教育現場が「スマートグラス」で変わる。学校授業、医療、バリスタ研修まで…最新の現在地
2026.02.06
教育現場と言えば、黒板を前にした一斉授業や、分厚い紙のマニュアル、あるいは近年ではPCの画面越しの動画視聴が主流でした。しかし、これらには共通の課題があります。それは、学習者が「三人称視点(客観的)」でしか情報を得られないという点です。
ここ数年にかけて、教育現場では劇的な変化が訪れています。その中心にあるのが「スマートグラス」です。情報をただ「見る」のではなく、現実の世界に情報を「重ねる(AR)」、あるいは指導者の視点を「共有する」ことで、教育は「知識の伝達」から「体験の共有」へと進化しました。
本記事では、学校教育から最先端の医療教育、さらにバリスタ現場まで、スマートグラスが教育現場にもたらした衝撃の現在地を徹底解説します。
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教育におけるスマートグラス導入の3大メリット
なぜ今、あらゆる教育現場がこぞってスマートグラスを採用しているのか。そこには従来のデバイスでは成し得なかった3つの革命的なメリットがあります。
「完全ハンズフリー」がもたらす実践力の向上
最大の利点は、両手が自由に使えることです。紙などの手元にあるマニュアルを確認するために作業を止める必要がありません。スマートグラス越しの視界の端には常に教わることが表示されている状態で手を動かせるため、身体が覚えるスピードは飛躍的に向上しやすくなります。
「一人称視点」により、指導者の体験が伝わりやすい
スマートグラスというデバイスは視覚を最大限に使えるのも大きなメリット。指導者の一人称視点を生徒が「自分事」として体験できるからです。言葉や手本だけでは伝わりきらなかった細かなニュアンスも、視覚を通してダイレクトに体感できるため、習得スピードが劇的に向上します。
また、逆に指導者が生徒の視線を遠隔で追い、どのようなことにつまづいているのか察知できる点もスマートグラスならでは。この「視点の同期」は、言葉による説明を100回繰り返すよりも遥かに深い理解と納得感をもたらします。
AR(拡張現実)による「没入型」学習
例えば、物理現象や分子構造など、目に見えない抽象的な概念を、スマートグラスなら空間に3Dモデルとして出現させることができます。教科書の図解を「眺める」のではなく、空間にあるモデルを「覗き込む」体験が、学習者の好奇心と理解度を最大化します。
【学校の授業】ARで授業を学ぶ「教科書が飛び出す」新しい教室

昨今の学校教育では、スマートグラスによって「教室」という概念そのものが拡張されています。
ARだからこそリアル世界を体験できる
例えば地学の授業を例に出します。生徒がスマートグラスをかけると、机の上に小さな「地球」が出現。マントルの対流やプレートの動きが、目の前でリアルな3Dモデルとして展開されます。
歴史にそのまま立ち会える
社会科見学で史跡を訪れた際、スマートグラス越しには「かつての姿」が実寸大で復元されます。単なる「説明を聞く」授業から、「その場に立ち会う」体験へと変わることで、知識の定着率は圧倒的に高待っています。
【医療教育】順天堂大学:スマートグラスによる「振り返り学習」の革命
医療という「ミスが許されない」教育現場において、スマートグラスは単なる補助具を超えた役割を担っています。
順天堂大学が数年前から取り組んでいるのは、スマートグラスを活用した「振り返り学習(デブリーフィング)」の高度化です。
参考資料:卒後の臨床看護技術教育における革新的スマートグラスを取り入れたデジタル教育ツールに関する共同研究開発契約を締結
「点滴準備」のミスを防ぐARガイド
新人の看護師が最初につまずきやすく、かつ医療安全上、極めて重要な「点滴静脈内注射」の準備にスマートグラスが活用されます。グラスを装着すると、目の前に手順の画像やテキストが提示され、音声合成で読み上げが行われるため、習得しやすくなります。
自学自習と「振り返り学習」の高度化
このシステムの最大の特徴は、「一人ひとりのペースで反復練習ができる」点にあります。指導者がつきっきりでなくても、スマートグラスが正しい手順をガイドし、同時に学生の動きを記録。後で指導医と一緒に映像を見返しながら、「このタイミングでの確認が漏れていた」といった精緻なフィードバックを行う「振り返り学習(デブリーフィング)」が、教育効果を最大化させています。
このように、新人個別の習得度を可視化し、病院全体での技術水準の底上げ(質の保証)と、指導側の効率化を同時に実現しています。
【スポーツ指導】バレーボールチーム:物理的距離をゼロにする遠隔指導

