スマートグラスで生産性アップ!導入するメリットや成功事例を紹介
2025.10.24
「現場のデジタル化」が叫ばれる今、生産現場や物流倉庫の効率化に役立つと注目されているのが「スマートグラス」です。
スマートグラスは、ハンズフリーでの作業指示確認や、リアルタイムの情報共有を可能にするため、両手を自由にさせたい工場・倉庫での業務にぴったりなデバイスです。
とはいえ、まだまだ馴染みのない機械のため、本当に現場で役立つのか疑問に思われる方も多いでしょう。
そこで本記事では、スマートグラスを導入する具体的なメリットから、実際に成果を出している企業の成功事例まで解説。最新技術で現場の課題を解決し、生産性向上・業務効率アップを実現させましょう。
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ビジネスで活用されるスマートグラスとは?

スマートグラスとは、その名の通りメガネ型のデバイスで、レンズに映像を映したりスピーカー・マイクを通じて音声でやり取りができたりします。遠隔支援やWeb会議、動画での作業記録などに活用されています。
従来のスマホやハンディターミナルなどのデバイスと異なり、両手を自由にできるのがポイント。例えば、高所作業や倉庫内ピッキングのような、手が塞がると作業できない場面で活躍します。
スマートグラスが、ビジネスのどのような場面で役立つのか紹介します。
AR機能で遠隔支援する
AR機能を備えたスマートグラスは、肉眼で見える現場の状況に重ねるように、デジタル情報を表示できるため、情報支援が容易になります。
例えば、レンズに作業指示や資料、手順・注意点などを投影して共有すれば、現場では手を止めずに必要な情報を確認でき、作業の効率化や安全性の向上につながります。
音声制御に対応した製品なら、「マニュアルを開いて」のように音声コマンドでの操作もでき、作業を行いながらでも情報を確認できるのも便利です。
また、機械に貼り付けられたQRコードをARグラスで見ることで、関連するマニュアル動画を自動再生させることも可能。いつでも操作手順を確認できるため、経験の浅い新人でも、先輩の手を借りることなく作業できます。
さらに、レンズに翻訳字幕を表示できる機能を備えたモデルもあり、多国籍チームでの現場支援にも対応できます。
こうしたAR遠隔支援型スマートグラスの導入によって、業務の停滞を防いだり、現場と遠隔拠点のリアルタイム連携を実現できたりと、業務の効率化が実現します。
ユーザー目線で情報を記録できる
スマートグラスにはカメラが搭載されているものもあり、使用者の目線そのままの映像を共有・記録できるため、現場のリアルな状況把握や情報共有に使えます。
例えば、トラブル発生時に視界を映像共有しながら通話できるので、離れた場所にいる上長や担当者がすぐに確認可能です。従来のように、遠隔地から担当者が確認にくるのを待つ必要がないので、作業スピードの改善や移動による時間的・金銭的コストの削減につながります。
視点の共有機能によって、業務の可視化と教育効率化を同時に実現できます。
外部ディスプレイとして活用する
スマートグラスは、モニターの代わりとして外部ディスプレイとして活用することもできます。
パソコンやスマホと有線・ワイヤレスで接続すると、視界の先に、仮想ディスプレイが浮かび上がるように映し出されます。視界の数メートル先にディスプレイがあるように見えるので、モニターを設置しなくても、大画面・複数画面での作業が可能です。
例えば移動中の新幹線や出張先のホテルでも、ARによって仮想的に広い作業スペースを確保できるため、資料作成やデータ分析を効率的に進められます。
スマホ画面より大きな画面で表示できるので、プレゼン資料や動画を確認しやすいのも利点です。
また、ARグラスによる仮想ディスプレイは、自分にしか見えないため、外部から画面を見られる心配がなくセキュリティ面にも優れています。
カフェやロビーなど人の出入りが多い場所でも、個人情報や社外秘資料を安全に扱えます。
スマートグラスを外部ディスプレイとして利用することで、作業環境の自由度が高まり、安全性と生産性の両立が実現可能です。
企業がスマートグラスを導入する5つのメリット

企業がスマートグラスを導入するメリットとして、大きく5つが挙げられます。導入メリットを把握しておくことで、導入後のミスマッチがなくなるのはもちろん、社内への説得材料にもなるでしょう。
