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産業用スマートグラスとは?騒音や衝撃…過酷な現場でも活用できる「仕組み」を解説

2026.01.30

カテゴリー:スマートグラスとは
スマートグラス 仕組み

生産性アップや業務効率の向上のため、スマートグラスの導入を検討しても「便利そうだけど、粉塵や騒音の激しい現場で本当に使えるの?」と、過酷な環境下で実用性があるのか疑問・不安に思われる方も多いでしょう。

本記事では、産業用スマートグラスが、なぜ現場で「信頼できるデバイス」になるのか、その仕組みを解説します。ITに不慣れな作業員でも直感的に使いこなせる理由を紐解き、現場DXの成功に役立つ理由を提示します。

産業用スマートグラスとは?

産業用スマートグラスとはメガネ型のデバイスで、レンズ部分がディスプレイとなり、作業者が見ている現実の景色にマニュアルや手順、指示内容などのデジタル情報を重ねて表示します。 カメラやマイク、センサーなどを搭載しており、現場で見えている映像や音声をそのまま遠隔の専門家へ送り、ビデオ通話のように指示を受けながら作業できます。

フリーハンドで映像の撮影や音声でのやり取りなどを行えるため、作業者は両手を自由にできるのが特徴。操作も、音声操作やジェスチャー操作などで画面を切り替えられるため、高所作業や足場が不安定な場所でも安全性を保ちやすくなります。

製造業や、建設業、物流業など幅広い産業分野で実装されており、過酷な現場環境でも耐えられるように、防水・防塵・耐衝撃性能などを備えています。

スマートグラスでできることや、企業がスマートグラスを導入するメリットなど、詳しくは下記の記事を参考にしてください。

スマートグラスの主な構成要素と仕組み

スマートグラスは、主にディスプレイやカメラ・センサー、マイク、バッテリーから構成されています。実際に自社の工場や現場などへ導入するケースをリアルに想定できるように、それぞれどのような仕組みになっているのか解説します。

ディスプレイ

スマートグラスレンズ部にあたるディスプレイは、商品によって仕組みやスタイルが異なるため、情報の表示のされ方や見え方を左右し、作業員の使い勝手に直結します。

主に以下のような種類があります。

  • 非透過方式:現実の視界を遮断して、鮮明な映像・情報を表示できるタイプ。エンタメ用途に適しますが、周囲が見えないため産業用途では限定的です。一人称での研修動画を視聴するなど、没入感が必要な場合には適しています。
  • 透過方式:現実の景色にデジタル情報を重ね、周囲を確認しながら情報を得られるタイプ。工場や倉庫などでも活用しやすく、産業用途での主流です。ただし明るい屋外では視認性が落ちるため、シェードやカバーが必要になる場合も。

また、ディスプレイの形状によって、下記の2つに大別されます。

  • 片眼タイプ:片側のみディスプレイを配置し、軽量で視界を広く担保。手元作業と情報確認を両立しやすく、遠隔支援やナビゲーションに適しています。
  • 両眼タイプ:メガネのように両目でディスプレイを見れるため、高い没入感が特徴。広い視野角により多くの情報を一度に表示できるため、シトレーニングやシミュレーションで効果を発揮します。

このように、どう情報を表示するかによっても使い勝手や適した使用方法が異なるため、どのような作業に使いたいか具体的に想定しておくと、自社の作業内容や環境にマッチするスマートグラスを選べるでしょう。

カメラ・センサー

産業用スマートグラスには、周囲の現場映像をリアルタイムで撮影して遠隔者と共有したり、QRコードや文字を自動認識して作業確認を迅速化させたりするためのカメラが搭載されています。

一部モデルではサーマルカメラにより温度分布を可視化して異常箇所の検知を支援するなど、特殊な環境や用途にも使用できるカメラが用意されていることもあります。

また、カメラ以外にも、下記のような各種センサーが動作や環境を捉えます。

  • 加速度センサー:スマートグラスの動きを検知。頭の動きを感知してジェスチャー操作を実現したり、歩行解析で疲労度を推定したり、転倒時にアラートを発したりします。
  • ジャイロセンサー:回転や角速度を計測。スマートグラスの精密な動作検知に活用されており、視線追跡によるポインタ操作や、頭の動きに応じた情報の安定表示などを可能にします。作業者の無理な姿勢継続を警告して、疲労・ケガの防止に役立てることもできます。
  • GPSセンサー:位置情報を取得し、屋外でのトラッキングやナビゲーションを強化。特定エリア進入時に手順を表示したり、危険区域で警報を出したりできます。
  • 環境センサー:温度・湿度・気圧などを監視。高温・低音や高湿度など危険な環境を感知して警告したり、粉塵濃度をチェックして空気質を管理したりできます。

