物流改善とは?業務効率化・コスト削減を実現する方法と事例を徹底解説
2025.05.20

物流業務における「ムリ・ムダ・ムラ」は、企業の利益を圧迫する大きな要因のひとつです。特に近年は、EC市場の拡大や人手不足の影響もあり、限られたリソースで効率よく物流を回すことが求められています。
そこで注目されているのが「物流改善」です。
本記事では、物流改善の基本的な考え方から、業務効率化・コスト削減につながる具体的なアプローチ、さらに国内外の代表的な成功事例までを網羅的に解説します。
自社に合った改善方法を見つけたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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物流改善とは?5つの解決アプローチ

物流改善には以下の5つの解決アプローチがあります。
- 「カイゼン」を繰り返して物流コストを減らす
- 仕組み化でヒューマンミラーやミスを無くす
- 倉庫・配送業務の作業効率を改善する
- 業務の見える化で作業工程を管理する
- 物流現場の3M(ムリ・ムダ・ムラ)を無くす
それぞれのアプローチを詳しく見ていきましょう。
「カイゼン」を繰り返して物流コストを減らす
物流改善において重要なアプローチが「カイゼン」です。
カイゼンとは、日々の業務の中で小さな改善を積み重ねて全体の効率を向上させる手法です。
世界で最も有名な「カイゼン」の事例といえば、トヨタ自動車です。同社で勤務する従業員は、常に「もっとこうすれば上手くいくのではないか」と考えながら仕事に取り組んでいます。
実際にトヨタでは、以下のような考え方や取り組みが現場レベルで実践されています。
- ムダの徹底排除:動作・待機時間・在庫など、あらゆるムダを見つけて削減する
- 5Sの徹底:整理・整頓・清掃・清潔・しつけを徹底し、作業環境を配備
- 現場・現物・現実の三現主義:机上ではなく、現場に足を運び、現物を見て、現実を把握して課題を発見
- なぜなぜ5回:問題の根本原因を突き止めるために「なぜ?」を5回繰り返す
物流現場でも、ピッキング作業の動線を見直したり、在庫配置を最適化したりなどの小さな改善の積み重ねが、大きなコスト削減やリードタイム短縮につながります。
物流改善を進める上でも「カイゼン」の考え方を取り入れることで、現場主体の継続的な効率化を実現できるでしょう。
仕組み化でヒューマンミラーやミスを無くす
属人的な作業が多いと、担当者の習熟度により、ミスや作業遅延が発生しやすくなります。そこでマニュアル化やシステム導入で、誰でも同じ品質で作業できる仕組みを作ることが重要です。
例えばマニュアルの整備やチェックリストの導入で、作業の手順を明確にしておけば、誰が担当しても一定の品質を保てるようになります。
また、WMS(倉庫管理システム)を活用すれば、在庫情報や作業指示をデジタル化できリアルタイムで正確な情報共有が可能になるため、誤出荷や転記ミスなどの人的ミスが防げます。
人に頼らず、仕組みで品質を担保することが、物流改善を成功させるための鍵なのです。
倉庫・配送業務の作業効率を改善する
倉庫・配送業務では、動線の無駄や作業の重複が積み重なり、生産性を大きく下げる要因になります。そこでピッキングルートの最適化や棚のレイアウトを整理することで、作業時間を短縮できます。
また、スマートグラスやハンディ端末を用いた作業指示のデジタル化も有効です。
配送においては、ルート最適化ソフトの活用により、移動距離や渋滞リスクを最小限に抑えられます。こうした工夫の積み重ねが、全体の作業効率を着実に引き上げるのです。
業務の見える化で作業工程を管理する
物流現場の改善を進めるうえで欠かせないのが、「見える化」による現状の把握です。
作業時間、在庫数、作業ミスの発生頻度などを数値で可視化することで、どこに無駄や課題があるのかを明確にできます。
例えば、データ可視化ツールを使ってKPIをリアルタイムにモニタリングすれば、業務の進捗や問題点を即座に把握でき、的確な対応が可能になるでしょう。
現場の状態をデータで捉えることで、感覚や経験に頼らず、論理的かつ継続的な改善が実現します。
物流現場の3M(ムリ・ムダ・ムラ)を無くす
物流改善において重要なキーワードが「3M(ムリ・ムダ・ムラ)」の排除です。
