パソコンやスマホ、インターネットはもうそれなしでは生きていけないと思うほどに現代の人々にとって欠かせない存在となりました。
こんなにも生活に根差し、身近な存在になっているコンピュータですが、その成り立ちや関わってきた人たちのことを詳しく知っている人っていうのもなかなかいないのではないかなと、ふと思いました。
今回はそんなちょっとした歴史的なお話を交えつつ、筆者がまたちょっと別の理由で勝手に感謝の気持ちを伝えたいと考えている数学・暗号解読・計算機科学の研究者であるアランチューリングについて書き綴っていきます。(なんかちょっとエンジニアブログっぽいじゃない!)
コンピュータ科学の父アランチューリングのこと
IT関連のお仕事などをされている方はもしかしたら「チューリングテスト」というものをご存じの方もいるかもしれません。
チューリング・テスト(Turing test)は、ある機械が「人間的」かどうかを判定するためのテストである。これが「知的であるかかどうか」とか「人工知能であるかどうか」とかのテストであるかどうかは、「知的」あるいは「(人工)知能」の定義、あるいは、人間が知的であるか、人間の能力は知能であるか、といった定義に依存する。
wikipedia
人工知能(AI)と言えばここ数年でよく耳にするようになったので近年の技術のように感じますが、アランチューリングは1950年に『Computing Machinery and Intelligence』の中でこのチューリングテストについて書いています。そのため人工知能の父とも呼ばれているそうです。
彼はイギリスの数学者であり、暗号研究者であり、計算機科学者でもあり、そして哲学者でもあります。幅広い肩書を持っています。一言で言ってしまえば数字に関する天才。
イギリス国立物理学研究所でACE (Automatic Computing Engine) の設計を行ったり、マンチェスター大学で初期のコンピュータ Manchester Mark I におけるソフトウェア開発に従事しており、理論的にも技術的にも今日のコンピュータの誕生に大きな貢献をしたとされています。
実は高校時代は進学校の理数科で特進クラスにいたりしたりした筆者なのですが、数学担当の教師が苦虫を噛み潰したような顔になるほど数学が苦手でしたので数学とか数字とか聞くと拒否反応が出てしまうのでアランチューリングについて調べるほどに目ん玉から星が飛び出しそうな気持ちになるのですが、暗号と聞くと俄然ワクワクしてしまいます。
アランチューリングの半生を描いた映画「イミテーションゲーム」
難しそうな専門用語が好きな方は是非アランチューリングについて調べて頂きたいのですが、こんな私と同じようなそこのあなたにおすすめなのが映画「イミテーションゲーム」です。ネットフリックスなどで見ることが出来るのですが(2023年2月現在)僅か41歳で自ら死を選んだアランチューリングの半生を描いています。
第二次世界大戦中にエニグマ暗号の解読に取り組んだアランチューリンとその周りの人々を主軸に描かれたストーリーとなっていますが、彼が自ら命を断つことを選ぶに至った経緯に大きく影響しているとされる同性愛についても描かれています。(当時は、同性愛は風俗壊乱罪として違法だった)
何が本当の原因かなんて誰にも分かりはしませんが、映画では同性愛による有罪判決を受け、投獄か”治療”という名の化学的去勢(女性ホルモンの投与などの処置)の選択を迫られ、研究を続けたかった彼は化学的去勢を選び、その後に自らその命を絶った、というように描かれています。
なによりも多大な貢献をしたにもかかわらず、暗号解読という国家機密などに関わる特殊なものだったためと、違法であった同性愛、そして社交的とは言えなかった性格もあってか彼に対する政府の扱いがあまりにも酷かったというのが悲しまれます。彼は生前に大きく評価されるどころか犯罪者として世間から冷たい仕打ちにあっていたのです。
ちなみにこの映画は『Alan Turing: The Enigma』を元に描かれているとのことです。
※映画なので多少の脚色も為されているようで、完全に史実に正しく描かれているわけではないようです。
£50紙幣の顔になったアランチューリング
そんな彼の死後に彼の伝記が出版されたり、暗号解読に取り組んでいたことがようやく世間に知られるようになりました。
最近ではイギリスの新50ポンド紙幣に採用されました。
実際にはイギリスではキャッシュレスが進んでいるうえに£50紙幣を目にする機会というのはなかなかないようですが、紙幣の顔になっちゃうような凄い人なのです。
個人的に感謝の想いを伝えたくて仕方のない人物でもある
まんまと映画の語りにやられてしまったとも言えますが、筆者は彼の境遇のやるせなさにぶつけようのない憤りと悲しみを感じました。
変わった人だったのも事実のようで同性愛でなくても変人扱いされているような天才だったようですが、人と違うということがそんなにも悪いことなのか、愛する対象が同性であっただけでそんなにも罪深いのか…いろんなことを考えさせられました。
彼自身にはなんの慰めにもならないと思いますが、彼という存在が今でも多くの人に影響を与えているのだなぁと思うと生きる勇気を貰えます。
なんだかコンピュータの話から大きく生きるということ、人間ということ、そんなところまで思いを馳せてしまいます。
個人的に映画の一節があまりにも突き刺さりました。
Historian estimate that breaking ENIGMA shortened the war by two years, saving over 14 million lives.
MOVIE: The Imitation Game
エニグマ解読は戦争終結を2年以上早め、1400万人以上の命を救ったと歴史家たちは見ている。
筆者のパートナーはイギリス人ですので、アランチューリングがいなかったらもしかしたら彼は生まれなかったかもしれない、と。そう思うと感謝という言葉では表しきれない想いが溢れるんです。
自分とは何ら関係ないことだと思っていても、人は生きているだけで思いがけない場所で色んなことと繋がっています。
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