スポーツの地域格差や指導者不足を解消する手段として、女子バレーボールチーム「岡山シーガルズ」が取り組む最新の遠隔指導モデルは、極めて実用的かつ革新的です。
2024年12月16日、岡山シーガルズは岡山市内の藤田総合スポーツクラブを対象に、スマートグラス「VUZIX M400」を活用した遠隔指導の実証実験を実施しました。
参照記事:【ビュージックスジャパン協働】スマートグラスを活用したバレーボール遠隔指導実証実験
プロ選手の視点とプロジェクターの融合
指導者側ではコーチがスマートグラスを装着し、元選手による実演のポイントを伝送。その映像を体育館の壁面にプロジェクター投影し、選手たちはプロの動きを等身大で確認しながら練習に打ち込むことができます。
特筆すべきは、大がかりな撮影機材やオペレーターを介さず、「グラスとPC、Zoom」という最小単位の環境で実施した点です。スマホよりも少ない機材で、対面に近い臨場感のある指導を実現しました。
指導者不足に悩む地域教育にも期待
移動コストを抑えつつトップアスリートの知見を届けられるこの仕組みは、指導者不足に悩む自治体や、部活動の地域移行を進める学校現場にとって、有力なソリューションとして期待されています。
【飲食研修】バリスタ研修:感性を「視線ログ」で継承する

飲食業界、特にプロの繊細な手技が求められるバリスタの教育現場でも、スマートグラスは革新的な役割を果たしています。
参照記事:バリスタ実習における「スマートグラス」を活用した最新の授業風景をご紹介します!
言語化が難しいバリスタの技術取得はスマートグラスと好相性
美味しいコーヒーを淹れるプロセスには、言語化が極めて難しい「暗黙知」が詰まっています。お湯を落とす位置やスピード、ポットを傾ける繊細な角度。そして何より重要なのが、抽出中の「粉の膨らみ」や「色の変化」を、どのタイミングで、どれくらいの深さで観察しているかという「視線」の動きです。
最新の研修では、熟練バリスタがスマートグラスを着用してドリップを行い、その一人称映像と視線のトラッキングデータを記録します。新人はその映像を自分のスマートグラスに投影し、師匠が「どこを見て、いつ注ぎを止めたか」を、自身の視界に重ね合わせることで疑似体験します。
新人バリスタの心理的ハードル低下にも
特に飲食の世界では、これまで「感覚を盗め」としか言えなかった抽象的な指導が、「このタイミングで、この場所を見る」という具体的な視覚情報へとアップデートされました。これにより、研修期間の大幅な短縮だけでなく、店舗間での味のバラツキを抑え、新人が自信を持ってカウンターに立てるまでの心理的ハードルを下げることにも成功しています。
考察:あらゆる「仕事現場」に必要なスマートグラスの視点
教育や指導が必要なのは、学校現場だけではありません。むしろ、私たちの日常を支えるあらゆる「仕事現場」において、スマートグラスによる教育DXは急務となっています。
特に顕著なのが、物流現場です。 EC市場の拡大に伴う物量の増加に対し、深刻な人手不足と指導者不足に直面している物流業界では、すでにスマートグラスの導入が急速に進んでいます。広大な倉庫内でのピッキング作業において、スマートグラス越しに「どの棚の、どの商品を、いくつ取るか」をARで表示させることで、未経験者でも初日から熟練者並みのスピードで作業が可能になります。
「教える人」がいなくても、デバイスが「教え、導いてくれる」。この仕組みは、製造、保守点検、建設など、あらゆる産業界の課題解決の糸口となっています。スマートグラスは、単なる効率化ツールではなく、技術と経験を誰にでも開かれたものにする「教育の民主化」の鍵なのです。
まとめ:リベロエンジニアが提案できる現場の課題解決

リベロエンジニアでは、こうした「現場の課題」を解決するために、自社プロダクトである「Libero Sight™(以下、リベロサイト)」を開発しました。
リベロサイトは、もともと倉庫内作業の最適化を目的としたソリューションとして誕生しましたが、その汎用性は物流業界に留まりません。今回ご紹介した医療やスポーツ、教育の事例が示すように、視覚情報の共有とガイド機能は、あらゆる現場の「教える・学ぶ」を効率化します。リベロエンジニアでは、倉庫ソリューションで培った知見を活かし、様々な現場でのスマートグラスの活用を期待しています。
リベロエンジニアは、スマートグラス活用に加え、教育支援、遠隔作業サポート、DXの伴走支援など、物流業界に限らず、現場の課題に応じた具体策をご提案いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
<構成/リベロエンジニア編集部>
\リベロエンジニアが開発した倉庫向けスマートグラスDX/
