作業手順書の作り方|製造業の現場で”使われ続ける”手順書にする5つのコツ
2026.09.25
製造業の現場では、「作業手順書の作り方がわからない」「作ってはみたものの、現場に浸透しない」という悩みを抱える担当者も多いでしょう。とくに近年は、外国人労働者が増加していたり、貴重な新人を定着させる必要があったりなど、作業を標準化し教育に欠かせない「作業手順書」がより重要になっています。
本記事では、作業標準書・業務マニュアルとの違いから、実践的な5ステップの作り方、5W1Hや写真を使ったわかりやすくするコツなどを解説します。「紙の手順書が“あるだけ”」に陥らず、現場で使われ続ける作業手順書を設ける参考にしてください。
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作業手順書とは?作業標準書・業務マニュアルとの違い

作業手順書とは、「誰が・何を・どの順番で行うか」を時系列でまとめた文書です。似た言葉に「作業標準書」「業務マニュアル」がありますが、それぞれ扱う情報の粒度と対象範囲が異なります。
| 文書 | 主に定めること | 主な利用者 |
|---|---|---|
| 作業手順書 | 具体的な操作手順・順序 | 現場の作業担当者 |
| 作業標準書 | 作業条件・品質基準(数値など) | 管理者・品質担当者 |
| 業務マニュアル | 業務全体の目的・ルール・関連知識 | 新入社員・全社員 |
作業手順書は「その基準を満たすための具体的な操作手順」を示す文書です。一方、作業標準書は「作業条件・品質基準(トルク値や温度管理基準などの数値)を定めたもの」です。基準(標準書)と、それを実現する手段(手順書)という関係にあります。
また業務マニュアルは、業務全体の目的やルール、関連知識までを含む上位概念です。個別の作業レベルでの具体的な手順を記した作業手順書よりも、より扱う範囲がより広くなっています。
本記事では、現場の作業担当者が実際の作業で参照する「作業手順書」の作り方に絞って解説します。
製造業において作業手順書を作るメリット

作業手順書を作成すると、製造業の現場では以下の3つのメリットがあります。それぞれ、どのように有効なのか詳しく紹介します。
- 作業品質の均一化・ミス防止
- 新人教育・引き継ぎの効率化
- 属人化の防止
作業品質の均一化・ミス防止
作業手順書があれば、誰が作業しても同じ手順・基準で作業を進められるため、誰が作っても同じ品質で製造できます。
工程ごとの条件値や判断基準を設定しておくことで、作業者の独断を減らして、品質のムラやヒューマンエラーを大幅に削減できます。例えば、トルク値や温度管理基準といった製造に必要な数値を手順に明記しておくと、担当者の感覚に頼らない客観的な数値・指標で判断でき、一定品質で製造しやすくすることが可能です。
業務の質が安定すれば、検査や手直し、クレーム対応などにかかるコストの削減や、クライアントからの信頼向上、自社ブランドの確立につながります。
また、作業完了の判定基準を「完了メッセージが表示されたことを確認する」のように明確に示しておくと、「できたつもり」による見落としを防げます。写真とあわせてOK例・NG例を対比させる運用も、ミスに気づきやすくする方法のひとつです。
こうした手順の標準化は、内部統制や監査対応の効率化にもつながります。
新人教育・引き継ぎの効率化
作業手順書があれば、教育にかかる時間と負担を減らせます。
先輩社員が付きっきりで指導する必要がなくなり、既存メンバーは本来の業務に集中しやすくなります。これにより新人教育に手がとられて、生産性が低下するのを防ぎやすくなるでしょう。異動や退職時の引き継ぎ資料としても活用できるので、口頭での引き継ぎでは抜けやすい細かな手順まで漏れなく伝えられます。
また、教育担当者ごとのバラつきを防げるのもメリットです。従業員ごとに業務経験や理解度、教育方針、教育内容などに差があると、新人は「誰の意見を参考にすべきかわらかない」「何が正しいのかわからない」と混乱してしまうでしょう。
作業手順書があれば、指導者の経験やスキルに左右されずに一定レベルの教育を実施できます。作業内容に変更がない限り、次回以降も繰り返し活用できるため、効率的に作業を習得できる環境が整います。
属人化の防止
