物流・倉庫DXスマートグラス導入で成功した企業7例。導入のステップも解説
2025.10.17
物流・倉庫現場では、スマートグラスの導入によって作業効率向上や人手不足の緩和を実現する企業が増えています。ピッキング指示のAR表示や、遠隔支援による熟練者ノウハウの共有など、現場のデジタル化を力強く後押しする手段として注目が高まっているのです。
一方で、「実際に成功している企業は?」「導入は何から始めればいい?」という疑問を抱える方も多いでしょう。
本記事では、国内外の成功事例を紹介しつつ、スマートグラス導入を成功に導くためのポイントと実践ステップを分かりやすく解説します。
\リベロエンジニアが開発した倉庫DXソリューション!/
スマートグラスとは?——物流でも効く“ハンズフリー表示”の力

スマートグラスは、視界の端に情報を重ねて表示できるメガネ型ウェアラブルデバイスです。音声・カメラ・ネット接続を備え、現場にいながら指示・チェックリスト・位置情報などをハンズフリーで参照できます。
主な活用領域
・製造:作業マニュアルの表示、検査工程の支援
・医療:遠隔診療・手術支援
・物流・倉庫:ピッキング作業のナビゲーション、検品作業の効率化
・建設・保守:現場と遠隔オフィスをつなぐリアルタイム支援
特に物流では、ピッキングリストや作業指示をグラス上に表示しながら移動・作業できるため、手元端末の操作時間を削減し、作業スピードと正確性の向上が期待されています。
導入メリット
スマートグラスを活用することで、現場作業にさまざまなメリットが生まれます。
・作業効率の向上:指示書を見返す・端末を操作する時間が減り、移動動作もスムーズに
・教育・トレーニングの簡略化:視覚的なナビゲーションで、未経験者でも短期間で作業を習得可能
・人手不足対策:熟練者のノウハウを遠隔支援で共有でき、少人数でも現場が回しやすくなる
・リアルタイム共有:映像と音声で本社・遠隔地と現場をつなぎ、トラブル対応も迅速化
国内・海外の物流DX×スマートグラス成功事例

スマートグラスは国内外で多くの企業が採用しています。他社の成功事例を知れば、自社の導入のヒントを得られるでしょう。成功事例として、下記の取り組みを紹介します。
佐川グローバルロジスティクス × エピソテック
佐川グローバルロジスティクス(SGL)は、倉庫作業の効率化と教育プロセスの高度化を目的に、AR/MRアプリ開発企業のエピソテックと共同でスマートグラス導入の実証実験を実施しました。対象は、埼玉県久喜市・久喜菖蒲営業所の約400坪エリア(2024年1月〜3月)。
作業者がスマートグラスを装着すると、視界上に作業手順・注意点・移動経路がARで重畳表示され、紙マニュアルや口頭説明を減らし、作業中の“迷い”を解消。エピソテックの「Dive」を活用し、現場スタッフが自分たちでARコンテンツを更新・運用できる体制も構築しました。
結果として、教育時間の短縮やミスの軽減を実現。今後はDiveの機能強化と他拠点展開を見据え、運用を広げていく方針です。
エプソン(MOVERIO)

セイコーエプソンは、自社開発のスマートグラス「MOVERIO(モベリオ)」を活用し、物流を含む現場業務の効率化を推進しています。MOVERIOは視界に作業手順や確認事項を表示でき、両手を使いながら正確な作業が可能です。
物流領域では、倉庫作業や検品、設備保守、輸送拠点での遠隔支援などに導入が進み、作業時間短縮や人材教育の効率化に寄与しています。例えば、西部ガス長崎工場では手順のAR表示によって教育・安全確認を効率化、UDトラックス道東では保守作業の遠隔支援でトラブル対応の迅速化を実現しました。
エプソンは開発企業としてだけでなく、自社でも物流関連業務に活用しており、日本におけるスマートグラス物流活用の先駆的存在です。
出典:エプソン
DHL(Vision Picking)