このように、複数のセンサーで安全性を高めるとともに、作業効率が向上するようサポートします。

マイク

産業用スマートグラスのマイクは高性能で、装着者の声を正確に捉えます。

ハンズフリーで音声操作できるようになっているため、手が塞がる現場作業中でも、マニュアルの呼び出しや画面切り替え、遠隔支援の開始など、あらゆる操作を声だけで実行可能です。もちろん音声通話も行え、現場への指示出し・報告などにも使えます。

また、工場をはじめ騒音の大きい環境に対応するため、ノイズキャンセリング機能を備えるものも多くあります。騒音が響く会話もままならない環境下でも、クリアな音声認識・通話を実現します。音声通話も安定し、現場報告や遠隔指示をスムーズにやり取り可能です。​

一部モデルでは、聞こえた音声をリアルタイムで認識し、自動翻訳した字幕を表示することも。外国人作業員の多い現場や海外拠点などで、言語の壁を越えたコミュニケーションを支援します。

バッテリー

産業用スマートグラスのバッテリーは、本体に内蔵しつつ、着脱式バッテリーを併用する構造が主流です。連続使用時間は一般的に5~8時間程度で、例えば産業用として普及しているVuzix M400は約5~6時間稼働します。

バッテリー交換に対応したモデルを選べば、一日中ほぼ途切れることなく運用できます。​予備バッテリーを複数用意しておけば、電池残量が少なくなっても交換するだけで、連続使用時間以上に稼働時間を延ばすことが可能です。

また、ホットスワップ対応モデル(電源が入った状態のまま、バッテリー交換できる)であれば、作業を中断することなくバッテリー交換でき効率的です。

外付けバッテリーは手のひらサイズで、作業ベルトやヘルメットに固定しても動きを妨げません。橋梁点検や高所作業で充電器に戻りにくい場面でも、予備携帯により継続使用できます。

産業用スマートグラスのバッテリーについて、詳しくは下記の記事で紹介しています。バッテリーの充電にかかる時間の目安や充電方法など、詳細が気になる方は参考にしてみてください。

産業用スマートグラスが現場環境に耐えられる仕組み

産業用スマートグラスは、家庭用のスマートグラスとは違い、過酷な現場環境での使用に耐えられる仕組みとなっています。どのような環境でも使える耐久性はもちろん、作業を途切れさせないような性能になっており、現場作業に最適化されているのが特徴です。

具体的に、どのような仕組みになっているのか、4つの視点から解説します。

防水・防塵性能

産業用スマートグラスの多くは、高い防水・防塵性能を誇り、雨の中での屋外作業や粉塵舞う工事現場でも問題なく使用できる仕組みになっています。

耐久性の指標としては、防塵・防水性能を示すIP規格を確認しましょう。IPコードは、国際電気標準会議(IEC)によって定められた、電気製品の防水・防塵性能を表す規格です。「IP」に続く2桁の数字で構成され、前の数字が粉塵侵入への強さ、後ろの数字が水への強さを示します。例えばIP68と表記される場合、6級の防塵性能と8級の防水性能を備えていることになり、防水・防塵が必要な過酷な環境にも対応できます。

防塵は7等級・防水は9等級に分かれており、IP66やIP67クラスに対応したスマートグラスであれば、粉塵が多い工場や雨天の建設現場でも安定して動作可能です。

騒音環境下への順応性

産業用スマートグラスは、工場や建築現場での作業など騒音環境下でも、安定して使用できる仕組みになっています。

​例えば、騒音下でも音声コマンドに対応したノイズキャンセル性能の高いマイクを搭載したものであれば、騒々しい工場でも音声操作や通話を難なく継続できます。高速道路高架下の点検や金属加工工場のように機械音や走行音が大きい状況場所でも、遠隔支援者との通話や音声指示を途切れさせずに作業を続けられます。