作業手順書があることで、特定の人にしか作業ができない「属人化」を防ぎやすくなるのもメリットです。
誰もが一定クオリティで精度の高い仕事ができるようになることで、退職や異動、急な休職などで作業がストップしたり作業ノウハウが喪失したりすることを防げます。
実際、技能継承の課題は、経済産業省・厚生労働省・文部科学省が公表する「ものづくり白書」でも継続的に取り上げられているテーマです。同書では、技能継承を進めるために取り組みとして、どの従業員規模の企業においても「再雇用や勤務延長などにより高年齢従業員に継続して勤務してもらう」の割合が最も高く、技能継承ができず高年齢の従業員に頼らざるを得ない状況となってるのが現状です。
こうした状況のなか、特定の人にしか対応できない作業を減らして、技能を「仕組み」として残していく取り組みが、多くの製造現場で求められています。
作業手順書に、現場で培われた熟練技能者が持つ作業のカン・コツなどの暗黙知を含めた貴重な情報を蓄積することで、属人化しやすい技術やノウハウを組織の資産として蓄えられるようになります。技術伝承の仕組みができあがれば、若手や新入社員でも熟練者と同水準の作業を再現できるようになるでしょう。
結果的に、指導にかかる時間やコストを抑えるだけでなく、現場全体のスキルの底上げや企業の競争力強化につなげられます。
リベロエンジニア代表 金子周平私たちリベロエンジニアが展示会出展で製造業の方々からお話を伺う中でも、「ベテランに作業が集中してしまう」「新人・若手の育成に苦労している」という声を数多くいただきます。
製造業の作業手順書の作り方【5ステップ】


製造業における作業手順書の重要性がわかっていても、どのように作ると効果的なのかわからない方も多いでしょう。ここからは、実際に作業手順書を作る手順を5つのステップで解説します。
①目的・対象範囲を決める
作業手順書づくりの最初のステップは、目的と対象範囲を決めることです。
まず、「何のために手順書を作るのか(新人教育用、品質管理用、引き継ぎ用など)」目的を明確にしましょう。目的が曖昧なまま作り始めると、記載すべき情報の優先順位が定まらず、現場で使われない手順書になりがちです。例えば、新人教育用と品質管理用の内容が混ざった手順書を作ると、「新人教育に不要な情報」「品質管理に不要な初歩的な情報」が混ざり込むことになり、必要な情報を得にくい手順書ができあがってしまいます。
わかりにくいと手順書の目的を果たせなくなるのはもちろん、そのわかりにくさから「誰も使ってくれない」手順書として形骸化するリスクもあります。
目的が定まったら、次に「対象とする作業の範囲」を決めましょう。どこからどこまでを1つの手順書としてまとめるかを最初に決めておくと、後の工程がスムーズに進みます。あわせて、誰が作成し、誰が内容を承認するかという作成体制も決めておきましょう。
②作業を洗い出す
作業指示書の目的と対象範囲を決めたら、具体的な作業の内容を洗い出しましょう。
- まずメモ程度に書き出す:いきなり整った形式でまとめようとすると、粒度や項目がバラつきがち。最初はメモ程度に作業を書き出し、後から整理する方が効率的です。
- 実際の作業を見て確認する:複数人が関わる作業は、ヒアリングだけに頼らず、実際に現場で作業の様子を確認。認識のズレを防げます。
- 抽象度高く洗い出してから分解する:初めは大まかなレベルで作業全体を洗い出し、後から必要に応じて細かいタスクに分解。抜け漏れを防ぎやすくなります。
- QC工程図で5W1Hを整理する:製造現場では、QC工程図を使って作業の5W1Hを整理する方法も有効。どの段階で、誰がいつ何をするのか明確になり、より正確に作業しやすくなります。
作業を洗い出すことで、どのような工程があるのかや細かな注意点、押さえておくべきコツなど詳しい内容を詰めやすくなります。結果的に網羅性の高い、誰もがわかりやすい作業手順書に仕上げられます。
③構成・フォーマットを決める
作業を洗い出したら、手順書の構成・フォーマットを決めましょう。
フォーマットの代表的なものとして、以下の4つが挙げられます。
- Word:文章中心の手順書に適している
- Excel:図表を多く使う手順書や、チェックリストとしても活用したい場合に適している
- PowerPoint:写真や動画を多用し、視覚的に見せたい手順書に適している