DHLは、倉庫のピッキング業務で業務効率と精度の向上を狙い、AR技術とスマートグラスの組み合わせによる「Vision Picking」を導入しました。視界に商品情報・棚番号・数量・最短ルートを表示し、紙やハンディ端末の確認を減らすことで、ハンズフリーで作業を進められます。
オランダ倉庫での初期実証では最大25%の効率化を記録。複数拠点でのパイロット運用を経て、平均約15%の生産性向上を確認しました。Google GlassやVuzix製グラス、TeamViewer Frontlineなどを組み合わせ、WMS連携とKPI管理を標準化。グローバル展開が進行中です。
PoC → 標準化 → 横展開 → 現場改善の流れが数字としても再現されています。
出典:DHL
NEC(物流・医療現場)

NECは、情報通信技術を軸に製造・医療・物流など多分野でスマートグラス活用を推進。倉庫や部品ピッキング現場でAR手順・位置情報をリアルタイム表示し、作業者は視線を外さず両手を使って作業可能です。
NECネッツエスアイのsDOC埼玉センターでは、独自UI「ARmKeypad」を組み合わせ、部品取り出し作業時間を18.2%削減。医療分野では、東京女子医科大学東医療センターの薬剤部で1日300件の処方で取り違いゼロを達成しました。
視線移動を最小化しつつ、効率と安全性を両立させた事例です。
出典:NEC
オプティム(遠隔支援ソリューション)

システム開発・販売をするオプティムは、スマートグラスと独自の遠隔支援プラットフォームを組み合わせ、ナレッジ共有とトラブル対応時間の短縮を実現。現場映像をリアルタイム共有し、熟練技術者が指示・マーキング・音声で遠隔支援します。
これにより、トラブル解決のリードタイムを短縮し、移動コストを削減。専用アプリ不要でスモールスタートが可能な点も特長です。
ウォルマート
アメリカに本部を置くスーパーマーケットチェーンのウォルマートは、店舗と物流の両面でスマートグラスを活用。特に在庫探索・補充・棚割りで効果を上げています。ARにより対象商品の位置を視覚的に表示し、探索時間を平均2分30秒→42秒に短縮。棚間移動や紙・端末確認といった“非付加価値時間”を大幅に削減しました。
在庫精度や欠品検知にも好影響を与え、倉庫と店舗の両輪で運用を拡大。UX(視認性・装着感・バッテリーなど)を細かく検証し、現場で使われ続ける仕組みを作っています。
チャンギ国際空港
アジアのハブ・チャンギ国際空港では、荷扱い・機内食搬入・地上支援など多様な現場業務でスマートグラスを導入。搬送先・積載位置・手順を視界上に表示し、作業速度と精度を同時に高めました。
管制室・バックオフィスと現場をリアルタイムで連携し、トラブル対応の初動を短縮。多部署・多工程環境で共通の“見える化レイヤー”として機能し、物流センターにも応用可能な好例です。
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スマートグラス導入のポイント4つ

