倉庫作業で減らないピッキングミスの原因は?製造・物流現場の対策とDX活用法
2026.07.10
正確性が重要な製造・物流の現場では、たった1件のピッキングミスが、再出荷や返品手配、取引先への謝罪対応など、複数部門を巻き込む連鎖コストを生みます。こうしたピッキングミスは、ただ「注意しよう」と呼びかけるだけでは改善しません。
ピッキングミスの多くは、個人の不注意ではなく現場の構造に原因があるからです。
本記事では、ミスの発生構造を「ヒューマンエラー型・環境設備型・管理仕組み型」の3つに整理し、原因タイプ別の具体的な対策を解説します。自社の現場がどのタイプかを診断するチェックリストも用意しています。ミスの再発に手を焼いている担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
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ピッキングミス1件が、再出荷コストと顧客クレームを生む

ピッキングミスがたった1件でも発生すると、再出荷コストと顧客クレームを生むため、複数の部門へ連鎖的に対応が発生します。
まずカスタマー担当が取引先へ連絡を入れ、倉庫では正しい商品の再ピッキング・再梱包・再出荷と、誤出荷分の返品手配が同時に走ります。取引先への謝罪・報告が必要な案件になれば、営業担当も巻き込まれるかもしれません。このように複数部門にわたってコストが発生するため、たった1件のミスで何人もの工数が発生します。
問題は、これが「たまに起きる」ではなく「繰り返し起きる」点にあります。
現場帳票電子化ソリューションを提供する企業の調査(2023年)によると、倉庫・物流業務で発生するミスの第1位がピッキングミスです。その原因として、以下のような要因が上位TOP3に挙がっています。
- 手作業への依存度が高い:63.4%
- 作業プロセスの複雑さ:46.5%
- チェック項目の多さ:46.5%
注意喚起だけでは根絶できない構造的な問題が背景にあるため、ミスが続く負のループに陥った現場では、対応に追われるスタッフの疲弊が蓄積し、離職につながるケースも考えられます。補充採用・再教育のコストが加わることで、損失はさらに膨らみます。顧客クレーム・返品対応・人材流出という三重の損失が、ミス1件から派生するかもしれません。
ピッキングミスの原因は「3つのタイプ」に分けられる

ピッキングミスの発生原因は、大きく「人的要因」「環境要因」「システム要因」の3つに分類できます。重要なのは、自社の原因がどれに当てはまるか把握しておくことです。「ミスが多いから教育を強化しよう」と動いても、原因が棚レイアウトやシステム不備にある場合、対策は的外れになり再発を防げません。
原因タイプと対策が一致して初めて改善されるので、まずは“ピッキングミスの原因”がどこにあるのか把握しましょう。
ベテランでも起きる「ヒューマンエラー型」
ヒューマンエラー型のミスは、思い込みや確認漏れ、疲労、慣れなどから発生するミスです。ベテランにも発生する構造的問題のため、仕組みから改善していく必要があります。
例えば、下記のような要素によりミスが発生しやすくなっている可能性があります。
- 疲労から勘違いする:目が疲れて品番を誤認したり、商品を間違えたりというミス。特に、午後や深夜シフトの後半はミスが集中しやすい
- 前後情報を混同する:連続して似た商品を扱うことで、直前の作業内容の記憶から商品を混同する
- 経験による思い込み:作業に慣れて、「いつもこの棚」と逐一情報を確認しなくなる
特に見落とされがちなのが、経験による思い込みです。熟練した作業員ほど過去の記憶をもとに直感的に動くため、ラベルや数量を改めて確認しないまま作業を進めがちです。疲労が重なると、この傾向はさらに強まります。
ベテランが効率的に動くために、必要な工程を無意識に省略する「経験値」が、かえってミスを招く要因になります。
現場の作りが生んでいる「環境・設備型」
環境・設備型のミスは、作業者個人の注意不足ではなく、現場の設計や設備の不備が原因で発生します。
例えば、下記のようなケースが考えられます。
- ロケーション管理の不備:類似した品番(例:「A-2381415」と「A-2381416」、あるいは「O」と「0」「I」と「1」など)が連続して並ぶと、目視確認だけでは誤ピッキングしやすい
- 類似商品の近接配置:品番や外見が似通っているなど、商品を間違いやすい状況・保管環境になっている