さらに、骨伝導ヘッドホンを組み合わせれば、騒音下でもクリアな音声の聞き取りが可能。工場内のような、耳栓を装着して外部騒音を遮断した状態でも聞き取りやすくなります。

騒音の影響が気になる現場での作業を想定しているなら、ノイズキャンセリングによるクリアな音声通話・音声入力を行えるマイクやイヤホン・ヘッドホンは必須です。

動作可能な温度帯

産業用スマートグラスのなかには、高温・低温の環境下でも安定稼働できるよう設計されたモデルもあります。

例えば、RealWearのNavigatorシリーズは、−20℃の極寒環境から+50℃の高温作業場まで、幅広く対応。−20℃の冷凍倉庫相当の環境で行った検証では、内部結露やフリーズは発生せず、音声コマンドも含めて全機能が通常通り動作しました。センサーや電子部品は低温でも性能を維持できるよう選定され、温度変化による誤作動を抑える設計になっています。

一方で、高温環境では、真夏日の鳥取砂丘で外気温30.6℃、砂面温度53.7℃という条件のなか、カメラや通話アプリを約30分連続利用しても熱暴走せず稼働が継続しました。

このように幅広い温度帯へ対応したモデルであれば、冷凍倉庫内での作業や寒冷地の屋外点検、炎天下の建設現場、高温環境の工場など、季節や環境に左右されずに使用できます。

耐衝撃性能

高所からの落下などを想定して、耐衝撃性能に優れた仕組みになっている産業用スマートグラスもあります。​

例えば、RealWearのNavigatorシリーズは、米軍の環境試験規格であるMIL-STD-810Gに準拠しており2メートルからの落下試験に耐える耐衝撃性を備えます。MIL規格は、アメリカ国防総省が調達する装備品を対象とした品質基準で、高さや角度の異なる落下試験、振動試験、温度変化を含む複数条件で動作確認を行うものです。

MIL規格を満たす産業用スマートグラスは、軍用装備と同等レベルの耐久性を持つとみなせるため、高所の足場からの落下や作業車両からの落下といった現場で起こり得るトラブルでも、壊れにくく安定して運用できます。

耐久性が必要な環境での使用を想定している場合は、要チェックの項目です。

ITが不慣れな作業員でも使いこなせる操作の仕組み

産業用スマートグラスは、現場作業に従事する不特定多数の人が使用するため、誰しもが使いこなせるようなシンプルでわかりやすい仕組みになっています。また、作業中で手が離せない状況など、現場作業で起こり得る状況も見越した仕組みになっているのもポイントです。

ITが不慣れな作業員でも、簡単に使いこなせる操作の仕組みについて解説します。

音声によるハンズフリー制御

多くの産業用スマートグラスが音声によるハンズフリー制御に対応しており、作業員が声だけで画面操作や情報確認を行えます。

スマートグラスのマイクが作業員の発話を認識し、「ズーム」「撮影」「次のページ」などの音声コマンドをトリガーとして画面切り替えや資料表示、カメラ操作を自動で実行します。音声コマンドは画面上に候補が表示されるため、表示された単語をそのまま読むだけで操作でき、複雑な操作や独自の使い方を覚える必要がありません。

「特定の単語を話す」というシンプルな動作で操作できるので、マニュアルを細かく読み込まなくても短時間で慣れやすく、IT機器に不慣れな作業員でも日常会話に近い感覚で扱えます。作業の流れを止めずに情報参照や記録ができ、教育期間の短縮や現場へのスムーズな導入につながります。

また、手が油や粉塵などで汚れている場面や、高所作業中で手を離せない場面でも、作業姿勢を変えずに必要な手順書や図面を呼び出せるのもメリットです。

シンプルなジェスチャーでの操作

シンプルなジェスチャーで操作できるものもあり、指や手の動きをそのまま入力として使う仕組みのため、ITに不慣れな作業員でも短時間で習得しやすい方式です。

特別なボタン配置や複雑なメニュー構造を覚える必要がなく、画面上のオブジェクトを「指で触って動かす」感覚に近い操作ができます。​例えば、NTTコノキューデバイスのMiRZAでは、代表的なジェスチャーとしてつまみ(Pinch)が用意されています。つまみでは、人さし指と親指で画面上のアイコンやボタンに触れるように動かすことで対象を選択し、そのまま指を閉じた状態で動かすと位置変更やスライダー操作などが可能です。​

