倉庫の省人化を進める4つの方法。人手不足時代のハンディターミナル運用を見直す
2026.06.12
物流2024年問題を境に、倉庫の人手不足は「慢性的な課題」から「経営リスク」へと変わりつつあります。帝国データバンクの調査(2025年10月)によると、運輸・倉庫業の正社員不足感は67.1%と、全業種平均を大きく上回る水準に達しています。さらに同社の「人手不足倒産の動向調査(2025年)」では、人手不足を原因とする倒産件数が427件と、年間で初めて400件を突破し、3年連続で過去最多を更新しました。
問題は、すでにハンディターミナルやWMS(倉庫管理システム)を導入した現場でも、限界を感じているという現実です。ピッキング中に片手がふさがる、新人が独り立ちするまでに時間がかかる、繁忙期になると誤出荷が増えるなど、IT化を進めてもこうした課題が残るのは、ハンディターミナルが「人の動作」を前提に設計されたツールだからです。
本記事では、倉庫省人化の手段を整理しながら、ハンディターミナルを置き換えずに課題を解消できるスマートグラスの補完活用について、LIXIL粕川工場の事例を交えて解説します。
\ 現場を変えずに小さく始めるDX、詳しく知るならこちら/
倉庫の省人化とは?

物流倉庫の省人化とは、既存の業務工程を見直し、非効率・ムダな作業を削減することで、必要な人員数を減らす取り組みです。日本では、少子高齢化による労働人口の減少が続いているのに加え、特に物流現場では労働条件の面から人材確保が難しいため、少人数で業務を回せる体制の構築が急務となっています。
省人化の手段は大きく2段階に分かれます。まず、ピッキングや仕分けの動線を最適化するなど、業務フローの見直しだけでも無駄な移動や待機時間を削減可能です。さらに踏み込んだ対策としては、AGV・AMRといった搬送ロボットや自動倉庫、仕分け機(ソーター)といったマテハン機器を導入し、人が介在する工程そのものを置き換えます。
近年は、IoTやAIの技術進歩により、さらにデジタル化・自動化の選択肢も広がっています。
また、人手不足の解消だけでなく、機械による作業の均質化でヒューマンエラー・労働災害が減ったり、出荷精度や品質の安定にもつながったりと、副次的な効果があるのもメリットです。
まず知っておきたい|省人化・省力化・自動化の違い
省人化・省力化・自動化は、それぞれ削減の「対象」と「目的」が異なります。
| 目的 | 人数の変化 | 倉庫での例 | |
|---|---|---|---|
| 省人化 | 同じ作業量を少ない人数でこなす | 減る | ロボット導入でピッキング担当を5名→3名に集約 |
| 省力化 | 一人あたりの作業負担を減らす | 変わらない | 搬送台車を電動化し、作業者の体力的な消耗を軽減 |
| 自動化 | 人の手を介さずに機械・システムが作業を行う | 減ることが多い | AGV(自動搬送ロボット)が棚間を自律移動して商品を運搬 |
省人化は人員削減そのものを目的とする取り組みです。一方、省力化は一人あたりの作業負担を減らすことが目的です。人数は変わらなくても、疲労やミスが減り、品質が安定します。両者の違いは、一定の工程から人員を削減できるかにあります。
また、自動化は省人化を実現するための手段の一つです。機械に任せられる作業は任せることで、従業員の作業数・工程を削減します。そのため、省人化を確実に達成するには自動化の活用が有効です。
省人化が求められる背景|人手不足・EC需要増・コスト上昇
倉庫・物流業界で、省人化が求められる背景として、大きく「人手不足」「EC需要増」「コスト上昇」の3つが挙げられます。
少子高齢化の影響でトラックドライバーの担い手が減り続けており、経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」(2022年9月)によると、2014年時点で、すでに53%超の企業が人手不足を実感。構造的な問題として、10年以上継続してきたことがわかります。加えて、物流2024年問題(ドライバーの時間外労働上限規制)により、輸送能力のさらなる低下が懸念されています。
こうした人材不足はドライバーだけでなく、倉庫などで働く内スタッフの人手不足も深刻化。一般社団法人日本倉庫協会が2024年に公表した「営業倉庫の現状と課題について」によると、倉庫事業における人手不足は職種全体で7.5%に達し、今後5年以内に15.9%まで拡大するとのアンケート結果が出ています。倉庫内スタッフは人材が集まりにくく、特にフォークリフトなど特殊技能を持つ人材の確保が難しいのが現状です。