下記5つについて、詳しく解説します。
- 1.業務の効率化・生産性のアップにつながる
- 2.移動・時間コストを削減できる
- 3.人材育成の効率がアップする
- 4.顔認証によりセキュリティを強化できる
- 5.トラブル対応が迅速になる
1.業務の効率化・生産性のアップにつながる
スマートグラスを導入すると、現場の作業効率と生産性を飛躍的に高められます。
レンズに資料やマニュアルを直接表示できるため、紙の資料やタブレットを確認する手間がなく、視線移動を最小限に抑えて作業を継続できます。
両手が自由な状態で操作できるうえ、音声認識やジェスチャー操作に対応しているため、工場や倉庫など、片手が塞がりやすい環境でも安全かつスムーズに業務を進めることが可能です。
また、遠隔地にいる指導者や管理者と視界をリアルタイムで共有できるため、即座に助言や修正指示を受け取れます。映像を介したコミュニケーションにより、言葉だけでは伝わりにくい状況も正確に把握でき、判断のスピードと精度が向上。作業ミスの減少と、対応時間の短縮を同時に実現できます。
作業中の映像・音声・写真をクラウドに保存し、報告書の下地として利用できるのも大きな利点です。点検や保守業務において、カメラで状況を記録しながら音声でコメントを入力すれば、そのまま報告資料を生成できます。
情報取得・共有・記録の一連の流れをリアルタイムで完結できることで、従来の手作業中心の業務プロセスを大幅に簡略化します。結果として、作業時間の短縮や人為的ミスの削減、教育コストの抑制につながり、組織全体の生産性を向上させられるでしょう。
2.移動・時間コストを削減できる
スマートグラスの導入により、移動や時間にかかるコストを大幅に削減できるのもメリットです。
製造業や建設業では、各現場に監督者や技術者が出向き、工程確認や指示を行うのが一般的です。しかし、複数の現場を巡回して対応するには、移動時間や交通費、人件費が積み重なります。
悪天候や交通機関の遅延・停止、担当者のスケジュール不一致などで、スムーズに実施できないことも発生しがちで、業務全体の非効率化を招いていました。
スマートグラスを活用すれば、この構造を根本的に変えられます。
現場の作業員がスマートグラスで撮影した映像をリアルタイムで担当者に共有すれば、遠隔からでも正確な確認と指示が可能です。責任者が現地へ出向く必要がなくなるため、これまで頻発していた出張や現場臨場の必要性が大幅に減ります。
結果として、移動に伴う燃料費や宿泊費だけでなく、移動そのものに費やしていた時間も削減できます。
また、同時に複数の現場映像を確認できるため、限られた人員で広範囲を効率的に管理できるでしょう。例えば、建設会社では監督官が遠隔地から進捗を確認できる仕組みを整備すれば、現場臨場の回数を従来よりも大幅に削減可能です。
3.人材育成の効率がアップする
スマートグラスは、人材育成の効率化にも貢献します。
ARを利用して作業ガイドを視界に重ねて表示できるため、作業箇所や手順を直感的に理解できます。グラス内に具体的な指示が示されるので、経験の浅い社員でも迷わず作業を進められ、教育担当者が常に隣で指導する必要がありません。
また、熟練者が遠隔地にいながら複数名へ同時に指示を送ることも可能で、教育のスピードと範囲が拡張されます。
装着者の視点で撮影した映像を活用して、具体的でわかりやすい教材を作成できるのも利点です。作業中の手元や判断の流れをそのまま記録できるので、複雑な手順や判断基準も「見て学ぶ」ことができます。
従来のテキストマニュアルでは伝えにくかったノウハウを映像で再現できるため、現場教育の質が向上します。映像データをナレッジとして蓄積することで、特定個人の技術に依存せず、組織全体で技能を標準化できるでしょう。
映像に音声コメントを追加できる製品では、記録時の意図や注意点をその場で残せるため、後の振り返りにも最適です。
4.顔認証によりセキュリティを強化できる
スマートグラスは、内蔵カメラと顔認識AIを組み合わせることで、高度なセキュリティ管理を実現します。
施設の入退室時に装着者が人物を視認すると、AIが顔データを解析し、登録情報と照合して本人確認を行います。認証結果はリアルタイムで表示されるため、警備員は瞬時に対応可能です。
すでにVIPや要注意人物を識別する仕組みが実装されており、セキュリティ業務の効率化に直結しています。
