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人手不足を救う農業DX「スマートグラス」。熟練の知恵を資産に変え、未経験者も働ける持続可能な現場へ

2026.03.03

カテゴリー:スマートグラスとは

日本の農業を支えてきた熟練農家の「匠の技」。その素晴らしい知見を次世代へいかに繋いでいくか。その解決策として今、農業のIT化・DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しています。

本記事では、スマート農業という大きな流れの中で、特に「現場の判断」を支えるツールとして注目されるスマートグラスの役割について、実例を交えながらそのリアルな現在地を解説します。

2026年、農業の「知恵」をデジタルで守る時代へ

日本の農業従事者の平均年齢は、2025年末の時点で69歳を超えました。これは、長年の経験に裏打ちされた「知恵の宝庫」が現場にある一方で、その貴重な技術を次世代へ引き継ぐための猶予が限られているという現実も示しています。

これまでの農業は、個人の「勘」や「経験」が大きな役割を果たしてきました。その尊い知見を、ただ失ってしまうのではなく、デジタルという形にして誰もが活用できるようにする。農業DXの本質は、決して単なる作業の効率化だけではありません。先人が築き上げた「知恵」を大切に保存し、新しく農業を志す人々が安心して挑戦できる環境を整える、未来への投資であると、私たちは考えます。

参考資料:https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r6/pdf/1-2-03.pdf

効率化の先にあるもの。現場での「確かな判断」を支える技術

農業のIT化を振り返れば、これまで段階的に進んできました。

・第1フェーズ:環境の見える化(ハウスの温度・湿度をセンサーで監視)

・第2フェーズ:作業の自動化(ドローンや自動走行トラクターの導入)

これらにより、現場での肉体的な負担は大幅に軽減されました。しかし、最後まで残ったのが「この枝は切るべきか?」「この作物は収穫すべきか?」という、現場、つまり人による瞬時の判断です。

こればかりはスマホの画面越しでは伝わりきらず、結局はベテランが現場に足を運ぶ必要があります。この「物理的な距離」と「判断の属人化」という最後の壁を突破するために登場したのが、スマートグラスです。

スマートグラスが解決する「農業の7つの課題」

農業の現場には、体力的な負担から技術的な不安まで、多くの課題が存在します。スマートグラスはそれらをどう解決するのか。具体的な7つの機能から紐解きます。

人手不足を解消する「AR(拡張現実)」

農林水産省の予測では、今後20年で農業に従事する方は現在の4分の1、約30万人にまで減少するとされています。この深刻な人手不足を補うのがAR(拡張現実)機能です。

例えば、広い畑での「畝(うね)立て」作業。従来は2人がかりで紐を張り、足跡を辿りながら真っ直ぐな線を作っていましたが、スマートグラスを装着すれば、現実の地面の上に「仮想の平行線」を映し出すことができます。これにより、1人でも迷いなく、正確かつスピーディーに作業を進めることが可能になり、限られた人数での農場経営を力強くバックアップします。

技術伝承をスムーズにする「AI活用」

「間引き」や「収穫」の最適なタイミング。これまでは「熟練の勘」とされ、言葉で伝えるのが難しかったこれらの判断を、AIがサポートします。

例えばブドウ栽培の「摘粒(てきりゅう)」作業。一房ごとの粒数を調整するこの繊細な工程も、スマートグラス越しに房を見るだけで、AIが瞬時に粒数をカウント。適切な数をディスプレイに表示します。熟練者がいなくても「匠の基準」をその場で確認できるため、経験の浅い若手でも自信を持ってハサミを動かすことができます。

離れていても心強い「遠隔支援機能」

後継者育成において、スマートグラスは「距離」の壁を取り払います。 装着者が見ている映像をリアルタイムで転送できるため、熟練者は自宅や事務所にいながら、現場の若手に具体的な指示や助言を送ることが可能です。

たとえ体力が落ちて畑に出向くのが難しくなったベテランの方でも、その卓越した知見を活かし、複数の現場を同時に見守る「最高のアドバイザー」として活躍し続けることが可能になります。

作業をスマートにする「自動測定機能」

毎日の生育管理に欠かせない「計測」の手間を大幅に削減します。 農作物のサイズを測る際、指で範囲を示すだけで瞬時に計測が完了します。記録データはクラウドに自動保存されるため、分析も容易になります。

また、畑の面積や形状を把握してトラクターの最適な運行ルートをスマートグラスの視界に表示。無駄な移動を減らすことは、作業時間の短縮だけでなく、燃料費の削減という経営面での大きなメリットにも繋がります。

