メーカーの技術者は遠隔で映像を見ながら新しい設備の導入や検収を行う際にも活用されています。
参考:Xacti LIVE「業務効率化を実現する遠隔支援の役割と導入事例紹介」
複数人での立ち会いが不要であり、専門人材の時間を有効に使えるため、意思決定のスピードの向上にも繋がります。
遠隔支援を導入する際に必要なもの

遠隔支援を導入する際に必要なものは、下記の3つです。
- 専用アプリ・コミュニケーションツール(システム)
- スマートフォン・タブレット
- ウェアラブル端末
遠隔支援はリアルタイムのやり取りが前提なため、下記を備えた機器も必要です。
- 安定したインターネット回線
- ノイズが少なく映像が鮮明なカメラやマイク
現場作業者側には、ハンズフリーで操作できる「スマートグラス(ウェアラブル端末)」を導入すれば、作業効率と安全性が大きく向上します。また、遠隔支援の精度に直結するため、専用アプリやコミュニケーションツールを導入する際は、適切に選定しなければなりません。
遠隔支援に特化した専用アプリは、画面上でのポインティング機能や現場映像に注釈を加えるAR機能などが搭載されているものがあります。操作性やセキュリティ面も含めて、自社の業務フローに合ったツールを選びましょう。
なお、リベロエンジニアでは現場の実情に即した専用アプリの開発が可能です。「◯◯の現場で、このような機能を搭載させたい」といったご要望にも対応できますので、お気軽にご相談ください。
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遠隔支援の5つの導入事例【業界別】

遠隔支援は、さまざまな業界で業務効率化や安全性向上に寄与しています。導入事例を参考に、自社に遠隔支援を取り入れるかどうか判断してみてください。
ここでは、特に注目すべき5つの導入事例を業界別に紹介します。
建設|トンネル工事での安全性の確保・業務効率化
ある大手建設会社では、トンネル工事の施工管理や安全パトロールに遠隔支援を導入しています。従来は担当者が手持ちカメラで撮影した映像をもとに確認しており、下記のような課題がありました。
- 手ブレによる映像酔い
- 暗い所での画質低下
- 両手が塞がるため作業効率が落ちる
- トンネル内は危険なためハンズフリーでの映像共有が必須
こうした課題を解消するため、同社は高性能かつハンズフリーが可能なウェアラブル端末を活用しました。
本社から現場の状況を正確に確認できるようになったため、リアルタイムでの指導・チェックが可能になりました。複数名による遠隔確認も行えるようになり、安全性と業務効率の両立を実現しています。
運輸|災害発生時の早期状況把握
2022年3月の福島県沖地震で、東北新幹線の設備が約1,000箇所被災し、東日本旅客鉄道では早急な対応が求められました。災害発生時に現場状況を迅速かつ正確に把握し、安全に復旧作業を進める必要に迫られました。
従来は作業員がタブレットを手に現場映像を共有していたものの、仮設足場や高所での操作には危険が伴っています。そこで、同社はウェアラブルカメラによる遠隔支援を導入しました。
ハンズフリーで映像を本部にリアルタイム共有する体制を構築したため、安全かつ効率的に復旧作業を進めることが可能に。特に、電化柱の梁接合部のような、高所の施工確認において、安全性と作業効率の両立が実現しています。
製造|エビデンスとして保管・活用
大手自動車メーカーでは、車体製造における塗装色の検査・判定業務に遠隔支援を導入し、業務効率と品質管理の向上を実現しています。
従来は、色味の正確な確認が難しく、複数の検査判定者が現地工場へ出張しなければなりませんでした。
しかし、ズームや明るさを調整できる精度の高いカメラと映像共有システムを導入したことで、現地へ行くことなく本社から対応できるように。工程作業者1人で検査できるようになったため、出張旅費や移動時間の削減に繋がりました。
本社の品質管理や設計開発部門の担当者も、他業務に集中できるようになり、業績向上にも貢献しています。
また、ウェアラブルカメラによりハンズフリーでの撮影が可能になり、安全かつ正確な色味のエビデンスを記録・保管する体制も整いました。
エビデンスの記録・保管により、品質トラブルが発生しても迅速な原因究明が可能です。第三者に説明が必要になった際も、客観的な裏付け資料として信頼性の高い報告ができます。
医療|ベテラン医師が映像を通じて治療をサポート
歯科医院の訪問診療では、若手医師のみでの対応が多く、治療の質に不安が残るケースが課題でした。そこで若手医師が小型カメラを装着し、本院のベテラン医師がリアルタイム映像を通じて遠隔支援する仕組みを導入しました。
診療中の判断をサポートすることで治療レベルが向上したうえに、撮影した映像は教育用としても活用され、若手育成にも役立っています。
また、2024年6月の診療報酬改定により情報通信機器を用いた初診・再診が明確に評価され、遠隔診療が報酬として算定可能になりました。適切な報酬を受け取れるようになったため、遠隔支援を導入しやすくなりました。
インフラ|移動時間と出張費を削減
電力業界では、変電施設の工事管理や保全業務に遠隔支援を導入し、移動時間と出張費の削減を実現しています。従来、工事管理者や保全担当者は現場に必ず出向く必要があり、人手不足や負担増が課題でした。
作業者がカメラを装着し、遠隔地の管理者と映像を通じて連携することで、現地の作業は1人でも対応可能となりました。二重チェックも遠隔で実施でき、現場グループは1名減となり、出張コストは半減しています。
また、作業映像はハンズフリーで記録でき、エビデンスとしての活用や、教育用動画としても機能しています。
遠隔支援を導入する際の5つのステップ

