【セミナーレポ】スマートグラスを用いた倉庫業務改善事例──半歩先のDXが現場を変える理由
2026.07.13
「物流DXを進めたい。でも、何から始めればいいのかわからない」
物流2024年問題をきっかけに、物流業界では人手不足や業務効率化への対応がこれまで以上に求められるようになりました。しかし、「DX」と聞くと、大規模なシステム改修や設備投資を思い浮かべ、なかなか一歩を踏み出せない企業も少なくありません。
2026年7月1~3日の「第1回物流DX展」にスマートグラスDX『Libero Sight™(リベロサイト)』で出展したリベロエンジニアは、会場内で『産業用スマートグラスを用いた倉庫業務改善事例』をテーマに登壇いたしました。
本記事では、その講演内容をもとに、物流現場が抱える課題や、スマートグラスを活用した改善事例、そして私たちが考える「半歩先の物流DX」について紹介します。
※本記事は、物流DX展で開催したセミナー「産業用スマートグラスを用いた倉庫業務改善事例」の講演内容をもとに、読みやすく編集・再構成しています。
\ 自社の課題について、お話してみませんか?/
物流2024年問題の今だからこそ、現場改善を考えたい

「産業用スマートグラスを用いた倉庫業務改善事例」をテーマにお話しさせていただきます。物流業界の皆さんであれば、2024年問題については改めて説明するまでもないかもしれません。
時間外労働の上限規制によって輸送能力の不足が懸念されるようになり、物流全体の効率化が大きなテーマとなっています。その影響はドライバーだけではなく、倉庫業務にも及んでいます。実際、有効求人倍率を見ても物流・倉庫業界は全産業平均を上回る状態が続いており、慢性的な人手不足は今後もしばらく続くと考えられます。
人を採用したくても思うように集まらない。採用できても教育には時間がかかる。そして人件費も年々上昇している。
だからこそ、「今いる人員で、いかに効率良く現場を回していくか」が、これからの物流業界ではますます重要になっていくのではないでしょうか。
私たちが現場で見えてきた「3つの課題」

これまでさまざまな物流現場を見てきた中で、私たちは共通する課題があると感じています。
片手がふさがる
ハンディターミナルを持ちながら荷物を扱う現場では、商品を持ち、端末を持ち替え、スキャンし、また荷物を持つという動作が何度も繰り返されます。ひとつひとつは数秒の動作ですが、それが一日を通して積み重なると、大きなロスになります。
例えば、ご家庭で食器洗いをするとき、一枚洗っては流し、一枚洗っては流すよりも、まとめて洗って最後に流した方が効率的ですよね。物流現場でも同じです。「持ち替える」という動作そのものが、実は生産性を下げる原因になっているのです。
探す時間のロス
倉庫が広くなるほど、商品の場所や棚を探す時間が増えていきます。ベテランスタッフであれば経験からすぐに場所が分かりますが、新人スタッフはどうしても探しながら歩くことになります。
この歩く時間は、そのまま作業時間になるだけでなく、身体的な疲労にもつながります。
教育の負担
物流現場では、ベテランスタッフの経験や勘に支えられている場面が多くあります。しかし、新人スタッフが同じレベルまで成長するには時間が必要です。
教育期間が長くなれば、その間は教える側も時間を割かなければなりませんし、ミスが起きれば再教育も必要になります。片手がふさがること、探す時間、教育の負担…ひとつひとつを見ると小さな課題かもしれません。しかし、これらが積み重なることで、生産性や品質、安全性にまで影響を与えているのではないかと、私たちは考えています。
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「手」と「目」を自由にするという発想

そこで私たちが着目したのが、産業用スマートグラスです。スマートグラスというと、「未来のデバイス」という印象を持たれる方も多いかもしれません。しかし私たちが目指しているのは、特別なことではありません。
「手」と「目」を自由にすること。これがスマートグラスの本質だと考えています。

スマートグラスにはカメラが搭載されており、バーコードやQRコードの読み取りが可能です。また、視界の中に作業指示やナビゲーションを表示できるため、作業を止めることなく必要な情報を確認できます。
さらに、音声操作にも対応しているため、作業完了を声で登録したり、ボタン操作を最小限にしたりすることも可能です。つまり、「見る」「確認する」「入力する」という一連の作業を、両手を使わずに行えるようになるのです。
私たちが目指しているのは「半歩先の物流DX」

ここで一つ、お伝えしたいことがあります。
私たちは、「スマートグラスを導入すればDXが成功する」とは考えていません。DXという言葉を聞くと、「システムを全部入れ替える」「大規模な投資が必要」と感じる方も多いでしょう。
しかし、それでは導入のハードルが高くなってしまいます。だからこそ私たちが掲げているのが、「半歩先の物流DX」という考え方です。
例えば、一つの工程だけ導入する。あるいは、一つのラインだけ試してみる。一つの拠点だけで運用してみる。
このように既存のWMSや設備を活かしたまま、小さく始めて、現場の声を聞きながら改善を重ねていく。こうしたスモールスタートこそが、現場に定着するDXにつながると考えています。
小さく始め、改善を繰り返したLIXIL様の事例
ここで、実際の改善事例としてLIXIL様をご紹介します。