命を守る「健康管理機能」

真夏の屋外作業において、熱中症は命に関わる重大なリスクになります。ウェアラブルデバイスであるスマートグラスは、作業者の心拍数などのバイタルデータをモニタリングすることが可能です。

身体に過度な負担がかかる前に、デバイスが適切な休憩を促す。特にベテランや高齢の作業者の方々にとって、この機能は大切な命を守り、長く健康に農業を続けていくための「お守り」のような存在になります。

新規参入を後押しする「ハンズフリー・マニュアル」

農業への新しい挑戦を阻む要因の一つが、手順の複雑さです。スマートグラスなら、作業を一切止めずに、目の前のレンズで画像や動画のマニュアルを確認できます。「次はどの枝を切るか」といった手順を1ステップずつ視覚的に提示してくれるため、初心者が感じる技術習得の心理的ハードルを大幅に下げ、新規就農の促進に貢献します。

多様な担い手を支える「同時通訳機能」

日本の農業を支える大切なパートナーである外国人実習生とのコミュニケーションも、スマートグラスが円滑にします。 相手の話した言葉を瞬時に翻訳し、視界の先にあるディスプレイに表示されます。

たとえば、「業界特有の専門用語」まで正しく翻訳できるようになれば、言語の壁を超えて、確かな技術と想いを共有することも可能になるでしょう。

【活用事例1】おけさ柿:遠隔指導が育む、若手の自信と安心感

新潟県を代表する特産品「おけさ柿」の産地で行われた遠隔剪定支援。この取り組みは単なる「時間短縮」を超えたフェーズに突入しています。

実証実験では、熟練者が遠隔地からスマートグラス越しの映像を見て指示を送ることで、剪定作業時間を14%削減することに成功しました。しかし、実際に現場から聞こえてきたのは、数字以上の価値でした。

「間違えて切って、木をダメにしたらどうしよう」という若手の不安に対し、スマートグラス越しにベテランがリアルタイムで背中を押してくれる。この「すぐそばに誰かがいてくれる」という信頼関係の構築こそが、産地を次世代へ繋ぐ大きな力となっています。

参照:https://www.maff.go.jp/hokuriku/seisan/smart/attach/pdf/forum2022-2.pdf

【活用事例2】シャインマスカット:AIによる「判断の補助」と技術継承

山梨県のシャインマスカット栽培では、AIが熟練農家の卓越した「目利き」をサポートしています。

最も難易度が高いとされる「摘粒(てきりゅう)」作業。どの粒を抜き、どの房を遺すか。その判断を、スマートグラスのカメラと連携したAIが補助します。山梨大学などが開発するAI技術も進化しており、熟練者が培った「良い房の定義」をデジタルで補う仕組みが整いつつあります。

ベテラン農家の素晴らしい感性をデジタルが補佐し、ミスを防ぐ。この役割分担により、産地全体の品質を守りながら、新しい担い手を優しく導く体制が整えられています。

参照:https://www.naro.go.jp/smart-nogyo/r2/files/r2_5g_C02.pdf

【活用事例3】NTT東日本:ローカル5Gによる「未経験者参入」の一般化

ローカル5Gを活用したトマト栽培の事例は、「農業に挑戦したい」という人々の夢を後押ししています。

5Gによる低遅延・高精細な映像伝送により、遠隔地の営農指導員が、まるで現場にいるかのようにきめ細かくサポートします。葉の裏の小さな兆候まで見逃さずアドバイスを受けられるため、農業未経験の人々でも、プロの技術に裏打ちされた美味しいトマトを育て上げることができます。

スマートグラスは、農業という世界の扉を、より多くの人へ向けて優しく開く鍵となっています。

参照:https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/pdf/20221220_01_01.pdf

産業用スマートグラスおすすめメーカー4選

ここでは、スマートグラスの主要機種を詳しく紹介していきます。現場の環境や用途に合わせて最適な一台を選ぶ参考にしてください。

RealWear|RealWear Navigator 520

RealWearより引用

現場作業員の働き方を変えることを目的に設計された、圧倒的なタフネスを誇る単眼スマートグラスです。 防水・防塵はIP66、耐衝撃性はMIL-STD-810H準拠。粉塵が舞う場所や水しぶきのかかる過酷な農地でも安心して使用できます。

100dBクラスの騒音下でも正確に動く音声操作機能が強みで、手が泥で汚れている時でも、声だけでマニュアルの呼び出しや遠隔相談が可能です。追加モジュールのサーマルカメラを使えば、設備の異常発熱の検知などにも応用できます。