にもかかわらず、EC市場の拡大が荷物量を押し上げています。国土交通省の「宅配便・メール便取扱実績について」によると、2024年度の宅配便取扱個数は50億3,147万個で、2010年度の32億1,983万個と比べると約1.4倍の水準です。
荷物量が増える一方、ドライバー不足による配送コストや倉庫内の人件費も上昇しており、利益を圧迫する構造になっています。
このような「人が減り、荷物は増え、コストが上がる」三重の課題を同時に解消するために、省人化による生産性向上が不可欠となっています。
\ 現場を変えずに小さく始めるDX、詳しく知るならこちら/
ハンディターミナルだけでは省人化に限界がある理由

多くの倉庫で導入されているハンディターミナルは、バーコードスキャンによる入出庫・ピッキング作業のデジタル化で、物流現場の手作業と入力ミスを大幅に削減してくれるツールです。しかし、人手不足が深刻化するなか、ハンディターミナル単体での省人化には構造的な限界があります。
両手がふさがり、作業スピードが上がらない
ハンディターミナルを使ったピッキング・入出庫作業では、端末を持つ側の手が常に占有されるため、両手がふさがりやすくなります。
ハンディは片手で操作できますが。荷物を抱えた状態や、両手が必要なサイズの荷物を扱う場面では、スキャンのたびに荷物をいったん棚や台車に置かなければなりません。「置く→スキャン→また持つ」という動作が繰り返されるため、1回あたりの時間は数秒でも、1日数千回に及ぶ作業全体では無視できないロスタイムになります。
加えて、荷物を持ちながら画面を確認する姿勢は不自然になりやすく、腰や肩への負荷も蓄積します。作業員の疲労が増すほど動作は鈍くなるため、後半の時間帯ほど生産性が落ちやすいでしょう。
こうした課題を根本から解消するには、両手を完全にフリーにできるハンズフリーデバイスへの移行が有効です。ハンズフリー化によって取り出し・運搬・スキャンを途切れなく行えれば、無駄な動作の排除・身体的負担の軽減を同時に実現できます。
スキャンミス・確認漏れが発生しやすい
ハンディターミナルの操作は、あくまで人間が行うため、どれだけ端末の性能が良くても、読み取りミスや操作の漏れを完全にゼロにはできません。
まず、スキャン自体が失敗しやすい構造的な問題があります。端末とコードの距離が適切でない場合や、斜めからスキャンした場合は認識率が下がります。さらに、コード表面の汚れ・破損・光の反射も読み取りエラーの原因となり、その都度クリーニングや角度調整といった再試行が必要です。
こうした物理的な制約は、作業者の熟練度に関係なく発生します。
加えて、繁忙期や長時間作業では集中力が低下し、スキャンをうっかり飛ばしてしまうケースが起きやすくなります。問題は、こうしたスキップがその場で検知されにくい点です。スキャン漏れが、後工程の検品や棚卸しで発覚すると、原因箇所の特定・現物の再確認・数量の再カウントといった手戻りが生じます。出荷後であれば、誤出荷・欠品による顧客クレームに発展するリスクもあります。
新人の習熟に時間がかかり、教育コストが下がらない
倉庫での作業は、新人の習熟に時間がかかりますが、人員の入れ替わりが激しく教育コストが下がらない面も課題です。
倉庫業務では、ハンディの操作に加え、安全な荷物の取り扱い方・ロケーション管理・ピッキングルールなど、現場固有の知識を体系的に習得させる必要があります。一人前に身につけるまでには、一般的に数週間から数ヶ月単位の時間が必要かかります。
倉庫業務はパートや派遣スタッフの比率が高く、人員の入れ替わりが頻繁に発生。そのたびに教育コストがリセットされるため、現場全体のコスト負担は累積的に大きくなります。特に、属人的な指導が常態化していると、教育内容にばらつきが生じやすく、標準化が進まず、3M(ムリ・ムダ・ムラ)が発生しやすい状態が続きます。
適切な教育体制が整っていない現場では新人が孤立しやすく、早期離職を招くリスクも。離職が起きれば、また一から教育が必要になるという悪循環が定着します。
ハンディターミナルは作業の正確性を高めるツールですが、現場への適応と標準作業の定着を支える教育コストそのものを削減する機能は持ちません。教育コストの削減には、抜本的な改革が必要となります。
\ 現場を変えずに小さく始めるDX、詳しく知るならこちら/
倉庫の省人化を進める4つの方法

倉庫の省人化を進めるには、さまざまな方法があります。ここでは、代表的な4つの方法を紹介します。それぞれ導入コスト・難易度が異なるので、自社の現状・予算にマッチするものから徐々に取り組みましょう。
作業標準化・マニュアル整備