- ムリ:作業者への過度な負担
- ムダ:不要な動作や待ち時間
- ムラ:作業品質や処理速度のばらつき
3Mは現場の生産性を低下させ、ミスや事故の原因になります。
そこで、レイアウトの見直しや作業工程の均一化、ツール導入による負荷軽減などを通じて、3Mを解消します。
現場の安定稼働を支える基盤として、3Mの削減は物流改善の基本です。
倉庫・配送の効率化を実現する物流改善アイデア5選

倉庫・配送の効率化を実現する物流改善アイデアとしては、以下の5つが挙げられます。
- 倉庫管理システムで在庫管理をリアルタイム化する
- ルート最適化ソフトで配送ルートを最適化する
- RFIDを導入して煩雑な業務をスムーズに
- BIツールの導入で物流KPIを可視化する
- 一部業務をアウトソーシングする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
倉庫管理システムで在庫管理をリアルタイム化する
在庫の数を把握するのに時間がかかったり、入出庫の記録ミスがあったりすると、業務に大きな影響が出てしまいます。
こうした問題を解決するのが「倉庫管理システム(WMS)」です。
WMSとは、在庫の場所や数、動きをパソコンやタブレットでリアルタイムに確認できる仕組みのことです。紙のメモやExcelでの管理に比べて、ミスが起きにくく、作業もスピーディーになります。
人手不足の現場でも、少ない人数で正確な在庫管理を実現できるのが、WMSの大きな魅力です。
ルート最適化ソフトで配送ルートを最適化する
配送業務では、どの順番でどの道を使うかによって、移動時間やガソリン代が大きく変わります。
これを効率よくするのが「ルート最適化ソフト」です。複数の配送先を地図上に入力すると、最短かつスムーズなルートを自動で計算してくれます。
また、天候や交通状況に応じてリアルタイムでルートを調整できるタイプもあるため、安定した配送体制の構築に役立ちます。
RFIDを導入して煩雑な業務をスムーズに
RFID(Radio Frequency Identification)は、電波を使ってタグの情報を読み取る技術です。
バーコードのように1つずつ読み取る必要がなく、複数の荷物を一括でスキャンできるため、作業が大幅に効率化されます。例えば、入出庫時にRFIDタグが付いた荷物を通過させるだけで、自動で在庫情報が更新されます。
検品や棚卸しといった手間のかかる業務もスムーズになり、人的ミスの削減にも繋がるのが特徴です。大量の商品を扱う現場で、RFIDは特に効果を発揮します。
BIツールの導入で物流KPIを可視化する
BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)とは、業務データをグラフや表にして「見える化」するためのツールです。
物流現場で使えば、配送時間や在庫回転率、作業ミスの件数など、重要な指標(KPI)をリアルタイムで把握できます。
Excelでは集計や分析に時間がかかりますが、BIツールなら最新の情報を自動で表示でき、異常や課題にすぐ気づけるのが特徴です。
感覚に頼らず、データをもとにした判断が可能になるため、改善のスピードと精度が格段に上がります。
一部業務をアウトソーシングする
人手不足や繁忙期の対応が難しい物流現場では、業務の一部を外部に委託する「アウトソーシング」が有効です。
倉庫内の仕分け作業や検品、短期間の配送業務などを専門業者に任せることで、社内リソースに余裕が生まれます。
急な注文増加や突発的な欠員にも柔軟に対応できるため、業務の安定化に役立ちます。
また、専門性の高い業者に任せることで品質も確保でき、全体の業務効率を底上げする効果が期待できます。
特に近年はECの普及に伴い、オンライン上で倉庫業務を引き受ける外注業者が増えています。小売業やECサイト運営など、物流業務がコア業務でない場合は、物流業務を丸々アウトソーシングするのも手です。
物流改善の代表的な事例5選

ここでは実際に物流改善に成功した事例を5つ紹介していきます。
今回紹介する事例を参考に、自社の物流改善に役立つヒントを探していきましょう。
黒田精機製作所|トヨタ式の「5定」で集荷ルートを改善
トヨタに自動車の内装部品を供給する黒田精機製作所は、トヨタ式の「5定」で集荷ルートを改善しました。