- ピッキングリストの視認性が悪い:照明が暗い・ラベルの文字が小さい環境では、誤認しやすい。ピッキングリストに、業務と直接関係のない情報まで記載されていることで、品番や数量など必要な情報を見間違いやすくなることもある
- 温度管理の不備:暑さは集中力を低下させ、熱中症リスクを高める。一方、寒さは手がかじかみ、細かい作業の精度が落ちるうえ、防寒着が動作を制限する
- 作業スペースが不十分:商品を仮置きしたり、仕分け時に誤った場所へ置いたりして、他商品と混在するリスクが高まる
こうしたロケーション管理の不備や、類似商品の近接配置、リスト視認性の低さ、5S未整備などは工場・倉庫全体として、改善すべき要素だといえます。
新人もベテランも迷う「管理・仕組み型」
管理・仕組み型の場合、マニュアルの未整備や・属人化・OJT依存・情報共有の欠如など、人員の優秀さ経験年数を問わずミスが起こりやすい仕組みになってしまっていることが問題です。
作業マニュアルが整備されていない現場では、以下のような問題が発生しがちです。
- 教育がOJT頼みになる:教える担当者ごとに手順が異なり、新人は「どれが正しいやり方か」を判断できないまま業務を覚えてしまう
- ベテランの属人性が高まる:長年の経験から独自のやり方に固執しやすくなり、変更されたロケーション情報や新しいルールが周知されても、旧来の方法で作業を続けてしまう
共通するのは「手順が個人により異なる」という点です。属人化が進むほど、ミスが起きても「誰の・何の手順に問題があったか」を特定できません。統一したマニュアルがなければ再発防止策も立てられず、また同じミスが繰り返されます。
ロケーション変更時の情報共有が徹底されていない場合も同様で、一部の作業者だけが古い棚番で動き続けるリスクが生まれます。
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【診断】あなたの現場のミスはどのタイプ?チェックリストで確認する
ピッキングミスは、原因のタイプが異なれば有効な対策も変わります。自社の現場が、「ヒューマンエラー型」「環境・設備型」「管理・仕組み型」のどのタイプに当てはまるか、以下のチェックリストで診断してみましょう。
| チェック項目 | タイプ |
|---|---|
| □ 繁忙期・残業後にミスが集中する | ヒューマンエラー型 |
| □ ベテランでも同じ種類のミスが繰り返し出る | ヒューマンエラー型 |
| □ 類似商品の取り違えが多い | 環境・設備型 |
| □ ロケーション変更後からミスが増えた | 環境・設備型 |
| □ ラベルや棚番が見えにくいという声が現場から出ている | 環境・設備型 |
| □ 担当者が変わるとミスが増える | 管理・仕組み型 |
| □ 新人の教育方法が担当者によって違う | 管理・仕組み型 |
| □ ロケーション変更が全作業員に伝わっていないことがある | 管理・仕組み型 |
チェックが多いタイプが、自社の主な課題です。「ヒューマンエラー型」が多ければ作業負荷や集中力の管理が起点になります。「環境・設備型」ならレイアウトや表示の見直しが先決です。「管理・仕組み型」であれば、教育体制や情報共有の仕組みから手をつけるのが効果的です。
次のセクションでは、タイプ別の具体的な対策を解説します。
タイプ別|ピッキングミスの原因ごとの具体的な対策

ピンキングミスの原因ごとに、有効な対策を具体的に解説します。まずは、特に当てはまるものの中から時間・コスト的に対応しやすいものから、改善していきましょう。
「ヒューマンエラー型」はダブルチェックより“仕組み”で防ぐ
「ヒューマンエラー型」は、ただミスした人を注意したりダブルチェックを増やしたりするのではなく、ミスしない仕組みづくりを進めて防ぎましょう。
よくある「ミスが多いから、チェック項目を増やす」「ダブルチェックを行う」というのは、いたずらに工数を増やすだけで、ミスの発生源そのものを取り除けません。人が確認する以上、疲労や思い込みによる見落としは構造的に残るためです。
根本対策として有効なのは、バーコード照合の導入です。目視に頼らずスキャンで正誤を自動判定するため、読み間違いや先入観による取り違えが起きにくくなります。
また、いつスキャンするかタイミングを手順書に明示することも大切です。ピッキング後にまとめてスキャンする運用では、取り違えに気づくのが遅れます。「棚から取り出した直後にスキャン」と工程を固定することで、すぐにミスを発見でき対応が早まります。「この工程でスキャンしないと次に進めない」という流れにすることで、個人の意識に依存しない仕組みにしましょう。