遠隔支援を効果的に導入するためには、計画的なアプローチが必要です。適切なステップを踏んで、スムーズに遠隔支援を導入しましょう。
続いて、遠隔支援を導入する際の5つのステップを紹介します。
1.導入の目的と解決したい課題を明確にする
まずは、導入の目的と解決したい課題を明確にします。目的・課題を明確にしないまま導入を進めると、本来解決すべき問題に効果的な端末を導入できないリスクがあります。
例えば、現場の安全性を確保したい場合は、スマートフォンやタブレットよりも、両手が空く「スマートグラス」の導入が効果的です。このように目的・課題が決まっていることで、解決したい事柄に最適なツールを選定しやすくなります。
また、必要なシステムの選定もスムーズになります。どのような機能が必要なのか、どの業務プロセスに適用するのかを具体的に考えることで、導入後の効果を最大限に引き出せるでしょう。
2.端末やシステムを比較・検討する
続いて、導入する端末やシステムの比較・検討をします。市場にはさまざまな端末やシステムが存在しており、機能や特徴が異なるため、自社に最も適切なものを選ぶ必要があります。
例えば、細かな作業が発生する業務では、高画質な端末がおすすめです。画面を大人数に共有したい場合は、安定して接続できるシステムを導入しなければなりません。
必要な機能をリストアップし、その中でも自社に適切な端末やシステムを導入しましょう。
また、可能であれば導入を検討している端末やシステムのデモを受けると良いでしょう。実際の操作感や使い勝手を確認できるため、自社の業務フローにどれだけフィットするかを判断する材料になります。
なお、リベロエンジニアでは現場の実情に即した専用アプリやシステムの開発が可能です。Vuzix社の「M400 スマートグラス」の販売代理店ライセンスも取得しているため、開発から端末の導入までを一気通貫で発注できます。
3.セキュリティや運用に関するルールを整備する
遠隔支援は、リアルタイムでの映像や音声のやり取りが行われるため、情報漏洩や不正アクセスのリスクが伴います。そのため、導入前にセキュリティ対策を講じなければなりません。
具体的には、アクセス権限の管理を厳格に行い、必要な人だけがアクセスできるようにする必要があります。外部からの攻撃や内部の不正行為から情報を守るためにも、通信の暗号化やデータ保存時のセキュリティ対策も欠かせません。
セキュリティ対策を自社だけで行えない場合は、システム開発会社に相談することをおすすめします。なお、リベロエンジニアではセキュリティ対策をしたうえで、遠隔支援で活用できるアプリの開発も可能です。
また、運用に関するルールも必要です。遠隔支援を行う際の手順や責任者を明確にし、トラブルが発生した場合の対応策を事前に決めて、安全に運用しましょう。
4.実際に試してみる
遠隔支援を本格導入する前に、実際の現場で試用することが重要です。なぜなら、遠隔支援は通信状況や作業環境、使用機材の影響を大きく受けるためです。
実際の現場で試用しないと、導入してから「電波が不安定で映像が途切れる」「作業中に機器が邪魔になる」などの問題に気づくかもしれません。こうしたトラブルが続くと、遠隔支援は現場に定着せず、結局従来のやり方に戻るでしょう。
また、本格導入前の試用は導入後に起こりうる業務フローの混乱や、サポート体制の不備などの潜在的な課題を早期に洗い出せます。早期に課題を洗い出せれば、導入時の失敗リスクを抑え、スムーズな本格運用を実現できます。
まずは少人数で試験運用を行い、作業フローへの適合性や操作性を確認してみてください。
5.フィードバックを活かしながら改善を重ねる
遠隔支援は導入して終わりではなく、実際の運用で得たフィードバックをもとに改善を重ねる必要があります。これは、導入効果が一時的なものにならないよう、成果が出続ける仕組みを作る必要があるためです。
例えば、現場作業員から「操作が複雑」「装着感が気になる」といった意見を収集し、必要に応じて機能の調整やマニュアルの見直しを行います。
定期的なレビューやデータ分析を通じて課題を洗い出し、使いやすさと効果を継続的に高めて、遠隔支援の導入を成功させましょう。
まとめ
遠隔支援は、現場の効率化と安全性向上を実現する有効な手段です。作業効率の改善やリスク低減、研修への活用など多くのメリットがあり、幅広い分野で活用が進んでいます。
ただし、遠隔支援を導入するには、自社の目的や課題に合った各種端末や専用アプリ・システムなどを準備する必要があります。適切なステップを踏み、スムーズに遠隔支援を導入しましょう。
リベロエンジニアでは、遠隔支援で活用できる専用アプリやシステムの開発が可能です。スマートグラスの納品も可能なため、遠隔支援の導入を検討している場合は、お気軽にご相談ください。
\”現場に合わせた使いやすいDX化”をスモールスタートできる!/
【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。