Vuzix|Vuzix M400

Vuzixより引用

人間工学に基づいた使いやすいデザインと、高い汎用性が特徴のAndroid搭載スマートグラスです。 Android 11を搭載しているため、既存のAndroidアプリを活用しやすく、自社独自のカスタム開発も容易です。

タッチパネル、物理ボタン、音声と複数の操作方法を選べるため、手袋をしている時でも直感的に扱えます。軽量かつ眼鏡やヘルメットの上から装着可能で、外部バッテリーの選択肢も豊富なため、長時間の農作業でも負担が少ないのが魅力です。

Microsoft|HoloLens 2

Microsoftより引用

現実世界にデジタル情報を重ねる「複合現実(MR)」の最高峰デバイスです。 シースルーの両眼ディスプレイを採用し、目の前の空間に3Dホログラムを固定表示できます。ハンドトラッキング機能により、空中に浮いたメニューを指で操作したり、設計データを実寸大で確認したりすることが可能です。精密な3Dデータの可視化が得意なため、大規模な農業施設の設計支援や、解剖学的な理解が必要な畜産現場など、高度な可視化が求められる現場で真価を発揮します。

Epson|MOVERIO BT-45CS

Epsonより引用

エプソン独自の「シリコンOLEDディスプレイ」を搭載した、圧倒的な視認性を誇る両眼シースルー型スマートグラスです。 高コントラストで鮮明な映像が特徴で、太陽光の下でも図面や指示が見やすいのが大きなメリットです。

日本メーカーならではの信頼性と、眼鏡の上からでも違和感なく装着できるシェードパーツなどの細やかな配慮が魅力。高精細な画像確認が必要な検品作業や、細かな色の変化を見極める栽培管理の遠隔支援に最適です。

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考察:ハード選定からアプリ開発まで。現場に寄り添うリベロエンジニアの伴走支援

スマートグラスを現場に導入する際、多くの企業が突き当たるのが「どの機種を選べばいいのか」「自社の作業に合うソフトがなかなかない」という課題です。

リベロエンジニアでは、倉庫向けスマートグラスソリューション「Libero Sight™(リベロサイト)」の開発で培った高度な技術力を活かし、お客様の現場に特化したスマートグラス専用アプリの受託開発を行っています。例えば、農業特有の「作物の自動カウント」や「熟練者の視線データの可視化」など、汎用製品では手が届かないニッチで重要なニーズを形にします。

さらに、私たちはソフトウェアの開発だけでなく、最適なハードウェアの提案(マルチデバイス対応)も同時に行います。 今回ご紹介したRealWearやVuzixなど、世の中には多くの優れたデバイスがありますが、どれが最適かは現場の環境(日照、粉塵、騒音、作業内容)によって全く異なります。

「ソフトとハード、どちらか一方が欠けても現場のDXは成功しない」。 この信念のもと、リベロエンジニアは「アプリ開発」と「ハードウェア選定」の両面から、現場に最もフィットする形をトータルでコーディネートします。物流や建築、農業といった「現場」の複雑さを知る私たちだからこそ、机上の空論ではない、本当に使い続けられる仕組みをご提案できます。

まとめ:リベロエンジニアと創る、持続可能な農業の未来

農業DXの本質は、テクノロジーが主役になることではなく、主役である「人」と、その方が積み上げてきた「想い」を支え続けることにあります。スマートグラスは、熟練者の深い知恵と、若手や新規参入者のフレッシュな情熱を繋ぐための「架け橋」です。

リベロエンジニアは、単なるITベンダーではなく、現場の皆さまと共に汗をかきながら課題を解決するパートナーでありたいと考えています。 もし、あなたの現場で大切にしている技術を次世代に繋ぎたい、あるいは新しい挑戦をITの力で後押ししてほしいという想いがありましたら、ぜひリベロエンジニアにその声をお聞かせください。

ハードウェア選びから専用アプリの構築まで、一気通貫でサポートいたします。共に、ワクワクする未来の農業を創っていきせんか?

【記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平

元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。

高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。

この記事を書いた人

リベロの「おもしろい」を最前線で形にする、メディアの司令塔。日々の開発に潜むワクワクを拾い上げ、独自の切り口でリデザインする。個々の物語を線で繋ぎ、組織としてのブランドを構築。エンジニアと社会を繋ぐハブとして、まだ見ぬ仲間が「共鳴する」きっかけを作るべく奔走中

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