物流作業は個人の経験や勘に頼る場面が多く、担当者ごとに手順や品質がばらつきやすいため、作業の標準化・マニュアル整備に注力することが大切です。
特に、人手不足で教育時間を十分に確保できない現場では属人化が顕著になりやすく、作業ミスや手戻りが繰り返されることでコスト増や労働災害リスクの上昇を招きます。こうした課題を根本から解消するには、担当者に依存しない標準化が必要です。
効果が高いのは「入荷検品」「ピッキング」「梱包」といった、頻度が高くミスが後工程に直結する作業です。例えば、ピッキングでは、巡回ルートや数量確認のタイミングを統一するだけで、誤出荷の発生率を抑えられます。確認手順を作業動線に組み込むことで、集荷後の再チェックも削減できます。
また、標準化した手順はマニュアルとして現場全体に共有することが重要です。ただし時間や納期に追われる物流現場では、長文テキストのマニュアルはほとんど読まれません。写真・図解・動画を活用し、見ればすぐ動けるビジュアル中心の構成にすることで、現場に根づきます。「読むもの」ではなく「その場で参照するもの」として、設計する視点が大切です。
WMS(倉庫管理システム)の高度化
WMS(倉庫管理システム)は、入荷・出荷・在庫・進捗という4つの機能を軸に、倉庫内の業務全体をデジタルで管理するシステムです。在庫数や入出庫状況、作業の進捗をリアルタイムに把握できるため、データ上の在庫と実在庫のズレによる過剰発注・在庫切れを防げます。
WMSを導入すると、ピッキング順路や入出庫の手順がシステム上に定義されるため、作業者はシステムの指示に従って動くことになり、業務の標準化につながります。
また、ピッキングルートの最適化やロケーション管理の改善により、作業時間の短縮と誤ピックの削減を同時に実現可能です。人員配置の最適化にもつながるため、少ない人数で高い物流品質を維持できる点が大きな導入メリットです。
現在はバーコードリーダーやハンディターミナルとの連携が主流ですが、今後はカメラによる画像検品やAIを活用した需要予測・異常検知など、デジタル技術の適用範囲が広がると期待されています。クラウド型WMSの普及により、初期費用を抑えた短期導入も可能になっており、中小規模の物流現場でも活用が進んでいます。
DPS(デジタルピッキング)の導入
各棚にランプを設置し、点灯した場所の商品を取るだけで作業が完結する「DPS(デジタルピッキングシステム)」は、倉庫の省人化に有効な手段の一つです。
紙の伝票を用いた従来のピッキングでは、伝票と手元を交互に目視確認する必要があるため、ミスが発生しやすい構造でした。ミスを防ぐために2人1組での作業(一人が品番を読み上げ、もう一人が商品を確認する体制)を行う現場も多く、これが人件費を押し上げる要因になっていました。
DPSを導入すると、ランプが点灯した棚から商品を取り出すだけで作業が成立するため、読み上げ確認の工程がなくなり、1人での対応が可能になります。
また、商品知識がなくても即日稼働できるのもポイントです。新人教育にかかるリードタイムが短縮され、パートやアルバイトの早期戦力化が見込めます。繁忙期の人員増強にも対応しやすくなるため、慢性的な人手不足の解消にもつながります。
AMR・AGVによる搬送自動化
AGV(無人搬送車)・AMR(自律走行搬送ロボット)は、倉庫内の搬送工程を自動化することで、人が担っていた移動・運搬作業を機械に置き換えるソリューションです。
- AGV:磁気テープやQRコードで誘導され、あらかじめ設定した固定ルートを走行。荷物を上に載せたり牽引したりして搬送できます。
- AMR:レーザーSLAMによるマッピングで自己位置を推定し、周囲の状況を認識しながら自律的に走行。狭いスペースでも障害物を回避できるため、AGVよりも柔軟な運用が可能です。床面への誘導体の設置が不要なぶん、レイアウト変更への対応も容易で、導入期間を短縮できます。
搬送作業を自動化することで、ピッキングや荷物運搬にかかっていた人的コストが削減され、作業員はより付加価値の高い業務に集中できます。また、機械は疲労しないため、長時間・夜間を含む安定稼働も実現します。
近年は商品棚ごとピッキングステーションまで運ぶ「棚搬送システム」との組み合わせも普及しており、作業者の歩行距離削減と省人化をさらに押し進めることが可能です。
\ 現場を変えずに小さく始めるDX、詳しく知るならこちら/
スマートグラスなら「ハンディの置き換え」ではなく「補完」から始められる

倉庫の省人化が必要といっても、ハンディターミナルは耐久性・スキャン精度・既存システムとの連携などに優れることから現場に定着しており、急に別のデバイスへ切り替えるのはリスクが大きいでしょう。そこでおすすめなのが、スマートグラスの導入です。