「環境・設備型」は棚とラベルの見直しから始める
現場整備の第一歩は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の実践・徹底です。通路の荷物を撤去し、棚番表示を補修するだけで視認性は向上します。
ただし5Sだけでは類似商品の取り違えは防げないため、配置面の見直しも必要です。サイズ・デザインが似た商品を隣接させるとミスが発生しやすくなるので、別の列や離れたロケーションへ移動させ、変更後は全作業員に周知徹底しましょう。
また、ラベルと棚番の改善も効果が高い施策です。文字は大きく太く、色分けでゾーンを区別します。品番には「O(オー)と0(ゼロ)」「I(アイ)と1(イチ)」のような混同しやすい文字を避けた設計にすることで、目視確認の精度が上がります。
加えて、ロケーション最適化も重要です。出荷頻度の高い商品を腰の高さ付近・取り出しやすい位置に集約し、動線を整理することで、作業負荷が下がりミス発生率も低下します。
「管理・仕組み型」は標準化とマニュアルで属人化を断つ
管理・仕組みの不備がミスを誘発している場合は、標準化とマニュアルで属人化を防ぎましょう。
- マニュアル整備:ピッキング・入庫・検品、それぞれの工程で正しい手順を文書化。誰が行っても、同じ作業・手順になるよう明確にする。写真やイラストなど、視覚的に理解しやすくすると浸透しやすい
- ロケーション変更時の共有ルール:「誰が・いつ・どのように全員へ周知するか」を明確にしておくと、変更を知らない作業員が旧保管場所から商品を取り出すミスを防げる
- OJTの標準化:「教える人によって内容が変わる」ことを防ぐため、教育手順そのものを文書化。誰が指導しても、同じ水準で育成できる体制にする
重要なのは、マニュアルを整えて終わりにしないことです。ミスが発生した際、手順書のどこに不備があったかを検証し、内容を改訂するPDCAを回し続けることで、現場の実態に即したドキュメントとして機能し続けます。
運用改善で残るミスには、ツール・システムで仕組みを変える

運用改善はピッキングミス削減に必要不可欠な有効な施策ですが、防げるミスには限界があります。特にヒューマンエラー型・環境型のミスが残り続ける現場では、ツール導入が有効です。
全面刷新はもちろん、既存設備を活かした部分補完としても導入できるため、改善にまわせる費用が限られる企業や、現場からの反発が心配な企業にも適しています。
WMS・ハンディターミナル|「何が防げて何が防げないか」を整理する
多くの現場でピッキングミス対策の軸として機能しているWMSとハンディターミナルですが、ハンディだけでは全てのミスを防ぎきれないため、「何が防げて何が防げないか」を整理しましょう。
ハンディの活用は、バーコード照合による読み間違いの排除や、入出庫データのリアルタイム反映、作業員ごとの進捗把握といった点では、目視管理や紙運用よりも明確な優位性があります。
ただし、どうしても防ぎにくい領域も存在します。代表的なのが類似商品の取り違えです。例えば、容量違い(300mlと700ml)や品番末尾が1文字だけ異なる商品の場合、バーコードスキャンそのものを誤った商品に向ければエラーは出ません。棚に到着した後の目視判断は人に委ねられたままです。
疲労時の誤スキャンや、両手が荷物でふさがった状態での操作ミスも同様に残ります。
「導入したのにミスが減らない」という現場では、ハンディで防げていない部分を明確にすることが、次の施策選定の起点になります。DPSによるランプ誘導や、商品画像の棚表示追加など、目視判断を補う手段を組み合わせることで、残存ミスの構造的な解消につながります。
DPS|光で棚を指示するから、見間違い・取り違いが起きない
DPS(デジタルピッキングシステム)は、ピッキング対象の棚に取り付けたランプが点灯し、取り出すべき場所と数量を直接提示する仕組みです。
作業者はランプの指示に従って商品を取り、表示器のボタンを押すだけで次の指示に進めます。紙リストを目で追う工程がなくなるため、「A-2381415」と「A-2381416」のように末尾1文字しか違わない品番の読み間違いや、行の見誤りによる数量ミスが構造的に発生しにくくなります。
ピッキングすべき商品が一目瞭然になるため、商品知識が少ない新人でも即戦力として作業できるのもメリットです。