- クラウドツール:複数人でリアルタイムに共有・更新したい場合に適している
構成段階では、作業内容や担当者、使用ツール、チェック項目、備考といった記載項目を決めておきます。大項目・小項目のように階層化して整理しておくと、作業者が必要な情報を探しやすくなります。
④手順を記載する
ここまでで洗い出した作業内容を、構成に沿って記入していきましょう。
このステップでは、前段階までの整理が十分であれば、構成に沿って書き写すだけの作業になります。逆に、なかなか記入が進まない場合は、作業の粒度や構成の決め方を見直すべきサインです。無理に書き進めようとせず、一度前のステップに立ち返ってみましょう。
手順を記載する際は、「誰が読んでも理解できる表現」を意識することが大切です。どうしても作業を理解している人が手順書を作成すると、初歩的なことや理解していることを省略して書きがちですが、初心者でもわかるよう詳しく書くことで使いやすい手順書になります。現場未経験者や新人が、手順書を読むだけで迷わず作業できるレベルまで丁寧に記述しましょう。結果的に、教育コストの削減・生産性の向上につながります。
なお、わかりやすく書くための具体的なコツは、次の章で詳しく解説します。
⑤現場からのレビューを受け更新する
手順書が完成したら、そのまま運用を始めるのではなく、まず作業担当者に共有して内容に齟齬がないか確認してもらいましょう。
内容に抜け漏れや齟齬、古い情報などの問題がなければ、その作業を担当したことのないメンバーにも共有します。「手順書を読むだけで同じ品質で作業できるか」という観点でフィードバックをもらうことで、わかりやすい手順書になっているか確認します。実際に、手順書どおりに作業を試してもらう「実機確認」を行うと、より効果的です。
フィードバックをもとに内容を更新し、改訂履歴を残しておきましょう。業務内容に変更がなくても、最低でも半年に1度など定期的な見直しのサイクルを決めておくと、手順書が実態と乖離して形骸化するのを防げます。
見やすい・わかりやすい作業手順書にする5つのコツ


作業手順書は、ただ作れば終わりではなく、活用されて初めて意味のあるものとなります。そのためには見やすい・わかりやすい作業手順書に仕上げることが大切です。せっかく作った手順書も、読みにくいと現場に定着しません。
ここでは、わかりやすい作業手順書にするための5つのコツを紹介します。
5W2Hを意識する
手順書をわかりやすくするには、5W2H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように・いくら)を意識して書きましょう。
「5W1H」を意識して、以下のような項目を書くことで、作業の目的やプロセスを明確に伝えやすくなります。
- When:いつ作業するか
- Where:どこで作業するか
- Who:誰が作業を担当し、誰が責任者を務めるか
- What:作業にはどのような材料や機械が必要か
- Why:なぜその作業が必要なのか
- How:どのような手順で作業するか
- How much: どのくらいのコスト・数量・時間か
特に「なぜ(Why)」を詳しく記載することがポイントです。作業の目的や理由まで書いておくと、作業方針を今日y通できるため、組織全体で認識を統一したうえで作業を進められます。手順どおりに進まないイレギュラーな場面でも、担当者が自分で判断しやすくなるのもメリットです。
手順書の作成後、5W1Hのいずれかに変更があった場合には、すぐに内容を更新して常に最新状態を維持しましょう。古い情報のまま放置すると、手順書が効果的に機能しなくなるだけでなく、安全を脅かすリスクがあるため、定期的なアップデートと社内共有が重要です。
専門用語・曖昧な表現を避けて書く
専門用語や曖昧な表現を避けて、誰でも理解できるように書きましょう。
新人や他部署の人が読んでも理解できるよう、専門用語や略語はできるだけ避けましょう。読む人と書き手で知識量が異なることを念頭に、初心者の視点に合わせた表現を心がけることで、わかりやすい指示書になります。どうしても専門用語が必要な場合は、注釈を添えましょう。
また、曖昧な表現を避けることもポイントです。例えば、「適切に」「しっかり」といった曖昧な表現では、人によって基準が異なり品質にばらつきが出るおそれがあります。できる限り数値化できるものは数値化し、具体的な数値や動作で記載することが大切です。