スマートグラスは、ハンズフリー操作と視野内への情報表示という点で、ハンディターミナルにない価値を持ちます。ただし、既存フローをそのまま置き換えるには導入規模が大きくなります。スマートグラスを「補完」として投入できれば、既存システムや運用ルールに手を入れずに済むため、スモールスタートが実現しやすくなります。
| 項目 | ハンディターミナル | スマートグラス |
|---|---|---|
| 操作方法 | 手持ち・片手操作 | ハンズフリー・音声/視線操作 |
| 情報表示 | 手元の画面 | 視野内(HUD)にリアルタイム表示 |
| バーコードスキャン | 高精度・高速 | ウェアラブルスキャナー併用で高精度化が可能 |
| 耐久性 | 高い(防水・耐衝撃) | 産業用機種は耐水・耐衝撃に強い |
| バッテリー | 長時間使用に対応 | 高負荷時に短くなりやすい |
| 導入コスト | 比較的低い | やや高め(IT導入補助金の対象になる場合あり) |
| 既存システム連携 | 実績多数 | 主要WMSとのAPI連携が拡大中 |
| 主な適用場面 | 検品・数量入力・棚卸 | ピッキング・作業手順ガイド・新人教育・遠隔支援 |
| 両手の自由度 | 低い(端末保持が必要) | 高い(作業しながら情報参照が可能) |
| 習熟コスト | 低い | 直感操作で習得が早い |
まず1工程から、ハンディと並行で使い始められる
スマートグラスは、ハンディを全廃しなくても、まずピッキングや検品、新人教育など特定の「1工程だけ」に絞って数台から小さく導入できます。
既存のWMSやバーコード管理システムとの連携にも対応している製品が多く、インフラの再構築は不要です。そのため、ハンディと並行運用しながら、現場への影響を最小限に抑えたまま実運用データを取得できます。
また、投資規模を絞れるため稟議も通りやすく、費用対効果の説明もしやすくなります。「ピッキング工程の誤出荷率が下がった」「新人の習熟期間が2週間から1週間に短縮された」といった定量的な効果が出た段階で、他工程や他拠点へ横展開するかどうかを判断できます。いきなり現場全体を変える必要はなく、1工程での成果を根拠に次のステップを決められます。
現場担当者の心理的ハードルを下げながら導入を進められる点も、並行運用ならではの利点です。
LIXIL粕川工場の事例|ピッキングのハンズフリー化で作業時間のムダを削減
LIXILのエクステリア製品を生産する粕川工場では、入出庫業務に3つの課題を抱えていました。調達先ごとに異なる納品伝票への手作業対応、ピッキング中に両手がふさがることによる出庫登録の滞り、広大な倉庫内での棚・在庫探索による時間ロスです。
そこで、解決策として導入したのが、リベロエンジニア開発のスマートグラスシステムです。作業指示や棚のナビゲーション情報を視界内にリアルタイム投影することで、端末を手に持つ必要がなくなります。目線を合わせるだけで照合・検品が完了する自動スキャン機能により、出庫登録も作業と並行して処理可能です。
現場の実態に合わせて作り込んだことで、従業員の理解度が高まり、現場発の効率化アイデアも生まれています。結果として、移動・作業時間の無駄を削減し、生産性向上と身体的負担の軽減を同時に達成しています。

このシステムを汎用化したサービスが、Libero Sight(リベロサイト)です。自動スキャン・ナビゲーション・ハンズフリー表示の3機能により、「探す・手入力・手作業」の時間を削減。新人でも熟練者と同水準の作業精度を発揮できるため、教育コストの削減と人手不足の緩和にもつながります。
倉庫DXの第一歩として、まずは資料請求または無料相談からご確認ください。
\ なぜ小さなDXがうまくいくのか、仕組みを知る/
まとめ
倉庫の省人化は、業務フローの見直しから自動化まで段階的に進める必要があります。ただし、どの手段も「現場に定着するか」が成否を分けます。ハンディターミナルを活かしながら、まず1工程だけハンズフリー化するスマートグラスの補完導入は、現場負担を抑えたまま効果を検証できる現実的な選択肢です。
LIXIL粕川工場の事例のように、スモールスタートでも移動・作業時間の削減と身体的負担の軽減は同時に実現可能です。「大規模な設備投資なしに省人化の手応えを得たい」という現場責任者の方は、まずは気軽にLibero Sightの資料請求または無料相談をご検討ください。
\リベロエンジニアが開発した倉庫向けスマートグラスDX/
【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。

