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スマートグラスでクリーンルームを効率化。ISO規格の基礎から運用まで解説

2025.12.24

カテゴリー:事業

製造業、製薬、半導体、食品、航空宇宙――。高度な衛生管理と品質管理が求められる「クリーンルーム」において、作業効率の向上は常に大きな課題です。

近年、現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引するデバイスとして注目されているのが「スマートグラス」です。しかし、特殊な環境であるクリーンルームへの導入には、技術的なハードルや特有の制約が数多く存在します。

「どのデバイスなら持ち込めるのか?」 「規格を通った後、現場でどう使いこなせばいいのか?」

この記事では、スマートグラスをクリーンルームに導入するために必要な「ISO規格」の知識、推奨デバイスの比較、そしてデバイスを「強力な武器」に変えるための運用ソリューションについて、解説します。

クリーンルームの「3つの制約」とスマートグラスの親和性

スマートグラスの選定基準について触れる前に、なぜ今クリーンルームでスマートグラスが求められているのか、その背景にある「現場での制約」を整理します。

「情報」の持ち込み制限

クリーンルーム内では、紙のマニュアルや図面の持ち込みが発塵(はつじん)リスクとして避けられています。発塵とは、機械の動作・摩耗・人の動きなどによって、微細な粒子(ほこり・粉じん)が空気中に放出される現象のことを指します。

それらを防ぐため、ラミネート加工された紙を持ち込むこともありますが、紛失や劣化のリスクがあり、情報の更新も容易ではないとされています。スマートグラスを使えば、視界の中にデジタルデータとして図面や手順書を表示できるため、物理的な持ち込みをゼロにできると期待されています。

「人」の入退室コストとタイムロス

装置のトラブルや高度な判断が必要な際、外部の熟練者やメーカー担当者を呼ぶには、防塵服への着替え、エアシャワー、徹底した除菌が必要です。この「入退室」だけでかなりの時間を費やすことも珍しくありません。

ここでスマートグラスによる「遠隔支援」を活用すれば、外部の専門家が現場の作業者と同じ視界を共有し、事務所や自宅からリアルタイムで指示を送ることが可能になります。

「記録」の負荷と正確性

クリーンルーム内でのメモ取りは困難です。手袋をした状態でのタブレット操作も反応が悪く、かといって記憶に頼ればミスにつながることも。スマートグラスなら、音声操作で写真や動画を撮影するなどすれば、そのままサーバーへ保存することができます。

これにより、「誰が、いつ、どのように作業したか」というエビデンスを正確に残せるようになります。

【徹底解説】クリーンルーム対応スマートグラスの選定基準

クリーンルームへの持ち込みを検討する際、まず確認すべきは「規格」です。そこで重要になるのが、冒頭で触れた「ISO規格」です。

ISO 14644-1(空気清浄度規格)とは

クリーンルームの清浄度は、国際規格である「ISO 14644-1」によって定義されています。スマートグラスなどの電子機器を導入する場合、そのデバイス自体が稼働中にどれだけの微粒子を放出するかをテストし、認定を受けている必要があります。

特に注目すべきデバイスは、Vuzix Corporationが発表したM400スマートグラスの事例です。同製品は、浮遊粒子の純度テストにおいて「ISOクラス2」という極めて高い認証を取得しました。

ISOクラス2の定義

DIN EN ISO 14644-1」によれば、1立方フィートの空気あたり1分間に、0.1µmの粒子を最大8個、0.2µmの粒子を最大3個しか放出しないことを意味します。

このレベルの認定は、未認証のデバイスに対して圧倒的な競争優位性を持ち、電子機器や医薬品、太陽光、宇宙防衛産業といった「塵(ちり)一つ許されない環境」での使用を公式に可能にします。

デバイスだけでなく「付属品」にも注目

意外と見落としがちなのが、ストラップやバンドなどの「付属品」です。CAD Japanの記事でも指摘されている通り、デバイス本体が規格対応していても、標準の布製ストラップをそのまま使うことはできません。下記のデバイスを参考にしてください。