従来一般的だったICカードやパスワードによる認証方式では、紛失・盗難・貸し借りといったリスクが避けられませんでした。顔認証を組み合わせたスマートグラスでは、他人によるなりすましを防ぎ、より確実な本人認証を可能にします。
また、識別情報は非接触で取得されるため、感染防止や衛生面にも優れます。複数の警備員がデータを共有できるため、広範囲の監視体制を少人数で実現できるのもポイントです。
5.トラブル対応が迅速になる
スマートグラスを導入すると、現場でのトラブル発生から解決までの時間を大幅に短縮できます。
従来は、作業員がメールや電話で異常を報告し、いったん事務所に戻って上司に指示を仰ぎ、最終的に責任者が現場へ向かうという流れが一般的でした。
このプロセスでは、移動や報告のタイムラグが発生するため、どうしても対応が遅れてライン停止や納期遅延などを招く可能性があります。
しかしスマートグラスを活用すれば、責任者は遠隔からでも、作業員が装着するカメラの映像をリアルタイムに確認できるため、現場を離れることなく即時対応が可能です。
映像や音声を通じて状況を同時に共有できるため、トラブルの原因を正確に把握したうえで、具体的な指示を出せます。
従来の「移動して確認する」対応から「その場で判断する」スタイルへと変わり、対応の速さと精度が向上します。データ共有によって過去の対応履歴を参照できる点も有効で、再発防止や分析にも役立ちます。
結果として、復旧作業のダウンタイムを最小限に抑え、生産ラインの停止などによる損失を最小限に抑えられるでしょう。
産業用スマートグラスの導入による5つの成功事例

産業用スマートグラスは未来の技術ではなく、すでに複数の業界・分野で導入が進められています。今回はその中でも、業界別に5つの成功事例を紹介します。
自社でも応用できる事例がないか、チェックしてみてください。
保全・点検|中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋
NEXCO中日本グループの中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋は、スマートグラスの導入により、現場の映像をそのまま遠隔地と共有できるようになりました。管理者や技術者が、リアルタイムに状況を把握できる体制が確立しています。
同社は、高速道路の保全・点検を担う中で、現場と本部間の情報伝達に課題を抱えていました。
従来は作業員が無線や電話でオフィスに報告していましたが、手を止めて通話する必要があることに加え、口頭での状況説明でわかりにくく非効率です。内容の誤認や伝達の遅れが発生し、点検の効率と安全性の両立が難しい状況にありました。
スマートグラスを導入したところ、作業員は視界を遮られることなく、両手を使った安全な作業が可能に。遠隔支援によって指示の正確性が向上し、トラブル発生時の判断・対応が迅速化しました。
現場同士の映像共有が可能になったことで、隣接エリアの進捗確認や情報交換がスムーズになったのもメリットです。チーム間の連携が向上し、作業全体の効率化にも大きく寄与しています。
製造|トヨタ自動車
トヨタ自動車では、新人整備士の教育効率を高めるためにスマートグラスを導入しています。
従来は、マニュアルを参照しながら手順を覚える必要がありました。スマートグラスを導入後は、自動車のパーツの取り付け手順や作業ガイドが、視界に表示されるようになります。
実物の自動車を見ながら手順や取り付け位置が把握できるため、作業の手を止めずに情報を確認できるようになり、効率的に技術を習得できるようになりました。
また、指導者が現場に常駐しなくても、遠隔から教育支援が可能になったことで、複数の新人を同時に育成できる環境が実現。教育効率のアップに加え、教育担当者の負荷軽減にもつながっています。
結果的に、顧客への修理車両の引き渡しまでの時間短縮も実現し、全体の業務効率が大幅に向上しています。
介護|善光会
福祉法人の善光会は、介護現場で深刻化する人材不足と業務効率の低下を改善するため、KDDIと連携して「ハンズフリー介護作業支援システム」を共同開発しました。
介護施設では、多数の入居者の健康状態・ケア内容を常に把握する必要があるにもかかわらず、入浴や排泄介助など両手を使う作業を伴うため、スマホやタブレットの操作が現場に馴染みにくいのが課題でした。