スマートグラスの導入は、時間もコストもかかる取り組みのため、「失敗したくない」「しっかり成果を出したい」と考える企業も多いでしょう。
あらかじめ導入成功のポイントを押さえておけば、最短ルートで投資コストを回収し、現場の業務改善を着実に進めることができます。
ここでは、スマートグラス導入を成功させるための4つのポイントを紹介します。
① 自社の課題を明確にする
スマートグラス導入の第一歩は、自社の現場課題を正確に把握することです。
まずは現状の業務フローを見直し、作業の属人化や紙マニュアル依存、ピッキング作業の非効率、人手不足などが生じている工程を洗い出しましょう。現場担当者へのヒアリングを丁寧に行うことで、普段は表に出にくい不満や改善ニーズも明らかになります。
課題を明確にすることで、スマートグラスを「どの工程に」「どんな目的で」導入すべきかが具体的に見えるようになります。社内関係者との認識共有もスムーズになり、導入プロジェクト全体の合意形成が進みやすくなります。
② 導入の目標を設定する
課題を洗い出したあとは、具体的で測定可能な目標(KPI)を設定しましょう。
数値目標を定めることで、導入効果の可視化やプロジェクトの進捗管理が容易になります。
例えば、スマートグラス導入では以下のような目標設定が考えられます。
- ピッキング作業時間を20%短縮する
- 作業ミスを半減させる
- 新人教育にかかる時間を30%削減する
さらに、目標達成の期限を設定することで、導入後の効果検証や改善サイクルも回しやすくなります。
③自社に合ったスマートグラスとシステムを選定する
スマートグラスといっても、機能や対応する業務領域は製品によってさまざまです。
自社の課題と導入目的を踏まえて、最適なデバイスとソフトウェアを組み合わせることが成功のカギです。
例えば、以下のように用途別に選定することで、導入効果を最大化できます。
| 用途 | 技術・機能 | 得られる効果 |
| ピッキング作業 | AR表示+WMS連携 | 作業時間の短縮、ミス削減 |
| 教育・マニュアル | ARマニュアル/動画表示 | 新人教育の効率化 |
| 遠隔支援 | カメラ映像共有・音声通話 | トラブル対応時間の短縮 |
| 設備点検 | センサー連携・チェックリスト表示 | 作業標準化と記録の自動化 |
また、スマートグラス単体ではなく、WMS(倉庫管理システム)や遠隔支援ソフトなどと連携させることで、業務全体のDXを進めやすくなります。
④ スモールスタートで導入し、段階的に拡大する
スマートグラス導入は、小規模なテスト導入(PoC)から始めることが重要です。
いきなり全社展開・大規模導入を行うと、現場の混乱や運用課題の洗い出し不足によって失敗するケースもあります。
まずは一部の倉庫や工程、限られた作業チームなどで試験的に運用し、効果や課題を検証します。得られたデータやフィードバックをもとに運用ルールやマニュアルを整備し、徐々に対象範囲を広げていくことで、リスクを抑えつつ着実に浸透させることができます。
スモールスタートによって社内の抵抗感も軽減され、「導入したけれど使われない」といった失敗も防ぎやすくなります。
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スマートグラス導入を成功させる6つのステップ

