社長が“アイドル化”してアクスタを作る理由。推しの対象を目指す企業戦略
2025.10.22
社長が全面に立って情報発信を行う取り組みは以前から見られましたが、近年では企業がグッズ展開を通じてファン層を広げる動きも加速しています。リベロエンジニアでも、金子周平社長のアクリルスタンド(アクスタ)をはじめとしたオリジナルグッズをECサイトで販売。単なる広告塔や遊びにとどまらない、金子社長ならではの狙いとは――。
「なんでもない人間だってアクスタになってもいい」
現在では「推し活」が世代を問わず浸透し、アイドルやキャラクターのグッズを手に“推し”を楽しむ文化が一般的になっています。金子社長がこの流行を意識し始めたのは、3〜4年前、TikTokを始めた頃のことでした。

当時は、企業ブランディングの手法として若い広報女性を前面に押し出したキャッチーな動画が全盛期でした。それに対し、「本質とは違うのではないか」と感じていたといいます。そうした企業が“応援される存在”になるための戦略に対し、金子社長は少し逆張りの気持ちを抱いていました。
「当時、ちょうど推し活という言葉が盛り上がっていて、会社の女性社員が自分の好きなアイドルのグッズを自分たちで作っていたんです。その動きが気になって、『それ、俺のグッズも作れるの?』と彼女たちにいろいろ聞いてみたんです。それが最初に自分のアクスタを作ることにしたきっかけですね」

「なんでもない人間だってアクスタになってもよくない?」そんな少しの当てつけの気持ちも重なり、金子社長の構想は現実に。グッズは見る見るうちに増え、ついにはECサイトまでオープンします。

じつはそれは単なる思いつきや勢いではなく、しっかりとした企業としての狙いがあったといいます。
型破りな施策をすぐに実行できるのがリベロエンジニア
「SNSでは、無名な一般人がなにかの拍子にバズることがあります。つまり、今は手法次第でいろいろなチャンスが転がっているんです。僕らリベロエンジニアは“型破り”なことはいくらでもできる。他の企業ではなかなか真似はできないでしょう。だから、やる意義があったんですね」
とはいえ、作っただけでは話題は広がりません。金子社長は自ら仕掛けも作っていきました。

その一つが、金子社長がかつて行っていたXのフォロワー施策「エンジニアの技術書配布キャンペーン」です。当選者に頼まれてもいないのに、社長アクスタを同封するという遊び心あふれる挑戦を行いました。
「技術書が当選して、運がいい反面、いらないおじさんのアクスタがついてくる。プラマイゼロじゃんね(笑)」
決しておかしくない。企業の社長も推しの対象になるべし

これだけにとどまらず、ジャニーズファンに向け、「アクスタが手に入らないなら、俺のアクスタ、欲しい人いませんか?」と呼びかけたこともありました。当時はジャニーズのアクスタが品薄で、ファンが殺気立っていた時期でしたが、炎上することはなく、「このおじさん、よくやっているな」というあたたかい反応が多かったそうです。
「この行動がファンを増やすのか、というツッコミはさておき、知名度を上げるためにやっていました。どこんなところで広まるかもわからないし、知ってもらえるかもわからない。社員が前に出てリスクを背負うよりは、社長自らが前に出て、やれることをやってみる。今後もこの動きに注目してもらえたらうれしいですね」
多いに真面目に取り組みつつも、「こういうことをやるのは、たぶん俺くらいかも」と金子社長は笑います。

社長自らが“推し”対象となり、遊び心と逆張り精神で始まったグッズ展開には、単なる話題づくりではなく、「会社をもっと楽しく見せたい」「ファンを増やしたい」という明確な狙いが込められていました。