そこでスマートグラスを導入したところ、入居者の顔を見るだけで、システムが自動で顔を認識。体温・血圧などのヘルスケアデータや食事・排泄の状況など、介護に必要な情報をレンズに投影したり、音声で読み上げたりしてくれます。
職員の手が塞がれないことで、作業を止めることなく、介護対象者の情報を把握できます。
また、従来のタブレットでは手が塞がってしまい、安全性・利便性の両面に不足がありました。スマートグラスなら、入居者がつまずいた際など、急な対応が求められるケースでもすぐに対応できるのもメリットです。
即座に情報共有できるシステムの導入により、属人的になりやすい介護業務の効率化・均一化の実現に向けて開発が進められています。
観光|KDDI
KDDIは、観光分野で活用できる「auビジュアルガイド」を展開しています。
スマートグラスを活用することで、従来のオーディオガイドを進化させた映像解説システムです。利用者がスマートグラスを装着することで、視界にAR映像を重ね合わせながら観光案内を受けられます。
多言語の字幕や音声案内、手話への対応も可能で、誰もが鑑賞できるユニバーサルな観光体験を実現しています。
例えば、兵庫県の全但バスとの取り組みでは、バスガイドが遠隔地から観光案内を行い、城崎温泉や周辺スポットの動画解説を提供。乗客はスマートグラス越しに景勝地を見ながら、リアルタイムでガイドとやり取りできます。
また、実際の風景にARコンテンツを重ね合わせる演出も可能です。これにより観光ガイド以外にも、美術館や展覧会のガイド、ショールームの案内など幅広く活用できます。
実際、2022年に行われたバンクシー展では、スマートグラスをかけると、北海道テレビのアナウンサーがARとして登場し、解説を聞きながら一緒に会場を巡るような体験が提供されました。
こうしたサービスにより、臨場感と多言語対応を両立した新しい観光DXが生まれています。
建設|西松建設
西松建設株式会社では、産業用スマートグラスを安全パトロールの支援ツールとして導入したことで、安定的に計画的なパトロールの実行が可能になりました。
従来は、社員が遠方の建設現場を巡回する際には移動時間と交通費の負担が大きく、天候や交通機関の影響によりスケジュールの変更・中止が頻発していました。他の業務との兼ね合いもあり、スケジュール調整が難しく、計画通りに実施できないケースも多くあります。
そこで、遠隔で現場確認を行えるスマートグラスを活用することで、実地と変わらないパトロールを効率的に行える仕組みに転換しました。
現場の作業員がスマートグラスで撮影した映像をパトロール員がリアルタイムで共有することで、遠隔地にいながら指示・助言を即時に伝達できます。骨伝導イヤホンと併用することで、作業音の大きな現場でもクリアな通話を実現しています。
また、現地作業員と会話しながら確認できるため、実践的な指導が可能になったこともメリットです。パトロール員が注視するポイントやリスク判断の視点を、映像を通して共有できるため、現場経験の少ない社員に対する育成効果が高まりました。
移動の制約から解放されたことで、労務負担や移動コストを削減し、柔軟な安全管理体制を実現しています。
スマートグラスの導入はプロに任せるのがおすすめ
産業用スマートグラスを導入することで、生産効率・作業効率の向上やコストの削減、セキュリティアップなど、さまざまなメリットがあります。特に製造業や物流業などと相性がよく、各種業界での導入が広まりつつあります。
とはいえ業務に、ARガイドや遠隔支援機能を組み込むには、環境要件や通信インフラの整備などが必要で、専門的な知識・ノウハウが欠かせません。導入後の教育設計や、技術サポートも必要です。
リベロエンジニアでは、ITベンダーとして数多くのシステム開発を手がけてきた実績から、産業用スマートグラス向けのアプリ開発や導入を支援しています。最近では、LIXILの工場・倉庫の業務を効率化するスマートグラスシステムの開発を担当し、「探す・手入力・手作業」といったムダな時間をなくして、現場の生産性を向上させることに成功しました。
ご質問やご相談だけでも喜んで承りますので、お気軽にご相談ください。
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【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。