スマートグラスを活用した業務改革を成功させるには、正しい導入ステップを踏むことが重要です。
導入の流れをしっかり押さえることで、余計なコストや手戻りを防ぎ、現場での効果を最大化できます。
ここでは、スマートグラス導入を成功させるための6つのステップを紹介します。
① 課題抽出および社内合意形成を行う
スマートグラス導入の第一歩は、現場の業務プロセスにおける課題を明確にすることです。
まずは倉庫やピッキング、検品、教育といった各業務を丁寧に分析し、非効率な工程や属人化している作業、紙マニュアル依存などの課題を洗い出しましょう。
この段階で、経営層と現場担当者の両方を巻き込み、課題や改善の方向性を共有することが重要です。初期からキーパーソンを関与させることで、導入への理解と協力体制を築きやすくなります。
② 導入計画を策定する
課題を明確にしたら、スマートグラス導入の具体的な計画を策定します。計画には、以下の要素を盛り込みましょう。
- 導入対象となる業務・工程の選定
- 使用するスマートグラスやARソフトの検討
- 必要な人員・予算の確保
- 導入スケジュールと検証期間の設定
特に、デバイス選定は重要なステップです。最新のスマートグラスには、ARによるピッキング支援や遠隔作業支援など多様な機能があり、業務内容に合わないものを選ぶと十分な効果が得られません。他社事例や最新の市場動向を参考に、自社の課題に最適な構成を見極めましょう。
③ 導入支援企業と連携する
スマートグラスの導入・運用には、AR技術や現場オペレーションに精通した企業との連携が大きな助けになります。
ハードウェア・ソフトウェアの組み合わせ、現場への導線設計、検証プロセスなどは専門的なノウハウが必要です。
支援企業を選定する際は、物流・製造業界での導入実績があり、スモールスタートから本格展開まで一貫して支援できるベンダーを選ぶとよいでしょう。リベロエンジニアでは、少数精鋭のエンジニアチームが、要件整理からシステム構築、運用定着まで柔軟かつスピーディに支援しています。
④ 補助金の利用を検討する
スマートグラス導入は、初期費用(デバイス購入・システム開発・運用設計)がかかるため、補助金や助成金の活用を検討するのも有効です。
以下のような制度が活用対象となるケースがあります。
- IT導入補助金
- 中小企業省力化投資補助金事業
- 物流施設におけるDX推進実証事業 など
補助金をうまく活用すれば、初期投資を抑えながら導入を進められます。リベロエンジニアでは補助金申請のサポートも行っており、要件に合った制度の選定や書類作成の支援も可能です。
⑤ 一部の部署・業務で導入する
スマートグラスは、いきなり全社展開するのではなく、まずは一部の業務・部署から始めるスモールスタートが成功の鍵です。
初期導入は、ピッキングや教育、検品といった比較的導入ハードルが低く、効果が分かりやすい業務から始めるとよいでしょう。
小規模な現場で実証を行い、操作性や通信環境、作業フローとの適合性などを検証します。実際に効果や課題を把握することで、次の展開ステップに向けた改善計画を練りやすくなります。
⑥ 全社導入を進めつつ、継続的に改善する
スモールスタートで成果が確認できたら、段階的に全社展開へ移行します。
この段階では、従業員への研修やマニュアル整備を行い、現場全体にスマートグラスの運用を定着させることが重要です。
スマートグラス導入は一度で終わりではなく、継続的な改善と運用アップデートが欠かせません。業務環境や技術の進化に合わせて設定やシステムを見直し、現場からのフィードバックを反映させることで、導入効果を持続的に高めることができます。
まとめ

スマートグラスは、物流・製造・教育・保守など幅広い現場業務に変革をもたらすツールです。しかし、効果を最大限に発揮するには、課題の明確化→計画策定→支援企業との連携→補助金活用→スモールスタート→全社展開と改善というステップを踏むことが不可欠です。
段階的で戦略的な導入を進めることで、初期コストを抑えながら現場のDXを加速させ、投資対効果を最大化できます。
事業環境が大きく変化し、人手不足にも悩まされる物流企業にとって、DX推進はもはや選択肢ではなく必須の取り組みです。
従来の手作業やアナログな業務フローをデジタル化することで、コスト削減・人手不足の解消・顧客満足度の向上といった効果が期待できます。
スマートグラスのアプリ開発はプロにお任せ!
リベロエンジニアでは、パッケージ型のシステム納品は行わず、丁寧なヒアリングを通じて企業ごとの現場課題や業務フローに最適化されたシステム開発を行っています。倉庫内作業の効率化を実現するスマートグラスの納品・専用アプリ開発にも対応しており、補助金申請に関するご相談も可能です。

さらに、当社では独自に開発したスマートグラスソリューション「Libero Sight(リベロサイト)」を展開しています。
Libero Sightは、物流・倉庫現場でのピッキング指示・作業ナビゲーション・検品業務などをスマートグラス上で完結できるソリューションで、現場の作業効率化とヒューマンエラーの削減を両立します。実際の倉庫環境での運用を前提に設計されているため、導入後すぐに現場で活用できる点も大きな特長です。
自社でのスマートグラス導入やDX推進に不安がある企業様も、豊富な支援実績を持つリベロエンジニアが、要件整理から開発、運用、補助金活用まで一気通貫でサポートいたします。
スマートグラスを活用した業務改革をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。