誰が読んでも同じ解釈で作業が進められるような、誤解を招かない表現を意識してください。
レイアウト・見た目を整える
レイアウトや見た目を整えて、情報を得やすくまとめることも大切です。
箇条書きや見出しを活用し、1ページに情報を詰め込みすぎないようにしましょう。長文が多く情報量が多い手順書になると、作業イメージが湧きにくくなり内容も煩雑で難解になりがちです。作業者に伝わらないと意味がないので、わかりやすくコンパクトにまとめる工夫が必要です。
また、目次やフロー図を付けておくと、読者が全体像を把握してから詳細を読み進められます。作業全体の流れや、今どの作業をしているのか、中断時はどこから再開すればよいのかがわかりやすくなる効果もあります。
注意事項を赤字にするなど、文字サイズや色味を使い分けて重要な箇所を強調するのも効果的です。
写真・イラストを活用する
文字だけでなく、写真やイラストも活用して視覚的にわかりやすくするのも効果的です。
文字だけでは伝わりにくい作業の様子も、写真や図解を加えることで直感的に理解しやすくなります。特に複雑な動作を伴う作業や、作業前後のビフォーアフターのような変化に着目させたい場合などは、視覚的な情報があることで格段に理解しやすくなるでしょう。
素材となる写真を撮影する際は、実際に作業者が見る角度を意識すると、手順書を見ながら作業する人が実作業をイメージしやすくなります。加えて、間違いやすいポイントを伝える際には、正しい状態(OK例)と誤った状態(NG例)を対比させて見せるのが有効です。
動画の活用も検討する
写真やイラストだけでなく、動画で作業手順を伝えるのも有効です。
文章や写真・イラストだけでは伝えにくい一連の動きや、細かな作業も動画なら視覚的かつ正確に伝えられます。例えば、組み立ての速度や力加減など、写真だけでは伝わりにくい”動き”を含む作業は、動画で示すと理解しやすくなります。
熟練者の手元を映した動画は、若手作業員にとって最適なお手本です。作業者の視点から撮影することで、第三者視点で見るだけではわからない繊細な動きなども理解しやすくなります。チャプター機能を使って確認したい工程だけを繰り返し視聴したり、再生速度を調整してスローでじっくり見たりできるのも動画の利点です。
また、現場や設備など作業を行う場所にQRコードを貼っておき、それを読み取るだけで動画を再生できるようにしておけば「どうするんだっけ?」と悩んだ瞬間に、作業手順を確認できるようになります。スマートグラスを装着していれば、目線を合わせて読み取るだけで該当手順の動画をハンズフリーで再生可能。両手が使えない作業中でも、その場で手順を確認できる点は、紙の手順書やスマートフォンでの動画閲覧にはない特徴です。
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まとめ
作業手順書があることで、作業の標準化が進み属人化やヒューマンエラーなどを防止しつつ、多くの製造現場で課題になっている技術継承の解決にもつながります。
手順書を作成する際は、5W1Hや専門用語を避けるといった書き方の工夫だけでなく、現場のフィードバックを受けてブラッシュアップして更新し続けることが大切です。
しかし、紙やExcelの手順書だけでは、ベテランへの作業集中や技能継承といった属人化の課題を解消しきれない場面もあります。写真や動画による可視化、QRコード×スマートグラスによるハンズフリーでの手順確認など、必要な情報を必要な瞬間に届ける仕組みを取り入れることで、新人や外国人スタッフでも早期に独り立ちできる、持続可能な現場運営に近づきます。
今ある設備を活かして、現場のDXを小規模から始めていくには、スマートグラスの導入がおすすめです。大手企業の倉庫でも活用されているリベロエンジニアの「Libero Sight」なら、ハンズフリー表示機能で安全を確保しながら作業効率と正確性を同時に高められます。
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【この記事の監修者】


株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。