トヨタの5定とは、定路・定量・定置・定名・定色の5つの要素を用いて環境を改善する考え方です。
これまで、黒田精機製作所は自社工場で生産を優先するあまり、部品供給や完成品出荷に必要な物流構築が見直されておらず、特に歩行者とフォークリフトの通行帯が混在していなかったのが大きな問題でした。
そこで黒田精機製作所は、床にラインを引いて人とフォークリフトの作業エリアを明確に分けて安全性の確保に成功します。
また、これまでは入荷・集荷・出荷のエリアが混在していましたが、入荷機能を別に集約したことで、工場内の集荷をスムーズにしました。
出荷ヤードには「かんばんポスト」が設置され、集荷スケジュールの可視化を図り、進捗管理も容易になっています。
このように物流改善は、必ずしもデジタル技術を用いる必要はありません。まずはアナログな方法で改善を図り、必要に応じてテクノロジーを導入するのが、物流改善の賢いやり方です。
ウォルマート|AR技術でピックアップまでの時間が3分の1に
ウォルマートは倉庫でのピッキング作業でAR技術の活用を始めました。
ウォルマートの店舗には通常12万種類のアイテムが並び、各店舗で1.5万箱の在庫が倉庫に保管されています。一方で、これだけ手厚い在庫にもかかわらず、店頭への商品補充の遅れが課題になっていました。あまりにも種類が多すぎて、商品を探すのに時間がかかるからです。
そこでウォルマートは、倉庫の棚から目当ての商品を見つけるためにAR技術を活用しました。具体的には、作業者が倉庫棚にスマートフォンを向けると、ピックアップしたいアイテムに緑色のチェックマークがつき、簡単に商品を探せます。
この機能を導入したところ、商品1点を見つけるのに平均2.5分要していたのが42秒となり、3分の1以下に短縮できました。
佐川グローバルロジスティクス|RFIDと仕分けシステムで生産性向上
佐川グローバルロジスティクスはRFIDと仕分けシステム「t-Sort」を導入することで、倉庫内作業の生産性を大幅に向上させました。
- RFID:商品に取り付けたICタグの情報を非接触で読み取る技術。複数の商品を一括でスキャンできるため、検品作業の効率が飛躍的に向上する
- t-Sort:仕分け作業の自動化・効率化を目的としたロボット制御型の仕分けシステム
これまで同社は、現場運営において繁忙期と閑散期の差が激しく、倉庫内の作業工程が効率化できなかった課題がありました。そこでテクノロジーを組み合わせることで、生産性向上を図ります。
まずRFIDの導入により、それまで一枚一枚の伝票を手作業で検品していたのが、一度に複数の伝票をまとめて検品できるようになりました。
さらにt-Sortの導入で、それまで作業者が頻繁に移動して行っていた仕分け作業をロボットに代替。繁閑差や規模変化に応じ、ロボット台数やレイアウトも調整できるようにしました。
その結果、新規就労者のスキル習得時間が7割削減され、仕分けミスもほぼゼロになりました。
Hacobu|GPS端末を車両に装着してダイヤ検証の工数が半減
物流向けアプリケーションを提供するHacobuは、GPS端末を車両に装着するだけでデータを可視化できる動態管理サービス「MOVO Fleet」を開発しました。
物流事業は多くの企業が関わるため、動態や運行実績を可視化するには、委託先の運送会社から運行実績を入手する必要があります。しかしこのアプローチでは、どうしてもダイヤ検証に手間と時間がかかってしまいます。
そこでMOVO Fleetは、GPS端末を車両に装着するだけで、運行状況をデータで可視化する「MOVO Fleet」を開発します。
実際にトヨタグループ傘下の豊田自動織機が同システムを導入したところ、毎月のダイヤ検証にかかる時間が12時間から6時間に半減されました。
また、作業時間のダイヤも短縮され、全体の運行終了時間も早まり、残業時間も低減されました。
リベロエンジニア|スマートグラスで倉庫作業を効率化するソリューションを開発中
リベロエンジニアは、スマートグラスを活用し、倉庫作業の効率化を実現するソリューションを開発しています。
倉庫作業では、両手で荷物を運ぶ場面が多くあります。しかし従来は、紙のリストを確認したり、電話をかけたりするたびに、いったん荷物を置く必要がありました。