また、ジェスチャー操作は、寒冷地や冷凍庫内など、手袋を着用したままでも利用しやすいのも利点です。スマートフォンやタブレットのように手袋を外してタッチパネルに触れる必要がなく、音声操作のように口を開く必要もありません。厳しい寒さの環境でも暖かい防寒具を着けたままマニュアル閲覧やビデオ通話による遠隔支援を行えるため、設備保守やトラブル対応の現場でも活用しやすい操作方式です。

QRコード・バーコードの読み取り機能

産業用スマートグラスに搭載されたカメラは、QRコードやバーコードの読み取りにも使え、目線を向けるだけで自動スキャンします。

従来のようなスマホやハンディターミナルなどの端末操作が不要で、IT初心者でも直感的に扱えます。例えば、 Vuzix M400は1,280万画素カメラとCortexDecoderソフトを組み合わせ、40種以上のコードを高速・高精度で読み取り可能です。破損や汚れ、暗所でも99.9995%の信頼性で動作します。

下記のような使い方が可能になり、さまざまな面で作業負担を軽減できます。

  • 倉庫作業:棚の商品に視線を合わせるだけで照合・検品が完了する
  • 製造ライン:機器のQRコードをスキャンすると、PDFマニュアルや動画手順がレンズに表示される
  • 配達業務:荷物スキャンをハンズフリーで実現し、手が塞がっていても作業を進められる

こうした物流業や製造業におけるDXは着実に進んでおり、既に業務効率化や生産性の向上に寄与しています。リベロエンジニアでは、目線を動かすだけで、倉庫業務がサクサク進む「Libero Sight(リベロサイト)」を開発。倉庫DXを検討されているなら、ぜひご覧ください。

LIXILの工場・倉庫の“ムダ”をスマートグラスで削減した事例

倉庫DX リベロサイト

リベロエンジニアでは、LIXILの粕川工場の入出庫業務を効率化するスマートグラスシステムを共同開発し、生産性向上と負担軽減を両立しました。

LIXILの粕川工場では、下記のような課題がありました。

課題
  • 手作業の発生:調達先ごとに納品伝票の様式が異なり、入庫登録に手作業が必要だった
  • 作業効率の低下:ピッキング時に両手がふさがり、出庫登録がスムーズに行えなかった
  • 時間ロス:広大な倉庫内で、作業者が棚や在庫の場所を探すことに時間を要していた

このような工場・倉庫での“あるある”を産業用スマートグラスの導入により解決しました。作業指示を視界に投影しピッキング精度と速度を大幅向上させるなど、現場の使い勝手を追求したことで、ピッキングの精度とスピードを飛躍的に向上させて生産性向上に貢献。共同特許も出願中で、今後は汎用サービス「Libero Sight(リベロサイト)」として物流現場のDXを推進します。

まとめ

産業用スマートグラスは、優れた防水・防塵・耐衝撃性能により、過酷な現場環境でも安定稼働するデバイスです。音声やジェスチャーによる直感的なハンズフリー操作に対応しており、ITに不慣れな現場作業員でも迷わず使いこなせるのが大きな特徴です。

遠隔支援や情報のリアルタイム表示を通じて、製造や物流現場のミス削減と生産性向上を両立します。リベロエンジニア×LIXILの事例のように、現場DXを成功に導くための実用的なツールだといえます。

製造業や物流業、建設業など、業務の非効率さや人員不足などに悩まれる方は、ぜひ気軽にご相談ください。

この記事の監修者

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平

元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。

高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。

この記事を書いた人

リベロエンジニアの「今」を届けるストーリーテラー。サイト運営から取材、執筆までをワンストップで手掛ける。 単なる情報発信にとどまらず、エンジニア一人ひとりの背景にある物語を丁寧に紡ぎ、サービスの魅力と「リベロらしい働き方」を世に広めるべく奔走中

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