LIXIL様では、エクステリア製品の生産拠点において、入庫・出庫・ピッキング業務の改善に取り組みました。当時の現場では、紙の納品伝票による入庫管理や、ハンディターミナルを使ったピッキングが行われており、商品を持ち替えながら作業する負担や、広い倉庫内で商品を探す時間が課題となっていました。
実は、私たちも最初からスマートグラスを提案していたわけではありません。タブレットを含め、現場に最適な方法を検討した結果、「両手を自由に使えること」が重要だという結論に至り、スマートグラスを採用しました。

導入後は、紙伝票のデジタル化や視界への作業ガイド表示によって、持ち替えや探索時間を削減。さらに、バーコード照合によるヒューマンエラーの防止や在庫精度の向上にもつながりました。
そして何より印象的だったのは、改善を進める中で現場から新たなアイデアが生まれたことです。
DXはシステムを導入して終わりではありません。現場と一緒に改善を重ねることで、初めて現場に定着する。そのことを改めて実感した事例でした。

なお、本事例ではVuzix社製の産業用スマートグラス「M400」を採用しています。高い耐久性と防塵・防水性能を備え、物流・製造現場をはじめ、さまざまな現場で活用されています。

スマートグラス導入で期待できる3つの効果
では、実際にスマートグラスを導入すると、現場にはどのような変化が生まれるのでしょうか。大きく3つの効果を紹介します。
導入効果① 作業効率化

紙の指示書やピッキングリストをデジタル化することで、印刷や配布の手間を削減し、ペーパーレスな運用を実現できます。さらに、スマートグラスの視界には「次に取る商品」や「棚の位置」が表示されるため、商品を探す時間を短縮できます。
加えて、ハンディターミナルや紙を持ち替える必要がなくなり、作業を止めることなく、一連の動作をスムーズに進められるようになります。
一つひとつの動作は小さな改善かもしれません。しかし、その積み重ねが現場全体の作業時間を大きく短縮し、生産性向上につながります。
導入効果② 品質・在庫精度の向上

スマートグラスでは、視界内でバーコードを照合することで、思い込みによる取り違えを防止できます。さらに、不良品をその場で撮影・記録し、リアルタイムで情報共有することも可能です。
事例でご紹介したLIXIL様では、こうした仕組みによって在庫登録の精度が向上し、理論在庫と実在庫のズレが縮小しました。結果として、後工程での欠品確認や手戻り作業も減少し、より精度の高いオペレーションにつながっています。
実際の運用開始後には、誤出荷ゼロという成果も得られており、品質向上と業務効率化を同時に実現できる点は、スマートグラスならではの大きなメリットだと考えています。
導入効果③ 人材育成・教育への波及

物流現場では、「新人が育つまで時間がかかる」「ベテランしか分からない作業がある」といった悩みも少なくありません。スマートグラスでは、「次に何をするのか」を視界内で案内できるため、経験が浅いスタッフでも迷わず作業を進められます。
これは単に作業を効率化するだけではなく、「安心して仕事ができる環境づくり」にもつながります。
また、ベテランスタッフのノウハウを業務フローとして標準化することで、属人化を防ぎ、教育コストの削減にも貢献します。前述したとおり、新人スタッフが間違えにくくなることは、教える側だけでなく、教わる側の心理的負担を軽減することにもつながります。

私たちは、このように「人に優しい倉庫DX」を実現することも、スマートグラスの大きな価値の一つだと考えています。
まとめ|物流DXは、現場と共につくっていくもの
スマートグラスは、決して魔法のようなデバイスではありません。導入すればすべての課題が解決するわけでもありません。大切なのは、それぞれの現場に合わせて、小さく始め、改善を繰り返していくことです。物流現場ごとに課題は異なり、最適な答えも違います。
だからこそ、私たちはお客様と一緒に現場を理解し、一緒に改善を重ねながら、本当に現場で使われる物流DXをつくっていきたいと考えています。
物流DXは、大きく変えることが目的ではありません。現場の課題を一つずつ解決し、その積み重ねによって、安全性・生産性・教育効率を高めていくこと。
それこそが、私たちが考える「半歩先の物流DX」です。
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編集後記
今回のセミナーは、おかげさまで立ち見が出るほど多くの皆様にご参加いただき、大変盛況のうちに終了いたしました。
セミナー終了後には、投影したスライドを写真に収める方や、そのまま展示ブースへ足を運び、スマートグラスのデモを体験される方も多くいらっしゃいました。現場改善への関心の高さと、「まずは自社でも何か始めてみたい」という前向きな声を数多くいただき、私たちにとっても非常に印象深い時間となりました。
また、展示会の3日間を通して、物流・製造業をはじめとするさまざまな業界・企業の皆様とお話しする機会に恵まれ、現場ごとに異なる課題や、「こうしたい」「もっと良くしたい」という熱い想いに触れることができました。
私たちは、スマートグラスという製品を提供するだけではなく、お客様の現場に合わせた受託開発や既存システムとの連携、そして導入後の改善まで伴走することを大切にしています。今回いただいた多くのご意見やご相談も、今後のサービス開発やご提案にしっかりと活かしてまいります。
\ 今回、展示会に行けなかった人も、気軽にご相談ください /