スマートグラスを使えば、荷物を持ったまま仮想ディスプレイでリストを確認したり、ハンズフリー通話で上司と連絡を取ったりできます。
さらに、ナビゲーション機能との相性も良く、作業工程や場所の表示が可能です。作業者は迷わずスムーズに業務を進められます。
スマートグラスを活用できれば、新入社員でもベテラン並の業務が可能になり、担当者の能力に依存しない倉庫運営が可能になるのです。
このようにリベロエンジニアは、現場の課題を解決するソリューションを開発しています。物流現場でのDXを検討している方は、ぜひリベロエンジニアにまでお問い合わせください。
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現状分析から導入まで:物流改善の進め方3ステップ

物流改善は以下のステップで進められます。
- 「物流の6大機能」をベースに現状分析して課題を整理する
- 物流改善の計画を立案しデジタルツールの利用も検討する
- 物流改善の施策を実施してデータを指標に成果を検証する
それぞれのステップを詳しくみていきましょう。
「物流の6大機能」をベースに現状分析して課題を整理する
物流を効率化するには、まず現場の課題を明確にする必要があります。
そこで、分析の軸として有効なのが「物流の6大機能」(輸送・保管・荷役・包装・流通加工・情報管理)です。
- 輸送:商品を必要な場所へ運ぶ
- 保管:商品を一時的に保ち、管理する
- 荷役:荷物の積み下ろしや移動を行う
- 包装:商品を保護・仕分けしやすくする
- 流通加工:出荷前にラベル貼りや詰め替えなどを行う
- 情報管理:在庫や配送状況を把握・共有する
例えば、在庫が過剰な場合は「保管」に、出荷ミスが多い場合は「情報管理」や「荷役」に問題がある可能性があります。
「物流の6大機能」で業務を分類できれば、漠然とした課題ではなく、具体的な改善対象を絞り込めます。
物流改善の計画を立案しデジタルツールの利用も検討する
現状分析で課題が見えたら、次は改善計画の立案です。目標、手段、担当、スケジュールを明確にし、段階的に取り組むと効果を測定しやすくなります。
また、業務の自動化や効率化を図るためには、デジタルツールの導入も有力な選択肢です。
例えば、倉庫管理システムを導入して在庫状況をリアルタイムに管理すれば、欠品や過剰在庫を防げます。
ただし、無理にテクノロジーを導入する必要はありません。課題解決から逆算し、必要に応じてテクノロジーを導入するのが物流改善のコツです。
物流改善の施策を実施してデータを指標に成果を検証する
計画を立てたら、実際に現場で改善施策を実行します。
ただし、やりっぱなしでは意味がありません。出荷ミスの件数や作業時間の短縮率、在庫回転率など、数値で比較できる指標を設定し、施策の効果を検証します。
そのためには、BIツールやWMSなどを導入して、データを正確に取得するのがいいでしょう。
感覚ではなく、数値を根拠に判断を下すことで、改善サイクルを継続的に回しやすくなります。
まとめ
物流改善は、現状を把握し計画を立て、施策を実行・検証するサイクルを回す継続的な取り組みです。
倉庫や配送に潜むムリ・ムダ・ムラを洗い出し、仕組みやデジタルツールを活用すれば、生産性の向上とコスト削減を同時に実現できます。
まずは自社の業務を整理し、取り組みやすい部分から改善を始めましょう。地道な積み重ねが、強い物流体制をつくります。
リベロエンジニアでは倉庫や配送現場の課題に合わせた最適なソリューションを提案しています。物流改善をご検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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【この記事の監修者】

株式会社リベロエンジニア
代表取締役(CEO):金子 周平
元エンジニアとして「エンジニアをもっと自由に。」を掲げ、エンジニアが自由かつ公平に働ける環境を目指し2014年に創業。
高還元SESのリードカンパニーとしてIT派遣の新たなスタンダードを作る。現在はデジタルイノベーション企業として、スマートグラスのアプリ開発をはじめ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の支援に注力している。