RealWear HMT-1本体の性能は高いが、クリーンルームで使用するには専用の「クリーンルーム用シリコンバンド」への付け替えが必須。
(※)クリーンルーム用シリコンバンドはRealWear HMT-1専用のオプション
HoloLens 2 Industrial EditionISO 14644-1 Class 5-8のクリーンルーム規格に対応。清浄な環境での使用を前提とした設計がなされている

クリーンルーム向け主要スマートグラス徹底比較

ここでは、クリーンルームで使用できる代表的な3機種の特性を比較します。

Vuzix M400:最高クラスの清浄度と汎用性

写真は参照元記事より引用

Vuzixテクノロジーの強みは、その圧倒的な認証実績にあります。大きな強みは、ISOクラス2認証されていること。片眼タイプで軽量なため、長時間の点検や製造ラインでの作業に適しています。

また、外部の専門家がクリーンルームに物理的に入らずとも、現場の作業員を通じて重要なプロセス情報を送受信可能です。これにより、時間を節約し、室内の人数を最小限に抑えることができます。

参照元:Vuzix:産業用ARメガネの先駆者|クリーンルームの環境とARテレプレーティング用のスマートグラス

HoloLens 2 Industrial Edition:高度なMR(混合現実)体験

マイクロソフトHPより引用

マイクロソフトが提供するこの産業特化モデルのスマートグラスは、複雑な組み立て工程に適しています。大きな強みは、ISO 14644-1 Class 5-8が対応していること。両眼透過型で、3Dモデルを作業対象に重ね合わせて表示するMR機能が強力です。

ただし、デバイス自体がやや大型で重いため、フード(頭巾)を被った防塵服との干渉や、装着感の調整にノウハウが必要だとされています。

RealWear Navigator® 500/520:進化した現場用ウェアラブル

RealWear Navigator® 500/520紹介動画より引用

「完全ハンズフリー」を謳うスマートグラスのRealWearは、保守点検の現場で強い支持を得ています。「RealWear Navigator® 500/520」は、長らく現場を支えた「Realwear HMT-1」の後継機であり、現在同社が展開する主力シリーズです。

HMT-1の操作性を引き継ぎつつ、さらにカメラ性能やディスプレイ(HyperDisplay)が向上。マスク越しでも正確に反応する強力なノイズキャンセリング・音声認識機能が大きな強みです。

今回の本題である、クリーンルームも対応。デバイス本体だけでなく、標準の布製ヘッドバンドを「クリーンルーム用シリコンバンド(非多孔質ストラップ)」に変更することで、発塵を抑えた運用が可能になります。ただし、モジュール式で部品の取り外しが可能なため、各パーツの固定状況や清掃のしやすさを事前に現場の安全基準と照らし合わせることが重要になります。

クリーンルーム導入の「運用の課題」3つ

スマートグラスなどのDX導入において、多くの企業が失敗する原因は「導入して終わり」にしてしまうことです。特にクリーンルームでは、特有の「3つの運用の課題」が立ちはだかります。

ソリューションを作るリベロエンジニアは、これらの課題に対してエンジニアリングの視点から解決策を提示します。

ネットワークインフラの課題:映像の遅延を防ぐ「通信設計」

課題:クリーンルームは電波を遮断しやすい建材(金属パネル等)で囲まれていることが多く、Wi-Fiが不安定になりがちです。動画による遠隔支援中に映像が止まることは、現場作業の致命的な中断になってしまいます。

解決の糸口: リベロエンジニアでは、単にアプリを入れるだけでなく、現場の電波環境に応じた通信プロトコルの最適化や、低帯域でも滑らかに映像を届ける独自エンコード技術などを検討します。

塵服とのインターフェース:現場の「ストレス」を消すUI/UXデザイン

課題:マスク着用による音声の「こもり」は、スマートグラスの音声認識精度を著しく低下させます。また、防塵ゴーグルとスマートグラスの干渉は、視認性を悪化させ、装着そのものがストレスとなることもあるでしょう。