一方、棚1つひとつに表示器を設置するため、初期投資は運用改善策の中でも高い部類に入ります。また、棚のレイアウト変更時には表示器の付け替えや配線の見直しが必要となるため、頻繁に保管場所を変える現場では運用コストが増すかもしれません。
ミスの根本原因を仕組みで断ちたい場合には有効な選択肢ですが、導入後のレイアウト変更頻度も含めて費用対効果を検討することが重要です。
スマートグラス|両手を空けたまま、映像と音声でミスを防ぐ
スマートグラスは、装着するだけで次の作業指示・商品情報・ロケーションが視界にリアルタイム表示されるため、作業者は即座に次の動作へ移れます。
ハンディの持ち替えや、伝票の手持ちが不要になることで、ピッキング中に両手で商品を保持したまま次のロケーションへ移動可能です。「持ち替えた際に商品を落とす」「伝票を見間違える」といったヒューマンエラーの発生条件を、作業フローごと取り除けます。
また、目線カメラによる自動スキャン機能を使えば、バーコードに視線を向けるだけで照合・検品が完了。手作業による読み取りミスが起きにくくなる点が、最大の強みです。
スマートグラスは、WMSやハンディターミナルと連携して動作する設計のため、既存システムを入れ替えることなく、必要な工程だけに絞って導入できます。置き換えではなく、補完として導入できることから「初期コストの軽減」「現場の混乱が少ない」「スモールスタートで段階的に拡大できる」など、既存設備を活かしながら導入できるのも利点です。
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スマートグラス導入でピッキングミスが減った現場の事例
LIXILの粕川工場では、スマートグラス倉庫DXソリューション「Libero Sight」の導入後、ピッキングミスの発生が減り、倉庫内での不要な移動・手作業が解消されました。作業者の身体的負担も軽減され、経験年数を問わず一定の精度で入出庫業務をこなせる体制が整っています。
同工場では、入出庫業務に複合的な非効率が重なっていました。
- 調達先ごとに異なる伝票様式のせいで入庫登録に手入力が生じていた
- ピッキング中は両手がふさがるため、出庫登録が止まりがちだった
- 広大な倉庫内での棚・在庫の探索に、多くの時間を費やしていた
そこで、スマートグラスを導入したところ、倉庫内での移動や作業時間のムダを削減し、生産性の向上と従業員の身体的負担の軽減を両立することに成功しました。
Libero Sightには、下記3つの機能があります。
- 自動スキャン機能
- ナビゲーション機能
- ハンズフリー表示機能
これらにより「探す・確認する・手入力する」という3つのロスが消えるため、ピッキングミスの防止はもちろん、新人でもベテランと近い精度で作業できるため、習熟度のばらつきが縮まります。ピッキングミスの原因や課題は現場によって異なるもの。リベロエンジニアでは、現場にとことん寄り添って「課題にぴったり」な機能を開発・カスタマイズいたします。
運用改善によるピッキングミスの防止に限界を感じているなら、お気軽にご相談ください。
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まとめ
ピッキングミスの根本対策は、原因タイプと施策を一致させることです。疲労や思い込みが原因なら仕組みで防ぎ、棚レイアウトや視認性が問題なら設備から見直し、属人化が原因なら標準化で改善しましょう。運用改善で残るミスには、スマートグラスのようなツールで作業フローごと変えることが有効です。
まずは本記事のチェックリストで、自社のミスがどのタイプかを確認してみてください。原因が特定できれば、打つべき手は自ずと絞られます。現場の課題に合った解決策を探したい場合は、お気軽にご相談ください。
リベロエンジニアが提供しているスマートグラス倉庫DXソリューション「Libero Sight」は、カスタマイズ機能で外部ツールとの連携も可能です。多言語対応や専門用語の反映、作業ルート記録、マニュアル検索など、幅広い機能を追加できるだけでなく、独自のカスタマイズ機能の開発も行えます。
企業ごとの独自課題を解消できるので、ピッキングミスにお困りなら一度お問い合わせください。
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【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。