解決の糸口: リベロエンジニアは、マスク越しでも認識しやすいキーワードの選定(音声コマンドのカスタマイズ)や、ノイズキャンセリング設定の最適化など、クリーンルームを前提としたUIを開発するなど、作業者の負担を最低限に抑える提案をいたします。

消毒と耐久性:デバイスの寿命を延ばす「運用管理」

課題:クリーンルームではアルコール等による頻繁な除菌が必須ですが、これは精密機器であるスマートグラスの樹脂劣化や故障を招くリスクになると言われています。

解決の糸口: 耐薬品性の高いモデル(Vuzix M400やHoloLens 2 Industrial Edition等)を選定することが前提ですが、リベロエンジニアでは、「消毒可能な保護カバーの活用」や、故障リスクを最小化する独自の清掃マニュアルの作成を支援します。

また、故障を前提とした予備機の運用体制や、迅速な代替機交換スキームを構築することで、現場の手を止めない「持続可能なDX」をサポートします。

リベロエンジニアが提供する「業界・人に寄り添うソリューション」

ここで、リベロエンジニアの役割についてお話しします。私たちは、お客様の現場課題を解決する「システムインテグレーター」です。 リベロエンジニアの強みは、「エンジニアが現場に深く入り込み、使う人のストレスを取り除くソリューションを作る」ことにあります。

現場に合わせたソフトウェアのカスタム開発

優れたハードウェアがあっても、標準のアプリだけではお客様独自の生産管理システム(ERPやMES)と連携できません。リベロエンジニアは、現場に合わせたカスタム開発を提案いたします。

豊富な実績と汎用化された解決策

また、リベロエンジニアは、住宅設備・建材の国内最大手メーカーであるLIXIL様と共同で工場・倉庫を効率化するスマートグラスシステムを開発するなど、実際の現場で磨かれた技術を持っています。

これらの経験を汎用化したソリューションが「Libero Sight™(リベロサイト)」です。 倉庫や工場のDX、さらにはクリーンルームという極限環境においても、単なる遠隔支援を超えた「現場作業のデジタルツイン」を実現します。

ぜひ、クリーンルーム案件も、リベロエンジニアにお任せください。

スマートグラスの未来:バッテリーレスとさらなる軽量化

スマートグラスは現在も進化を続けています。デバイスで気になるのがバッテリーの持続時間。以前、スマートグラスのバッテリー持続時間についての記事で解説した通り、現在は5〜8時間の稼働が一般的。しかし、将来的には「エネルギーハーベスティング(環境発電)」によるバッテリーレス化も期待されています。

クリーンルームにおいては、技術が実現すれば、デバイスはさらに軽量化され、メガネと変わらない感覚で24時間稼働できるようになるかもしれません。

リベロエンジニアは、こうした最新技術の動向を常にキャッチアップし、お客様に「今、最も投資価値のある構成」を提案し続けます。

まとめ

クリーンルームへのスマートグラス導入は、単に最新ガジェットを導入することではありません。特殊な環境下での制約をデジタルで解消し、現場のパフォーマンスを最大化するための「最適化プロセス」そのものです。今回のポイントをまとめると、以下の3点に集約されます。

ISOクラス2認証を受けた信頼性の高いデバイスを選ぶこと
・シリコンバンドなどのクリーンルーム専用オプションを適切に組み合わせること
・そして何より、現場の運用に合わせたソフトウェアソリューションを構築すること

この3点が揃って初めて、スマートグラスは真の価値を発揮します。

リベロエンジニアには、製造現場を熟知したエンジニアが多数在籍しています。デバイスの選定から、補助金を活用した導入計画、そして現場の作業者に「これは便利だ」と言わせる独自のアプリ開発までご提案します。

「どのデバイスが合うか」ではなく、「現場で何を実現したいか」を、ぜひ私たちにお聞かせください。

構成/リベロエンジニア編集部

【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平

元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。

高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。

Xのフォロワー数は2.4万人

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